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楽しそうに話す美亜。


彼女から夫を取ったら壊れると、おばあさんは強く思った事だろう。そして、居るはずのない夫が居ると言い切った美亜を恐ろしく思った。


彼女にとって夫が全てなのだ。


「美亜、せっかくの休みだし、どっか行こうか。」


「お弁当持ってお散歩がしたいわ。」


「いいね!散歩にはぴったりの天気だし。」


青空の下、2人は並んで歩く。


「パンケーキ美味しかったよ。ふわふわのオムレツも最高だった。また作って欲しいな。」


「えぇ、貴方のためならなんだって作ってあげるわ。」


歩きながら楽しそうにひとりで話す美亜を、周りは不気味そうに見ていた。


「後藤田さんお散歩?」


50代くらいの鈴木さん夫婦が、美亜に声をかけた。


「えぇ、夫と2人でお散歩なんです。」


"夫と2人で"の言葉に、夫婦は互いの顔を見て首をかしげるけれど、あまりに幸せそうに美亜が言うから、話を合わせるしかなかった。


「あらいいわね。旦那さんと2人で歩くの、楽しいでしょ?」


「えぇ、とっても。」


確かに美亜はひとりで歩いているのだ。隣には誰も居ない。それでも、美亜には夫の姿が見えている事も確かであった。

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