第46話 もう少しで終わり
新田義貞は、冷たい風が吹き抜ける冬の上野国新田荘に立っていた。荒地が広がる笠懸野では、遠くから弓矢の音が響く。彼は幼いころから、この地で厳しい鍛錬を積んできた。夏の雷鳴が轟くなか、激しい集中豪雨を耐え抜いた日々も、冬の強烈な風に逆らいながら馬を走らせた時も、すべては今の自分を作り上げた要素だった。
義貞は、この新田荘での厳しい自然が、自らの気性を形作ったと自覚していた。強靭な体と、激しいまでの情熱。その激しさはやがて武士としての名を高め、鎌倉幕府を倒す原動力となる。
彼が元服したのは、正和3年(1314年)、まだ13歳のときだった。そのときから、彼の人生はすでに戦いに彩られていた。鎌倉幕府は衰退し、内外に不満が渦巻いていたが、義貞の心には忠義と誇りが燃え盛っていた。
やがて、元弘の乱が勃発する。後醍醐天皇に呼応し、義貞は立ち上がることを決意する。鎌倉討伐軍に参加し、義貞の軍勢は、いち早く鎌倉の地へと侵攻した。彼の目には、鎌倉幕府の終焉が見えていた。戦の中、東勝寺で北条氏の本隊を打ち破る時、義貞はその運命を確信した。長年にわたる幕府の圧政を終わらせる瞬間が、ついに訪れたのだ。
しかし、その成功は長くは続かない。義貞は後醍醐天皇の忠臣として新たな政権建武の新政を支えるが、足利尊氏との対立が彼の運命を大きく狂わせる。尊氏との戦いは、箱根、そして湊川での敗北という結果をもたらし、義貞は次第に追い詰められていく。
義貞は越前国に赴き、北陸での戦いを決意する。越前藤島では、彼の人生の最後の章が待っていた。乱れた髪を風に翻し、かつての栄光の日々を思い返す彼の前に、運命の戦いが迫る。義貞は剣を握りしめ、激しい風に向かって駆け出した。彼の中には、一片の後悔もなかった。ただ、忠義を貫き、天皇に尽くしたその生涯を、全うするのみだった。
彼の戦いは終わりを迎えた。しかし、その魂は、今なお歴史の中で輝き続ける。新田義貞、鎌倉幕府を滅ぼし、忠義に生きた武士の名は、永遠に語り継がれる。
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