エピソード:I 襲撃
すっかりなじんだ自分の担当である機体、オウエンの前のベンチで座りつくしていると、テレス隊長が私のもとに来た。
もうあの人とは同じ部隊で二年間世話になっている。ちょっと前にあった新型トライデント強奪事件の時もずっとそばにいて支えてくれた。
あの任務は失敗したが、隊長のおかげで助かった。彼は、ライフルの扱いに長けている。
それなのに私は…
「また考えてたのか?自分の弱さを受け入れる。それも大事だ。」
「はい、ですが隊長、どうしても近接一筋では、今の射撃戦では到底敵うわけがありませんよ。」
隊長は少し弱気に映っている私に、一つため息をついた。
「じゃあ聞くが、なんで射撃戦が現代の戦闘法なんだ?」
「それはもちろん、銃器が発達していて、精度も威力も桁違いだからでしょう?」
彼はチッチッチッと、下を三回鳴らし、紺色の逆関節が特徴的な私の機体の前で指を左右に振った。
「違う。トリガーを引くだけなら、馬鹿でもできるからだ。だから最近、優秀な近接のパイロットがいないから銃撃戦が主流になったんだ。
もし、君がそれほどに近接が得意ならば、それを伸ばすべきだろう。近接ができることは優秀な証拠だ。」
そう言われればそうだが、私はその馬鹿にもできることができないのだから…
果たして優秀といえるのか?
射撃試験はギリギリで通過。毎回打つタイミングが合わず、精度がどうしても落ちてしまう。
それでは、全く支援もできないし、近接だけだとそのうちやられてしまうし。
どうすればいいのだろう。
「つべこべ考える前に、自分から動いたらどうだ?ほら。」
少しうつむいていると、隊長が一本の煙草を私の顔の前に出した。
すっと一本手で抜いて、自分のジッポライターで火をつける。うすい灰色の煙が高い天井に向かって伸びた。
「お前には、最っ高の技があるじゃないか。近接ができれば、前に出られる。前に出られればみんなが進める。近接をやる強襲長は、常に道を切り開くためにいるんだよ。」
テレス隊長は煙草を口から離し、口から煙を吹いた。
灰色の煙が彼の袖にまとわりついて消えていった。
「ところで、今度、機動隊が大規模な強襲作戦を行うらしいぞ。」
「というと?」
大体わかるが、必ずしもそうであるわけではないという気持ちで聞きなおした。
煙草を口から外して指の狭間に挟む。ベンチに置いてある灰皿に灰を落とす。もろもろと崩れて灰色の粉となって灰皿に残った。
「例の工場だよ。さすがにあのままにしておくわけにはいかない。」
その話を聞いて、私は煙草を灰皿にこすりつけた。
「実はトライデント強奪事件で盗まれた新型トライデント、あれが例の工場にあるというのだ。しかも、ほかのメンツもいるのか、衛星で他の機体の起動を確認した。
今は四機だが、そのうち多くなることが想定される。だから、まだ少ないうちに叩こうという話だ。」
「等級は何です?」
「等級は…」
彼は少し顔を曇らせるように言った。
「すべて、新基準第七等級だ。シュミレーターでしか相手にしたことのないレベルだ。あのバカみたいに強い輩を現実で相手にしなければならんのだよ。」
「第七…等級…ですか…?」
私としたことか少し怖気づいてしまった。しかし、だとすれば只者ではない。
新基準第七等級。機動課所属部隊のうち、最悪の場合、約三十小隊がやられる。それもたった一機でだ。それも腕前によってはその数は、遥かに増えるかもしれない。
ただ、裏を返せば、相手の腕前によってはやられる部隊を減らせるはずだ。
機動隊は全部で百小隊を保持している。中でも、特殊部隊と呼ばれるエリートらはこのうち三小隊しかない。
しかし、全員が化け物じみた腕前と、新基準第七等級の機体を持っている。
「この作戦は今夜、遂行される予定だ。全百小隊のうち、全特殊部隊を含む九十四小隊を出すとさ。」
「ずいぶん大規模ですね。特殊部隊も全出動とは。」
テレス隊長は空を眺めるように私の隣に座った。
「こんな空に俺の嫁さんは癌で亡くなったな。良く思い返せば青白く光る、導かれるような月光の元でここを去ったな。」
テレス隊長のお嫁さんが三年前がんで亡くなったのは知っていた。
でも、こんな空のもとで死んだなんて初耳だった。
確かに今日は月が美しい。日が暮れてすでに七時を指す腕時計はその月光を明るく反射していた。
「さあ、行こうか。仲間が待ってるぞ。」
「そうですね。テレス・マッケンリーさん」
「急にどうしたんだ?いつもの隊長でいい。」
何となく呼んでみたくなった。フルネームで隊長で呼んでいたころを懐かしく思った。
私とテレス隊長は立ち上がり、それぞれ自分の機体を見た。
隊長の機体はテラーバイト・カスタム。それも特殊部隊向けだ。主に多機能ライフルとパルスブレードを装備している。
装甲を犠牲にせずに、機動力を増やすために、絶妙な調整がなされている。
天才的な調整能力を持つのはうちの部隊の副隊長、ヴァレトだ。
彼は旧式のオウエン、リュウグウの使い手だ。オウエンは今後、Δ・スパローに用いられるほど発達したカメラ性能とスラスターを持つ。
しかし、その旧世代であるリュウグウは同じスラスターを搭載しているにもかかわらず、重量を応援の三分の二に抑えたものとなっている。
よって、あまりにも玄人向けの自殺マシンであることから乗る人はほとんどいないが、彼の調整を受けたリュウグウは化け物じみた性能を発揮する。
「さて、機体に乗れ。アルミア。機動課本部に集合だ。」
「了解。」
「おーい!アルミア!!」
向こうから支援師団長の篠崎が走ってくる。
彼は射撃とレーダー統制において、おかしい才能を発揮する。
彼の乗るテラーバイトは、ヴァレトの調整も相まって、とんでもない察知能力と射撃能力を見せてくれる。
おかげで何度私らが救われたか分からない。
「アルミア、一緒に行こうよ!」
「オッケーだ。」
お互いにコックピットから延びるラダーを駆け上がり、コックピットに乗った。
さて、ポートを閉鎖。
電極保持器、オールクリア。
ジェネレータ、スラストジェネレーターよし。
ロックラダーよし。
自動変速機よし。
ファイアリングよし。
電磁ロックを解除。
リフレクター起動。
よし、行こうか。オウエン。
リフレクターとイグニッション・スラスターから抜ける甘美で、美しく高い音を聞きながらカタパルトへ向かった。
『こちらヴァレト、準備完了。スタンバイ。』
『こちら篠崎、準備完了。』
「こちらアルミア、いつでもいけます!!」
『こちらテレス、ただいまより本部へ移動する。』
相変わらず、うちらのメンツは四人だ。普通は七人くらいいるものなのだがねぇ…
『司令部、こちらメカニカルバレッツ部隊長、テレス・マッケンリー。本部へ出動する。カタパルトを解除してくれ。』
『司令部了解。電磁ロック起動。七番、八番、九番、十番を使用せよ。』
『了解。』
ガイドレールに沿って、スラスターをニュートラルの状態にして吹かした。
フォォォ…とキレイに響く。
「篠崎、お隣の部隊を今日も撃破数で負かすか?」
『そりゃあいいな。それじゃあ、ワールドクエイクの連中には今日も悪いが少し負けてもらうことにしよう。』
いつものようにふざけた会話をする。
それもそうだ。超絶大規模な作戦なんだ。あたりまえを楽しまないといけないさ。
『…』
「どうした?」
『いや、何でもないさ。行こうか。』
少し沈黙が流れたのち、無線を切り、ミッションを出力全開にした。
あとはアクセルを吹かすだけで吹っ飛ぶさ。
『スタンバイ、三…二…一…発進!!』
一気にアクセルを踏み込んで、スラスターに押し出されるようにして空へ飛び立った。
都会の空に何機も機動隊のアームドスーツが飛ぶ。なかなかに異様な光景だ。
『アルミア、今日もまた前線を頼んだぞ。』
「任せてくださいよ、ヴァレト副隊長。」
『副隊長さんよ、案ずることはないさ。彼はきっとやってくれるはずだ。』
『そうですよ、いつも近距離でやってくれる最高の同期ですよ?アルミアさんは。』
篠崎が副隊長を少しからかうような口調で言うと、副隊長はフッと、少々噴き出すようにして笑った。
『そうだな、アルミアには才能がある。あと、雑談中に悪いが、作戦についてのファイルを送る。それを見てくれ。』
無線が切られると、画面にファイルが送信されたという知らせが来た。オートパイロットに切り替えて、ファイルを開くと、今回の作戦と、地図が乗っていた。
どうやら、三方向で挟撃を行うようだ。前線を特殊部隊に任せて、後方で支援するのが私たちの役目だ。
ただ、強襲長は特殊部隊の後ろに待機だそうだ。だとすると、私は後ろの方で待機かな。
そうして、オートパイロットでしばらく都会の空を飛んでいると、聳え立つ摩天楼が見えた。
そう、本部だ。
『さて、行くとしようか。こっちで隣の部隊とはコンタクトを取っておく。アルミア、誘導任せたぞ。』
『了解。副隊長。』
その後、私はマニュアル操作に戻し、隊列を外れて後ろについた。
一気にフラップを展開し、減速すると、後ろの部隊が来ていた。
勿論、このまま行ってはぶつかってしまう。一気にフラップと操舵用グリップを上向きにし、機体を仰向けにしたのちに、一気に後方に回転した。
ゴォォォォォ…と整流板から白い煙が出ながら相手の頭上すれすれをスラスターの炎がかすりながら通過した。
『さすがだなあ!アルミア!』
「どうも。今から誘導するので、私を最後方に、前に並んでください。一列で三番に侵入します。」
『おっ、分かった。』
だんだんとフラップと出力を戻していき、一番後ろについた。
「司令部、こちらワールドクエイク部隊誘導中のアルミア、ただいまより三番に侵入する。」
『了解。許可する。フェニックス。』
そのまま、三番のゲートが開くと、一列になってそのままカタパルトに一機、一機、着陸していった。
私も続いて、カタパルトの電磁ロックを作動させて、レールに足をついた。
火花をまき散らしながら減速じ、本部のデッキへのゲートを通過すると、すでに全部隊が整列を開始していた。
そして、しばらくすると、今回部隊の統率及び代表に任命された特殊部隊、ミラージュの隊長、レイデン・ゲンガース隊長が出てきた。
近接においても、射撃、どちらも試験を満点で通過。後に起きた事件の解決率、ミッションの成功率において断トツトップ。
その確率は九十パーセントをはるかに上回り、天才的才能から歴戦の生き返りと言われている。
そんな彼が今、壇上に立った。
『特務機動隊の全部隊、隊員に次ぐ。これは全世界を脅かしかねない勢力の排除のためのミッションだ。
未来の子孫の将来を拓くためには、これしかない。総員、闘志を燃やして、己の限界を破り、常に最前線を見つめよ。以上だ!!総員戦闘準備!!』
脳裏に焼き付き、しびれるような発言を聞いたのち、すぐに準備に取り掛かった。
私は自分の担当の武器を取り、実弾を装填した。今回はサブマシンガンに物理変形ブレードを使う。
すべてアトラス社製ではなく、スパロー社のものを使う。機体は、仕方なくアトラス社だが、私はスパロー社の機体や、装備の方が好きだ。自分の性に合う。
『おい、アルミア。後ろを見ろよ。』
無線で連絡が入った。ヴァレト副隊長からだ。
後ろに振り返ると、機体の準備を済ませて、重量級のエネルギーライフルを両手に持つ雄姿が立っていた。
『これ持ってけ。誕生日プレゼントだ。』
どうやら、この前の誕生日プレゼントとして、私が以前から欲しかったマルチブレード、テレホーカーを用意してくれたらしい。
私は嬉しさと興奮のあまり、声が出なかった。
『見つけるのが大変だったよ。でも、喜んでくれてよかった。』
「…あ、ありがとうございます!!大切にします!!」
『良かったな、アルミア。大切に使ってやれよ?俺はヴァレトから貰ったことがないから羨ましいよ。』
『そりゃあ、悪かったなぁ、隊長。』
誕生日プレゼントに関していろいろと話している中、私は、もらったテレホーカーを展開してみる。
カシャン!!
バラバラバラ…
テレホーカーはさっそく劍となった。そして、もう一度うまく回転をかけると、太い短剣となり、しならせると鞭となる。
さらには、鞭の状態で回転としなりを聞かせると、刀の峰に刃がついたようなブレード、ムーンブレードとなる。
これはすごい。各ユニットごとに特別な連結機構がついているおかげで、このようなことが可能なのだろう。いったいどうなっているのだろうか。
『まあいい。行こうか。みんなが待っているしな。』
『そうしましょうか、隊長。』
『ちょっと待て、置いていかないでくれ。』
そう言って、カタパルトへ行き、電磁ロックを起動した。
『そういえば、アルミア。最近新型のジェネレーターが開発されたってな。デルタスパローに搭載される予定のヴァレンツァだが、ブラスト・マテリアル・コアの進化系、
クロスレイティングコアの中でも、最も有効活用できる最大活用出力が高いらしい。』
「それはすごいですね。でも副隊長、そんなにすごくとも、私達の手が届くような代物ではありませんよ。きっと。」
『いつかは届くさ。お前が本気で努力すればな。じゃあ、先行ってるよ。』
そう言って副隊長は、カタパルトからイジェクトされた。完全においていかれた。
「待ってくださいよ!!」
そして、自分もカタパルトからイジェクトした。
世界が小さく見えるほどに加速したが、だんだんと速度が落ちていき、イジェクトされずに止まってしまった。
仕方なく、電磁ロックを外そうとするが、どうにもうまくいかない。どうした?オウエン?
まずい、戦闘に遅れる。
まずは、電磁ロック系統を確認。そこに問題があれば出撃が困難となる。ただ、問題はないようだ。
次に、ロックラダーを確認。このラダーが機体の下半身を司っている。つまり、こいつがいかれたらこの機体は整備工場に入院だ。しかし、やはりここも問題ない。
だとすると、カタパルトに問題がある。
『こちら司令部、オウエンに搭乗中のパイロットに次ぐ。何があった?』
司令部から連絡が来た。それもそうだろう。一人ここで立ち往生しているのだから。
「こちらアルミア、カタパルトに異常があるようで、発進できません!!電磁ロック解除も不可能です!!」
『了解した。では、カタパルトから強制的に電磁ロックを解除させます。』
そうしてしばらくすると、カタパルトから急に稲妻が走り、それが電磁ロックを伝って機体を覆った。
次の瞬間、電磁ロックは、ガシャン!という大きな音を立てて外れた。
「よし、これでいけるんですね!?」
『もちろんだ。音速巡行を許可する。加速していけ。』
「了解!!」
普通、音速以上での飛行は禁止されているが、今回は特別に許可が下りた。
そのため、イグニッション・スラスターを用いて、一気に戦場まで行く。
イグニッションキー解錠。
スラスター、一番、二番、三番、四番、サブ、メインよし!!
ロックラダー最大固定。
よしっ!!いくぞっ!!
スラスターを一気に吹かしながら出力を上げた。
ヒュゴォォォォォォォ…
静香に空を裂きながら音速に到達。
ドゴォン!!ゴゴゴゴォォォ…!!
ソニックブームを起こしながら現地に向かった。
だいぶ煙が上がって、大火事のようになっている。もうすでに決着がついたのだろうか?
とりあえず、着陸用意。ロックラダーを最大まで固定。
シルクでなでるようにそっと…
踵からゆっくり…
…カシャン!!ズザザザザザァ…
よし、うまくいった。急いでマルチブレードを展開し、広域レーダーを見ると、すでに絶望的だった。
「なんだこれは…地獄じゃないか…」
もうすでに特殊部隊もやられたようだ。ゲンガース大佐の機体がない。だが、それ以外はバラバラとなっている。
なんだこれは…
急いで、みんなの部隊のもとに向かう。生きていればいいのだが…
『…くそっ…後方部隊まで、このざまか…』
この声は…
少し掠れたような、凛々しげな雰囲気をも纏うこの声は間違いない。ヴァレト副隊長だ。
「副隊長!!よくご無事で!!」
『おお、アルミア!!カタパルトでトラブルがあったようだな。だがついてよかった。もう部隊は壊滅的だ。篠崎は今、気絶している。
だから、隊長に連れて行かせた。今ここでスナイプしているのだが、状況は最悪だ。』
すでに、残っている部隊はほとんどない、いや、もう分からない。
しばらく、姿勢を低く保ちながら副隊長の後ろで籠っていると、大きな爆発音が何回か聞こえた。
空を裂き、張り裂けるようなこの音は紛れもない、ジェネレーターが大破した音だ。
しばらく見ていると、前方に薄く、煙に紛れて機体の影が見えた。トライデントのようだ。
だが、なんだあの武装は?あんな武装はなかったはず。トライデントにはサブマシンガンが基本的には装備されるはずだった。
しかし、あんな精密ライフルはどこの企業でも製造されてないはず。
しばらくすると、また霧に紛れていった。それにしても何かがおかしい。あのトライデント、記載されているスペックよりもはるかに高性能。
さらに武装も全く別…これは、別の機体と思って取り掛かった方がいいかもしれない。
にしても恐ろしい。この短い間に部隊の八割が壊滅するなんて。
『アルミア!!離れろ!!』
後ろからテレス隊長が猛スピードで私を庇い、一気に地面に伏せた。
その背中の上を、すれすれで光線が過ぎていった。凄まじい出力だ。
わずかに接触したテレス隊長のスラスターが溶解している。
発射されてきたところを見ると、そこには、片手に特大のチェーンソーを三機、それを両手に持っている機体が立っていた。
チェーンソーからはすさまじい熱気を感じる。おそらく、かなり高温の物理ヒートチェーンソーだろう。
…って待て。あの機体は機体一覧表で見たことある。しかし、何かが違う。確かなのは、あんなチェーンソーはついていない。
でもそれ以外にも面影があるが、何かが違う、なんだ?
『アルミア!!ボケっとしてないで、やるぞ!!ヴァレト!!援護を頼んだ!!』
『了解!』
そして構えた時、無線が入った。
『…ちょっと待て…!今こっちはブリッツのような機体に襲われている!!援護できない!!助けてくれ!!…あっ、あぁぁぁぁぁ!!!!!!…』
「ヴァレト副隊長…?ヴァレト副隊長ぉ!!」
応答がない。何者かにやられたようだ。
自分は、心臓が凍り付くような思いになった。自分が相手に及ばなかったせいで彼がやられてしまった。
自分がもっと強ければ…。そうも思った。
動揺もあって、動けなくなった私と、私の機体は戦場のど真ん中で棒立ちしてしまった。
その時、あの機体、アーリータイガーが、両手のチェーンソーを合体させて、巨大な六本のユニットにして突っ込んできた。
もう回避もできない。そう、動揺して、体が全く動かなかったのだ。
目の前にはもうあの切っ先が六本、私の機体に向いた。おしまいだ…
ガシャン!!ガラガラガラガラ!!!!
決意を決めたその時、目の前にテレス隊長がいて、私の代わりにあのチェーンソーを受けた。
数秒もたっていないのに、すでに大きな穴が開いていた。
『…生きろ…アルミア…!』
無線が勝手に切れると、私はどうすればいいのか迷った。
そして、私は、アーリータイガーに足をチェーンソーで掬われてしまった。
まずい!!私は必死に体勢を立て直し、踏み込もうとした。しかし、同時に、奴のシールドヴァッシュの衝撃波で気絶してしまった。
「うっ…な、なんだ?」
どうやら何十分か、気絶していたみたいだ。
目の前には、あのアーリータイガーと、ヴァレトを倒したと思われる機体が、話すように、向かい合って立っていた。
あの機体も、面影はあるが、ブリッツとは似ても似つかない。多くの武装をまとった、重装備と思われる。
幸運なことに、まだ私が生きていることは気づかれていない。さらに、こっちは相手の背中をとれている。それなら…!
まだジェネレーターも生きている。当たり所がよかった。特に脚部も故障はなさそうだ。
ジェネレーターを再始動。
自己診断システムで診断。
よし、いける…!
私は覚悟を決めた。私の部隊の隊長と副隊長の分の仇を取るために。
心の中で、ひそかに鬼が宿り、炎が燃える。
ゆっくりと起き上がり、副隊長がくれたマルチブレードを展開し、全速力で突っ込んだ。
アーリータイガーは振り返る。だが、もう私は目の前だ。
一気に両手を鋤取り、キックをお見舞いした。
続けて左手で、右手の肘関節に忍ばせている短刀を抜き、ジェネレーターを指して地面に固定した。
よし、一機は仕上がった。もう一機が来る前に、急いでもう一機も仕留めよう。
横を向くと、すでにブレードを構えて突進してくるあの機体がいた。
隙が無い。でも、いなすことはできる。
後ろ手クイックブースト手でブレードをいなし、そのまま期待のわき腹と片手を取り、投げで一気に仕留めようとした。
しかし、相手は私の予想の斜め上を言った。
ガシャン!!
なんと、投げようとした瞬間に、脚部が変形。二脚が、ブレード脚になった。
だが、まだいけるはずだ。気にせず投げるが、軽い身のこなしで抜けられてしまった。
まずい、投げのモーションの後には隙が生じる。
すかさず、ブレードで牽制するが、そこをついて、ブリッツのような機体はかの三大勢力衝突時のような雄姿を見せてブレードを合わせた。
何とかスラスターで身をよじる。
だが、左腕を鋤取られた。
まだまだいけるはず。次の技の構えを仕様と、ブレードを持ち上げる。しかし、どうやら機動力で負けたようだ。もう目の前にいる。
ザシン!!
相手の腕に装備されたチェーンブレードがサブジェネレーターに刺さった。
くそっ!!これまでか…
そう思い、覚悟を決めると、どうやら、とどめを刺してこないようだ。なぜだ?
こちらをよく見るように首をかしげると、まさかというような表情を見せたようだった。少し機体に動揺が見えた。
無駄に人間らしいが、そのあと、彼は私の機体から剣を抜いた。
そして、機体の頭に手が伸びるとコックピットの中で不思議なことが起こった。
“エースの孫のようだな。君にはやらなければならない使命がある。だが、それはいまではない。”
その声とともに、コックピットの中で虹色の筋が走る。一体どういうことだ?
これが俗にいうアウトレイジの共振ってやつか?だが、アウトレイジは条約で禁止されたはず。なのにいったいなぜ?
私は、動揺して固まってしまった。
そのあと、私はまた、衝撃波により気絶してしまった。
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