第6話 ヤンデレルートに入りました2

微妙な空気が流れた…

俺はヤってない助かったって思ったけど、ユウスケは俺のそのリアクション見てショック受けた顔した。


咄嗟に「酔った勢いで襲ってなくて良かったです…俺、ユウスケさんのこと大事にしたいから」とエロ漫画でよく見るようなセリフが口から出てきた。

ユウスケは落ち込んだ顔が一瞬で照れて嬉しそうに笑い「はい…あの、楽しみにしてます」


ナニを?


「…シャワー浴びます?会社行くなら早くした方がいいですよ。……あの、しばらく俺たちの関係を秘密にしませんか?」


「なぜですか?」ピリっとする


「何事にも準備期間はいりますし?俺、ちゃんと彼女と別れますから一ヵ月ちょいくらい時間下さい……俺たちの事誰にも内緒にして下さい。ユウスケさんの親は、その、ユウスケさんの事知ってるんですか?」


「……親はオレの事は何も知らないです」

今の言い方で親子関係が希薄か悪い事が察せられる


「いきなり息子がどこぞの馬の骨を彼氏だと連れてきたら、俺が消されませんか?…良くて解雇とか?最善でも左遷とか?

しばらく、と言うかいつか良いタイミングが来ますから…焦らず、ゆっくり!ゆっくり関係を進めて行きましょう?ね?」


「そうですね…」


「俺の存在がユウスケさんの立場を悪くするの嫌なんです。親に繋がってそうな会社関係とかプライベートで親と付き合いのありそうな人…ユウスケさんの場合ほとんどの人がそうだと思いますが、俺達の事を誰にも言わないで下さい」


「わかりました!マコトさんと過ごせて幸せすぎて浮かれてた自分が恥ずかしいです。しばらく考えます」

「理解があって助かります」ホッ


それから、ちゃちゃと皿洗ってシャワーをパッと浴びて大急ぎで着替え、ドライヤー1個しかないのに先に出たユウスケは髪乾かしてないのかよ!

とか思ったけどササッと乾かしてやり

俺は整髪剤使ってないから家になくて、ユウスケが髪がまとまらないとか言ったり。

歯ブラシも予備がショボいのしか無い、けど彼女の歯ブラシは置いてあったり、女物の化粧品類をみつけて睨まれたり…流石に彼女のヘアスプレーは貸さないよ?


「…ちゃんと別れてくれるんですよね?」


顔が怖いから!え?彼女の化粧品でフラグ立ったの?


「何事も準備期間いりますよね?…その、こんな付き合い方するなんて思ってませんでしたから。

でも俺、付き合ったらちゃんと大事にするんで」


「…浮気したら殺して死んでやる」ボソッ


ひぇっ!今の俺たち浮気にならないの?恋人いる相手に手を出して自分から浮気相手になってない?もしかしたらコイツの言う前世も同じ事してたりして?


「うん…だからゆっくり付き合いたかったです」


「オレが急ぎすぎたんですね…すみません、焦って自分の事しか考えてませんでした。本気なんです…本気でマコトさんが欲しかったんです。オレの気持ち受け止めてくれて嬉しいです」


「うん、分かってますよ」死ぬほどな…


肩をポンとして時計を指差す

「もう家出る時間だから!急ごうか?次期社長のユウスケさんは社長出勤できるかもしれないけど、遅刻したら俺は怒られますからね?」


週末は、エリとお泊りなしの普通にデート。俺のかけがえのない大切な時間を過ごした。

泊まりじゃないけど俺の部屋…いつどこでババアやユウスケに見られてるか分からないから本当ウザい


そんな事より俺はどうやって別れを切り出そうか考えていた。


「……俺、最近ストーカーされてるみたいなんだ。エリちゃん何か身の回りで変なこと起こってない?」

「え!?ストーカー?本当に?…私は大丈夫だけど…何かあったの?」

「よく知らない人だし……なんか男がストーカーとか恥ずかしいから今まで言えなかった。自宅付近もウロウロされてるんだ。逆恨みしてエリちゃんに何かあったら嫌だ」

「どんな人なの?」

「ショートヘアでいつも真っ赤な口紅してる中年女性だよ、知らない?移動の時は黒の高級車に乗ってる」

「……本当なの?」


「本当なんだ、危険だから…俺と…別れて」

あっ泣きそうだ。本当ならエリと過ごすはずだった未来の思い出が走馬灯のように流れていく


「…えっ!ねえ、本気なの?」

「もし俺が死んでも、エリのせいじゃないから気に病まないで。俺はエリが無事ならそれでいい。出来れば、こんな会社辞めて幸せになって欲しい。俺はエリちゃんと付き合えてすっごく幸せだからね」

「……本当に冗談じゃないの?怖いんだけど、死ぬとか簡単に言わないでよ」


「…俺はチキンだからどれだけ憎くても誰かを殺したりするの怖い。けど世の中にはインターホンを鳴らすより簡単に人が殺せる極悪人もいるんだよ。俺が目をつけられたのってその部類」

「本当なの?そんな危険なストーカーされてるの?」

「エリを巻き込みたくないから…メールするのも危険かもしれない。俺ヘタレでごめん完全に別れた方が安全だと思う」

「ねえ、何があったの?全部話して!別れるとか、そんなの話しを聞いてそれから私が決めるわ!勝手にマコトくんが決めないで!お願いだから誤魔化さないで嘘つかないで全部本当の事を話して」


エリの目に涙が溜まってた

抱きしめて頭を撫でる、エリの匂いがしてこんな時でもヤりたくなる。ふぅ…俺は生きてる


「ごめん泣かせるつもりは無かった。でもいつも伝えたかった事だから。エリは少しも悪くないよ、俺は君と付き合えて楽しいしずっと好きだよ」

言いたい時にはもう言えなかったから…


「そう思うなら全部話して!」


「俺の事、信じられないと思ったら別れていいからね?俺……

この年をタイムリープしてるんだ過去に10回以上は殺されてる」


「マコトくん!誤魔化そうとしてる?別れ話が面倒だから適当な事を言って私を怒らせようとしてるの?」


「………総務部長は半年くらいで離婚するよ。俺はタイムリープ先でエリから浮気がバレたせいだって聞いた」

「嘘っ!先日結婚式あげたばっかりよね?!」

「今やってるニュースの汚職事件の政治家は解散せずに出直した」

「それは…解散したほうがよくない?」

「みんなそう言って叩かれてたけど、解散すると再起に時間かかるから現状で1番最速な手らしいよ」

「そうなんだ…」

「年末に声優のアキトさん癌でお亡くなり」

「え?!あのベテランの?」

「年末年始は泊まりで温泉旅行するんだ。行き先はエリちゃんが行きたがってた九州の旅館。昔テレビで見たって情報だけで〇〇温泉探したんだよ」

「あっ!その温泉!名前が思い出せなくて私じゃ調べれなかったの…」

「混浴とか服着たまま入れるだけじゃ探すのに苦労したからね…楽しかったよ」

「私はまだ行ってない!」

「春はさ、ユニバ行くんだけどエリちゃん体調悪くてずっと暗い顔してたんだ。だから俺は振られる為の最後のデートかと思ってずっと気を使ってた」

「え?私たち春には別れたの?」

「週明けにケロッと遊びに来て、気の所為だったって俺は平気なふりして内心ドキドキしてたんだ。後になって体調悪くて死にそうだったって知ったんだよ」

「アレの日と重なったのかな?ゴメンね?」


「それから…俺が死ぬ時にエリちゃんの悪評が立つんだ。俺たちが遊び人で痴情のもつれに喧嘩してたって」

「私もマコトくんも遊び人じゃないよ?」

「うん、でもヒソヒソされてエリちゃん辛そうだった。

エリちゃん頑張って耐えてたけど、解雇通知張り出された時もあったし、追い込まれて自主退職したり、田舎に左遷されてそこでも噂がついて回った。エリちゃんがどんどんやつれていくのに、俺はその時、既に生死を彷徨ってて幽体離脱してたから何も出来なかった。何度やり直しても俺死ぬんだ…頭おかしいって思ってる?」

これじゃアイツと同じだな。今回も詰みかな?話すんじゃなかったかな


「マコトくんがどうして死ぬの?誰に殺されるの?…まさかストーカー?」


「うん、最後はサクッと毒殺されてる。女の力じゃ非力だから。何かに毒を盛られて俺は倒れるんだ。その時点で体から俺が出ちゃうんだよ…最初は体が痺れて動かなくなって、病院に運ばれて隙を見て点滴にぷすっとすると時間差で俺は死ぬ。倒れてから最短で1ヶ月?長くても半年持たないね…だいたいこんな感じ」


「本当にそんな事があったの?」

「会社で悪評流すのも、ヤバい薬買って使うのも何の躊躇もない人たちだよ。人の心がないモンスターだよ」

「誰なの?知ってる人なの?」

「…聞けば後戻り出来ない。今度はエリちゃんを巻き込みたくない」

「誰にも言わないから教えて!」

「駄目だ!」

「じゃあ別れない!聞いたら別れてあげるから教えて!信じて欲しいなら教えてよ!マコトくんを信じるから」



「……次期社長の小林ユウスケだよ」



「え?!何で?」

「あいつホモなんだよ…俺狙われてるんだ。協力してるふりして邪魔な俺を殺すのが下手人の辻本ババアミチコさんだよ」

「え?!小林ユウスケって最近留学から帰ってきて総務の下で働いてるって噂のあのカッコイイ人?嘘っ…ゲイだったの?今日一番ショックだわ」


「(イラッ)俺をサクッと殺せる糞だよ。総務の下じゃなくてミチコが手取り足取り教えてるよ。ミチコは親父と息子を両方食べる親子丼しようとしてて、ユウスケはお母さん扱いしてる。あいつら合鍵持っててお互いの家に行き来してるんだよ気持ち悪い」


「何でそんな事知ってるの?」

「タイムリープした時の入院中って暇だから…幽霊?死んでないから生霊かな?会社に行って奴らのアラ捜ししてた。パソコンも引き出しも触れないから見てるだけなんだけど壁はすり抜けられるから密談なら聞きたい放題してるよ」


「それって、私の事も見てた?」

「…うさぎの、お気に入りを抱いて泣いてた…それ以上は辛くて見れなかった。何も出来なくて俺は役立たずでごめん」


抱き寄せたら、ギュッと抱き返してくれた


「…まだ半信半疑だけど、映画の日からマコトくんちょっと変わった感じがしたの。初めて行くコーヒーショップなのに私の好きなカスタマイズでドリンク注文したり。……急にアレが慣れた感じになって受け身のマコトくんが手練れになって、浮気してるんじゃないかって勘繰ってた」


ギョッ「っ……気持ちよかったでしょ?」


「もうっ、そう言う事じゃなくて!でもタイムリープで経験積んでたなら納得よ。そっかマコトくんが急に大人になったんじゃなかったのね…。冗談でしたー…とか言わない?全部本当の事なの?」


「……信じられないよね?俺もそんな事言われたら信じられないよ。エリちゃんがそんな事を言い出したら頭の病院連れてくかな?メンタルのほうじゃなく脳腫瘍とかで幻覚見てるのかなって」


「…私は信じるよ、だってマコトくん確かに変わったから。あっ…だから映画館が寒いって知ってたのね?」

「察しがいいね。君が寒がるから本当はあの日、もつ鍋屋行くはずだったんだ」

「じゃあイタリアン行くことも知ってたの?」

「うん、2回目からずっと。初めてのリアクション上手かった?鶏もも肉のアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノよりカルボナーラの方がエリちゃん好きだよね?」

「ねぇ、何回行ったの?」

「ハハッ…10回は行ったかな?最初の2回は同じの頼んだけど次からは違うの食べてたよ。俺はアンチョビのピザが美味しかった…同じ映画も10回は見たからソラでセリフ言えそうだよ」

「よくそんなに見れるねもう飽きたでしょ?」

「エリちゃんと映画行きたかったんだ」

「ありがとう……マコトくんが死なないようにどう動いたらいい?こっちでも調べようか?警察や弁護士は?」


「駄目なんだ警察も咥え込まれてたし、弁護士は担当の人が消されてた。ババアに横領をでっちあげられてエリちゃん共犯にされた時もあったよ。ババアの独壇場だよ……怖くなった?ごめんね」

「マコトくんの方が壊れそうよ、大丈夫よ今回は助かるわ」


「ユウスケがホモで俺が狙われてる…でもミチコがそれを許せないみたい。俺を消すのが手っ取り早いから虫を踏み潰すように殺されるんだ。今度はエリを守りたい」


「私と別れてからどうするの?」

「まだ試してなくて、試そうとも思わなかったんだけど………」

掘られてみるよ、どうせ多分今回も死ぬし一度くらい頑張ってみる。なんてエリには死んでも言えない


「これ以上はエリを巻き込むから言えない…俺には1年先までの記憶があるけど、今別れた方がまだ思い出に胸を痛める事はないよ、ゴメンな」

「マコトくん…大好きなのに私たち別れなきゃ駄目なの?私たち何も悪いことしてないのに…ウゥゥ」

「変なのに目をつけられた俺のせいだ、ゴメン…

エリが他の男と付き合うのとか想像するだけで相手を殴りたくなる。だけど俺じゃ助けられなかった、いとも簡単に噂を流されて、みんなあからさまにヒソヒソするんだ」


「辻本ミチコの噂聞いたことがあるの…凄く優秀で美人だけど、見た目と違って黒い噂がある方だから。…マコトくんヤバい人に目を付けられたね」

「黒い噂?」この情報は初めてだな、ヤバい人なのは公然の秘密なの?


「マコトくんの入社前、去年の話しなの、社長の愛人とか他の愛人候補を蹴落として辞めさせたりしてるって。過去に2人秘書課の人が無断欠勤で退職してるの」

「社長の愛人は本当らしいね、奥さん殺して秘書課の人も消されてるよ」

「マコトくん…本当に私たち終わりなの?」

「エリちゃん本当は別れたくないよ…俺チキンでゴメン」


その晩のアレはめちゃくちゃ燃えてねっとりたっぷりとても良かった。最後だと思うと頑張ってしまったな


翌朝、エリは自分の荷物を寂しそうに一つ一つカバンに入れていく…寂しくて死にそう、自分から死んでループしてしまいそうだ。

連絡先を消さずに名前を変えて登録した。いざと言う時に連絡取れないと困るから


「…ちょっと!私を"保険屋のおばちゃん"って登録するの辞めてよ!」

「たまに電話あっても変じゃないし?」

「じゃぁ私も"笑うセールスマン"って登録するわよ!」

「ウケる…クククッアハハッ」


お互い未練タラタラで別れるなんて…今まで何人も付き合ったけど、こんな別れ方はした事ない。


「友達としてたまにデートしない?俺寂しくて死にそう……嘘!そんな事したら殺されそうだ」

「マコトくん…もう、しっかりしなさいよ」

「もうエリちゃんとこんな事出来ないと思うとね…死んでまたやり直そうかな?って本気で考えてしまいそう」

「ヘタレすぎ!大丈夫よ今度は死なないわ。私はマコトくんに死んで欲しくない…うぅ…グズッ…生きてればいつか……わ、忘れるから私の事忘れて生きて、マコトくん死なないでぇ」

「エリちゃん…うん」


――ま、結論から言うと俺はこの回も死んだ。

途中まで上手くいってると思ってたのになぁ

俺が迂闊だったんだ、ユウスケと朝を迎えた日に俺がやらかしてた


「なんでオレが次期社長って知ってたんですか?」


社長出勤なんてギャグかますんじゃなかった…

金持ちのボンボンって事で今まで散々騙されてきたから、俺のこともなかなか信じられなかったようだ。

俺の部屋に盗聴器仕掛けられてエリとの会話もその夜の熱いアレも全部筒抜け!


「愛してるって言ったのに嘘つき!」

俺は愛してるなんて一言も言ってない!お前なんて大嫌いだ!

けど再び首絞めくらって、落とされた時はギリギリまだ死んでなかったけど、そのまま流れるようにミチコに知られてサクッと毒殺された

しかも即死!生霊云々を警戒されたのかな?


その後エリがどうなったかも分からない…話すんじゃ無かったと獄中死並に後悔した――



「俺掘られないと駄目なの!?」

「キャッ?!え?寝言?何が駄目なの?」


無事にループできたようだ…ホッ

カレンダーに"覚悟を決めろ"の文字が…頭が冷える


「エリちゃんおはよう…なんか悪夢見てたのに内容忘れた。俺、エリちゃんに謝らないとゴメン」

「ちょっと寝ぼけすぎよ、どんな悪夢よ」

「目が覚めたら忘れた…とりあえず顔洗ってくる」

「そう?朝御飯はパンとコーヒーでいい?」

「うん、エリちゃんの目玉焼き食べたい」

エリのホッペにチュッとおはようの挨拶をしてベッドから降りた


今度は覚悟を決めるぜ!クソッタレ!

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