すごい家に入れてもらえました
突然現れた金髪巨乳の女の子。
彼女についていった結果、ものすごい家に連れてこられた。彼女がこんなにすごい家に住んでいる金持ちなのは間違いないようだ。
「さあ、遠慮なく家に入ってください」
彼女はそう言って開いた門の中に入っていく。
え? 俺も行っていいのか? この豪邸のような家に入っていいのか?
「いや、ちょっと待てよ!」
「なんですか?」
俺が呼び止めると、彼女は足を止めてクルッと振り向いた。
「こんなにすごい家に住んでるなんて……キミは一体何者なんだ?」
金持ちなんだなとは思ってたけどまさかここまでとは。
この家の正体もわかってないのにここに入るわけにはいかないだろう。まずはちゃんと説明が欲しい。
俺が尋ねると彼女はクスッと微笑んだ。仕草や表情がいちいちエロい。
「そういえばまだ名前言ってませんでしたね。申し遅れました、私は
中条楓、と名乗った彼女は持っていたカードを俺に投げた。俺は落としそうになりながらもキャッチする。
っていうかこのカード、さっきまで中条さんの胸の谷間に挟まってたヤツだよな?
それを俺が触っていいのか!? これって間接的に中条さんの胸を触ってるようなもんなんじゃないか!? 間接おっぱいなんじゃないか!? 心なしかカードは少し暖かい。これは、中条さんの胸の体温……!?
すべてを失っていろいろ壊れている俺はそういう変態的なことばかりが脳内に浮かんでしまう。いや、言い訳すんな。俺自身がスケベなだけだ。
「どうしました? カード見てください、安村さん」
俺は中条さんに名乗った覚えはない。でも彼女は俺の名前を知っていた。
警戒心を忘れないようにしながら俺は言われた通りにカードを見た。
そこには確かに『中条楓』の名前が記載されている。
そして、すごく見覚えのあるロゴと、『中条グループ』の名前があった。
「えっ……まさか中条って、あの中条グループ!?」
「そうです。ご存じですよね?」
当然知っている。テレビでよくCMをやっている大企業だ。
それに、俺が勤めていた会社の親会社でもある。俺もかつてはこのグループの一員だったということだ。超下っ端だけども。
「まさかキミは、中条グループのお嬢様……?」
「はい、一応社長の娘です」
ま、マジか……中条さんが親会社のお嬢様だとは思わなかった……なんで俺のこと知ってんだよって疑問だったけど子会社の社員のデータを把握していたからってわけか。
でも俺のような者まで知ってるんだな。中条グループの社員なんて何千人もいて俺なんか末端の末端なのに。
彼女は完全に無関係の赤の他人だと思っていたが、一応繋がりはあったんだな。あまりにも身分が違いすぎるけど。
……いや、俺はもうクビになった。もう中条グループの人間ではない。やはり彼女とは関係ない。
「社長令嬢ともあろうお方が、なぜ俺のような者をここに……? 解雇された男なんかに構っているヒマなんてあるのか?」
「まあいいじゃないですか」
「よくない。解雇された男を連れてくるなんて意味がわからない」
「いいから中に入ってくださいよ」
グイッ!
「ちょっ……!?」
強引に俺の腕を引っ張って家の敷地内に引き込む中条さん。
引っ張る力が強くて俺はされるがままになる。なんて強引な……
外から見えるだけでもすごい家とは思っていたが、中に入ってみるとさらにすごい。
さっきまで俺がいた公園より広いんじゃないかって思うくらいの庭園。池には大きな鯉、池にかかる石橋、美しい花、大きな木。ここ見るだけでも金取れるだろと言える素晴らしい景色。
景色をのんびり眺めたいんだけど中条さんは容赦なく俺を引っ張り続け、玄関の引き戸をガラガラと開けた。
「ただいまー」
「おお、おかえり楓」
俺たちを出迎えてくれたのは、やたら背が高くて威厳がすごいおじいさんだった。
「紹介します、私のおじい様です」
「え? あ、えっと、こんにちは……」
中条さんのおじい様ということは社長の父親……?
あ、この人見たことある! お年を召されていてすぐには気づかなかったが中条グループの先代社長、
急に家に連れてこられて先代社長に紹介までされて、何が何だかわからんがとりあえず挨拶はしておいた。
おじいさんは俺をジッと見た。怖い。俺はちびりそうだ。
「ほう、キミがあの……楓から話は聞いているよ。どうぞあがんなさい」
おじいさんはそれだけ言ってどこかに行ってしまった。
え、えぇ……?
話は聞いているよとか言われても……俺は何も聞いてないんですけど……
『キミがあの……』って何? あのってどの? わからん。全然わからん。どういうことなんだ?
「さあ安村さん、家の中を案内しますよ。広くて初めての方は迷いやすいですからね」
靴を脱いでスリッパに履き替えると、すぐにまた中条さんに掴まれ引っ張られていく。
今さらだけど、俺さっきからずっと可愛い美少女の手に掴まれてるんだよな……
女の子の手ってこんなにしなやかで柔らかいのか……すごく意識してドキドキする。緊張しすぎて大量の手汗を出しそうだ、やめろ俺の汗腺、堪えろ。中条さんの手を汚す気か。
「なぁ中条さん、俺を連れてきてキミは何がしたいんだ? ちゃんと説明してほしいんだけど」
「さぁ、なんででしょうね」
なんで俺を連れてきたのか、なんで案内をしてくれるのか、中条さんは何も教えてくれない。ただ俺を振り回すだけだ。
確かにすごい家だけどすごすぎて萎縮してしまう。
「ここがトイレです」
「あ、ああ、ありがとう」
「ここがお風呂です」
「え……? あ、ああ……」
「ここが寝室です」
「えぇ……? そ、そうなんだ……」
中条さんは本当に丁寧に家の中を案内してくれる。
トイレはともかく風呂や寝室の場所とか教える必要があるのか……? なぜか連れてこられただけで泊まりにきたわけじゃないんだぞ?
「あの、中条さん……俺庭園の景色とかじっくり見たいんだけど……」
「え? 外の景色なんて別に見る必要ないですよ」
「……?」
なんで? 住んでるキミは別に見慣れてるだろうけど、俺は初めてなんだぞ。せっかくだからよーく見ておきたいくらいキレイな景色なのに、中条さんは景色を堪能する時間を与えてくれなかった。
中条さんに案内をしてもらってるうちに、あっという間に日が暮れてきた。
そろそろ帰らないとな……帰るっつってもどこに帰るんだよ、もう家はないんだぞとは思うけど、これ以上ここにいるわけにもいかないし……俺はもう子供じゃない、これからのことは自分でなんとかしていくさ。
「中条さん、キミが何をしたいのかよくわかんなかったけど今日は楽しかったよ、ありがとう。俺はそろそろ帰るよ」
本当にわけもわからず連れてこられただけで何もかもわからないけどあの中条グループの家に来れて素直におもしろかった。
あの後も何度も中条さんに俺を連れてきた理由を聞いたけど結局教えてくれなかったし……
まあ、短い時間だったけどこんなに可愛い女の子と一緒に行動できたというだけでもいい想い出だったな。怪しかったけど彼女についていってよかった。これは本音だ。
俺が帰ろうとすると、中条さんは首を傾げた。
「どこに行くんですか安村さん」
「だから帰るって……」
「安村さんの帰る場所はここですよ?」
「………………
えっ?」
「今日から安村さんはこの家に住んでいいんですよ?」
………………
は?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます