この素晴らしい田舎に祝福を!

睦 ようじ

第1話:この静かな地方に祝福を!

「しょーい!」

「……この駄女神、ついにボケたか」

 カズマのボケにアクアが額にデコピンを入れる。

「誰がよ!それより、見なさい!この海を!叫ばずにはいられないわ!」

 アクアが指さす方向には、光に照らされた静かな海がある。

「おぉ、こんな穏やかな海は見たことないな」

「カズマ!カズマ!カニ、カニがいますよ!」

 めぐみんは、砂浜でカサカサと動く小さなカニを杖でつついている。

「あぁ、それはヘケイガニといって……ッ!」

 言葉を呟いた瞬間、カズマの脳裏に存在しない記憶が浮かぶ。

「か、カニ……歌、おかし、温泉、文学……狸に猫に海賊!なんや、この記憶はぁ!」

カズマは叫ぶとバタリと倒れ込んだ。

「どうしたカズマ!」

「普段と変わった話し方してますけど、何かあったんですか!?」

 ダクネスとめぐみんが駆け寄ると、大きく息をしてカズマは倒れたまま両手を太陽に向ける。

「いや……俺はこの地の何かに呼ばれたようだ」

「何か、おかしな事を言っているが大丈夫か?」

「カズマの事だし大丈夫よ」

「そうだな」

「いつものことですし」

「くぉら!お前ら仲間の心配ぐらいしろよ!」

 全員にツッコむとカズマは膝についた砂を払う。

「じゃ、行こうぜ。このイーヨメ地方に」

「え?カズマこの場所分かるのですか?」

「言ったろ」

 めぐみんの問いにカズマは、自分の頭を指差して笑う。


「俺は、頭の中にはちゃんとこの地方の知識はあるんだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この素晴らしい田舎に祝福を! 睦 ようじ @oguna108

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ