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夫が最期に着ていたスーツを抱きしめ、彼の匂いに包まれながら、涙を流す夜。


後藤田ごとうださん大丈夫ですか?あの、カレー作り過ぎちゃって。それでご飯まだなら一緒にどうかなって。」


フリーターの三枝さえぐささんが、カレーを持って美亜を訪ねた。他にも何人か彼女を訪ねるが、美亜は顔を出す事はなかった。


あれから数日が経ち、買い物へ行こうと外に出る美亜。笑顔が消え、顔色は悪く下を向いている彼女は、明るかった頃とはまるで別人で周りは言葉を失う。


「後藤田さんおはよう。」


ひとり暮らしの60代の男性・堀川ほりかわさんが、彼女に挨拶をした。


「おはようございます…。」


その声はあまりに小さく悲しい。


「最近天気良くて、花も喜んでるでしょうな。」


「…いえ、らしてしまいました。では、私はこれで。」


美亜は軽く頭を下げスーパーへ。そして、夫の好物だけを買い込み帰宅。そして、庭の花を見つめた。


水をやらなかったせいか、花は下を向き枯れていた。そして風により、花びらが1枚、また1枚と落ちていく。美亜は、落ちた花びらを拾い上げ泣いた。

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