p10

枯れた花を見て、夫は悲しそうな顔をする。


幸紘あなたの帰りがあまりにも遅いから、寂しくて水やりを忘れてしまったの。」


「そうだったのか…。美亜、本当にすまなかった。」


「ううん、いいの。貴方が帰って来てくれた。それだけで私は幸せ。」


2人夜の食事を楽しんだ。


次の日、明るさを取り戻した美亜を見て、周りは少し混乱。昨日まで人と会うのを拒んでいたのに。


「元気になって良かったよ。昨夜、誰かと一緒だったんだろう?楽しそうな声が聞こえてな。」


堀川さんは言う。


「えぇ、夫が帰って来たんです♪」


「……え?」


美亜の嬉しそうな顔に、堀川さんは不気味さを感じていた。


「今朝も一緒に食事をして、先ほど仕事へ行きました。私はこれからお散歩に。」


夫は死んだはず。葬儀も終わった。それなのに夫が帰って来た?近所の人達は、美亜が完全に壊れてしまった事をさとる。


「後藤田さん、あたし今日休みなので、散歩一緒にどうですか?」


美亜の左手首の包帯に気付いた三枝さえぐささんは、彼女を1人にする事を心配し、声をかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る