金髪巨乳美少女が褒めてくれました




―――




 「ただいま~」



あ、楓ちゃんの可愛い声がした。楓ちゃんが学校から帰ってきた。

出迎えに行きたいところだが、俺は今動けない。



「あれ? 涼くん、どこ~?」


あ、楓ちゃんが俺を探している。俺はここだよーって言いたいが大きな声も出せないくらい消耗している。



「あ、いた。どうしたの涼くん、こんなところで」


楓ちゃんが俺をすぐに見つけてくれた。帰ってきてから1分も経ってないしこんなに広い家なのにすごいな。



「……お、おかえり楓ちゃん……」


「うん、ただいま。で、どうしたの?」


「ああ、掃除してたんだけど……」


「掃除? この広い家を? 1人で?」


「ちょっとだけのつもりだったんだけど……思いの外楽しくて……ついついのめり込んじゃって……」



ホウキ、チリトリ、モップ、雑巾など掃除に必要なものは揃っていて、汚れているところも多くて掃除しがいがあって、一度やり始めたらすべてキレイにしないと気が済まなくなって……

そうして掃除に没頭しているうちに、体力の限界が来て力尽きた。肩や腕が痛くてプルプルして、床に突っ伏している形になった。


楓ちゃんは周りをキョロキョロと見渡して、家の中をよく確認する。



「ホントだ、家の中ピカピカにキレイになってる……全部掃除してくれたんだ……」


「いやさすがに全部は無理だったよ……掃除できてないところもまだまだあるよ……」


「ううん、これだけやってくれたら十分だよ。ねぇ涼くん、顔上げて」


体力尽きて身体を起こすのもしんどいが、俺は楓ちゃんのペットだから言う通りにしなくては……なんとかムクッと起き上がって顔を上げる。



「そのままジッとしてて。動かないでね……」


「?」


なんかよくわからないけど楓ちゃんの言う通りに動かないようにする。



―――チュッ



「―――!?!?!?」



瞬間、宇宙が大爆発したような衝撃が。

俺の頬に、楓ちゃんの柔らかい唇の感触が……なんと楓ちゃんは俺の頬にキスを施した。



「な、ななっ、なんで……!?」



キスを受けた頬を手で押さえて、俺の心は大きく乱された。

熱っ……楓ちゃんの唇が触れた場所は、唇の感触と一緒に、すごい熱を帯びていた。こ、ここまで熱くなるのか……火傷しそうだ、自分の顔じゃないみたいだ。手まで赤くなってしまっているから、顔は相当赤くなってそうだ。


落ち着け……キスの経験ならたくさんあるだろ俺は。元カノの雲母と数えきれないくらいキスをしてきた。何ならディープキスだってした。


なのになんでほっぺに軽くキスをされたくらいでこんなにも乱されている。

楓ちゃんは確かに究極に可愛いが、未成年の女子高生だぞ……成人済みで大人の俺が、年下の女の子にこんなに乱されて恥ずかしくないのか、しっかりしろ。


しっかりした上で本音を言いたい。

こんなに可愛い女の子にキスしてもらえて嬉しいいいいいいい!!!!!! って魂の叫びを心の中で響かせた。実際に響かせるのは近所迷惑だからダメ。



「お掃除ありがとね、涼くん。今のはそのご褒美だよ」



楓ちゃんはそう言ってさらによしよしと俺の頭を撫でてくれた。


ああ、柔らかくて暖かい……楓ちゃんの暖かさが心に沁み渡る……

昨日まで心が冷え切っていたのがウソのようだ。楓ちゃんのナデナデがここまで明るく照らして暖めてくれる。

気を抜いたら眠ってしまいそうな癒し効果だ。



「涼くんはペットだからね。ペットが偉いことをしてくれた時はちゃんと褒めてあげないと」


「そ、そうか」



なるほど、ペットだからか。

ペットなら軽くキスしたり撫でてあげたりしてもおかしくない。今の楓ちゃんの行動は飼い主が犬にしてあげるのと同じだ。


そうだ、彼女が俺にやってるのはやってることだ。それ以上の意味なんてない、きっと。さっきからすごくドキドキしてるけど、あまり勘違いしないようにしろよ、俺。


そうだ、ペットだ。ペットだからだ……それだけだ……



…………


……本当にそれだけか?


楓ちゃんが俺を見つめる目は、とても熱を帯びていて色っぽくて、ペットに向ける視線とは思えなかった。

楓ちゃんの熱い視線で、俺の心臓は鷲掴みにされて揺さぶられる。



楓ちゃんの言葉を思い出す。


『あれから10年、私はずっとキミのことを想い続けてきた』


心臓が破裂しそうなくらい鼓動が加速する。



ハッキリと気持ちを言われたわけではないけど、楓ちゃんは、俺のことが好き……

昨日、奈落の底まで落ちた無様な俺の醜態を見てもなお、俺を好きでいてくれている……?


しかし、俺は今でも雲母のことが……


―――いや、誰が誰を好きとか考えるのはやめよう。

俺はペットだ。楓ちゃんがそう言ったんだ。楓ちゃんがそう言うのなら、俺はペットを遂行することだけを考えるべきだ。



俺と楓ちゃんは見つめ合う。楓ちゃんはハッとして顔を真っ赤にした。



「あっ……! ごめんね、撫ですぎちゃった……」


楓ちゃんの手が俺の頭から離れる。少し寂しいと思った。もっと撫でてほしい、なんて思ってしまった。



「涼くん、立てる?」


「あ、ああ」



楓ちゃんは手を差しのべてくれて、俺は手を握ってスクッと立ち上がった。さっきまであんなにぐったりとしていたのに今、不思議と元気だ。肉体にパワーが漲っている……楓ちゃんのおかげですぐに回復できた。




―――




 その日の夜、俺は洗面台で歯磨きをしようとしていた。そこで鏡を見る。


楓ちゃんのキスマークがまだ俺の頬に残っていた。唇が触れたのは一瞬だけでハッキリと痕跡が残っているというほどではないが、俺を再びドキッとさせるには十分すぎる。柔らかい唇の感触もまだ残っていて、手でそこに触れるとキスされた瞬間を思い出し熱を帯びる。時間が経っていてもこんなに鮮明に思い出せる。よほど自分の細胞に焼きついていると見える。


心の芯が溶けるような劣情を、楓ちゃんに抱いてしまっているのは認めなくてはいけない。あのでかい乳を揉みしだきたい、押し倒したい……


……ダメだ、ダメダメ。自分の欲を認めた上で拒絶しなければならない。楓ちゃんをそういう目で見てはいけない。

おじいさんもいるんだぞ。万が一でも楓ちゃんと間違いを起こすわけにはいかない。


楓ちゃんと再会して間もないし、今はまだ彼女に慣れてないだけだ。大丈夫、一緒に住んでいればそのうち慣れる。慣れれば大丈夫。

楓ちゃんはのような存在だ。そして俺はペットだ。それ以上でもそれ以下でもないと、必死に自分に言い聞かせるのであった。




―――――――――



※楓視点



 夜遅く、私はお風呂に入る。

お風呂に入りながら、今日涼くんにしてしまったことを思い出してお湯をブクブクする。


今さらメチャクチャ恥ずかしくなってきてしまった。いつかは必ず彼にキスしたいとは思っていたけど、こんなに早くしてしまうなんて……

無意識だった。頭で考えるより身体が先に動いて、愛しい気持ちが大爆発して、つい涼くんにキスをしてしまった。


涼くんを困らせてしまった。私は彼の飼い主なんだからペットの前ではしっかりしてないといけないのに。



10年前に涼くんと出会って助けてもらってから、ずっと涼くんのことが好きだった。

7歳の頃から会ってるんだから実質幼馴染のようなものだ。


でも、私にはわかる。今の涼くんはまだ私との間に強固な壁を作っていることを。

彼の目を見ればわかる。彼は私のには強い興味を持ってくれている。しかし、彼は心の壁をさらに強く厚くしてしまっている。


肉体だけじゃダメだ。を好きになってもらわないと。


彼を惚れさせるにはまだまだ時間がかかる。

大丈夫、彼と一緒に住めることになったんだ。時間はたっぷりある、いくら時間がかかってもいい、必ず彼を虜にしてみせる。

仕事と家を失った彼の心には大きな穴が開いている。これは私にとっては大チャンス、その穴は私が埋めてあげるんだ。


そう決心した私は熱くなった顔をごまかすように、お湯に顔をつけた。

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