1章 12話『オンブバッタ』

タクミたちは新たな試練に直面し、緊張が高まる中で姿を現したのは、巨大な影だった。前方に現れたのは、さきほど倒した魔物とは異なる、さらに恐ろしい存在だった。体は金属のように光り輝き、硬質な鱗が表面を覆っている。目は血のように赤く、冷酷な光を放っていた。


「まさか、あの魔物の仲間がまだ残っていたのか…?」カナタが呟いた。


「どうやら、試練はまだ終わっていないようね。」アリスが眉をひそめ、警戒の姿勢を取る。


「準備をしろ、みんな!」タクミが声を張り上げた。「今度は、もっと強くなって挑むぞ!」


敵は一瞬静止し、タクミたちをじっと見つめた。その後、強烈な吠え声を上げ、地面を揺るがすような一歩を踏み出す。タクミは背筋が凍る思いをしながらも、心の中で仲間たちとの絆を思い出し、恐れを振り払った。


「まずは、相手の動きを読みながら攻撃しよう。」タクミが提案する。


「私が前に出るわ。」アリスが自信を持って言った。「私の魔法で攻撃を支援するから、タクミとカナタはその隙に攻撃を仕掛けて!」


タクミは頷き、仲間たちと目を合わせた。互いの心が一つになり、戦う意志が燃え上がる。


アリスが魔法を詠唱し始めると、周囲に光のエネルギーが集まっていく。彼女の手からは、徐々に強力な魔法の光弾が生まれていく。


「今だ!」タクミが叫び、アリスの魔法を援護するために剣を構えた。カナタも矢を引き絞り、射抜く準備を整えた。


魔物はアリスの攻撃を察知し、前足で地面を叩いた。その瞬間、土砂が舞い上がり、視界が遮られる。タクミたちは一瞬反応が遅れたが、タクミはすぐに思考を切り替えた。


「気を付けろ!視界を塞がれても、音で動きを感じるんだ!」タクミは声を張り上げた。周囲の音を頼りに、タクミたちは魔物の動きを探った。


アリスの魔法が爆発し、明るい光が辺りを照らした。その光の中で、魔物の姿がはっきりと見えた。タクミはその隙を逃さず、剣を振り下ろした。


「いけ!」タクミが叫ぶと同時に、カナタが弓矢を放つ。二つの攻撃が魔物に命中し、強い衝撃が走った。


だが、魔物は怯むことなく、タクミたちに向かって突進してきた。そのスピードは驚異的で、タクミは焦って避ける。


「何とかして動きを止めないと!」カナタが叫び、再び矢を引いた。


「私がやる!」アリスが再び魔法を発動させ、魔物の足元に氷のバリアを作り出した。魔物は足を滑らせ、立ち止まる。


「今だ、タクミ!」カナタが叫ぶ。


タクミは一瞬の隙を見逃さず、全力で剣を振りかざした。魔物の鱗に刃が当たり、金属音が響く。しかし、魔物はその痛みを感じることなく、振り返りざまにタクミを弾き飛ばした。


「うっ…!」タクミは地面に叩きつけられ、しばらく動けなかった。周囲の音が遠くなり、視界が揺らいでいる。だが、すぐにアリスの声が耳に届いた。


「タクミ、立って!私たちが支えるから!」


タクミはその言葉に力をもらい、必死に体を起こした。仲間たちが魔物に立ち向かっている姿が目に映り、タクミは再び立ち上がった。


「負けられない…!」タクミは心の中で叫び、仲間たちのためにもう一度剣を振り上げた。


その時、魔物が振り上げた前足がタクミたちを襲った。カナタが飛び込んでその攻撃を受け止め、アリスが魔法で援護する。


「タクミ、もう一度攻撃するぞ!」カナタが叫び、二人は再び連携を取り始めた。


「私が魔法で足止めするから、タクミはその隙に攻撃して!」アリスが叫ぶ。


タクミは頷き、心を決めた。仲間の信頼を背に、再び剣を振り上げる。その瞬間、アリスの魔法が魔物の足元に向けられ、氷の刃が突き刺さった。


「今だ!」カナタが叫び、タクミは全力で攻撃を仕掛ける。魔物の目が驚きで大きく見開かれ、次の瞬間、強烈な一撃がその体を貫いた。


「やった…!」タクミは息を呑む。しかし、魔物は倒れることなく、逆にタクミたちに向かって最後の力を振り絞って突進してきた。


「まだ…終わっていないのか!」タクミは焦り、仲間たちを振り返った。「アリス、カナタ、もっと連携を強化しよう!」


タクミたちは再び連携を取り、魔物の動きを止めるための準備を始めた。次なる攻撃が来る前に、必ず魔物を倒す覚悟を決めたのだった。


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