第5話 ヤンデレルートに入りました

最後に見たカレンダーのメモ書きは"諦めて受け入れろ"だった。意味不明だ


数え間違ってなければ13回死んだ

まあ色々と分かってきた事がある、まずループした時既に俺はミチコにマークされてる。ミチコはユウスケの前世ネタをもちろん信じてなく精神病か脳の異常だと思ってる。俺もそう思うけどな?

ミチコ本人はいわゆる視える人。呪詛?オカルト的なあれ、蠱毒とかリアルでやってる異次元のヤバい人



一度その回の人生を諦めて、ババアの自宅付近で張り込みして出てきた所を殺ろうと襲った。

殴る直前まではコンクリートブロックを粉砕する勢いだったのに、無意識にブレーキかかりまくって鼻折る程度だった…自分でもびっくりだよ俺チキンすぎない?

俺って殺人向いてないわー。俺自身や彼女や両親まであれだけ酷くやられて、憎くて殺してやる!って思ってたのにな?

簡単に俺を殺せるあいつらが異常なだけ!

決行するまで俺の繊細な胃は荒れにあれたのにチクショウ!

しかもあっさり捕まって牢屋行き、気がついたら俺がババアのストーカーにされてて、身に覚えのない横領とか余罪がわんさか出てきた。

何度も関係ないと否定したがエリが共犯者にされ、横領&強盗殺人未遂事件としてニュースにもなって裁判起こされた。

裁判って長いね起訴されるまでも長かったけど、全部終わるまで半年近くかかった。

タイムリープの中で1番家族に泣かれた回だったし、無実のエリを共犯にしてしまった…そして最後は飯に毒盛られて獄中死。心筋梗塞とか病名ついてたかな?

驚く事に一度だけユウスケが面会に来た。しかも握手を求められ泣かれた「やっと会えたのに…あなたの魂は穢れてしまった」とかほざいてたから

「ミチコおばさんに騙されて憐れだな。そんなに俺を犯人に仕立て上げたいのか?調べれば横領額とババアの鼻のシリコン代金が同じだって分かるのにな?お前は前世も含めていつも何もしないな無能め!エリを巻き込むなよ役立たず!」とだけ言って黙秘を貫いた。

前世って俺が言うとユウスケは目の色変えて、キモいくらいはしゃいで馬鹿みたいだった。

でも多分このセリフのせいでババアに毒殺されたと思う。ユウスケは横領とかがババアのでっちあげだと気付いたかもしれんが全て揉み消されておしまいだろうな



その次の回はエリを巻き込まずに別れることにした。

次のループは本気で逃げようとした

目が覚めた日に彼女に別れを告げた。理由は実家の親が死んだことにして仕事辞めて家業継ぐと嘘ついてアパートも引き払って葬儀があるからと速攻で地元に帰った。彼女を巻き込まない選択はこれが最善だったと思う。

逃げ切れると思ったのに…ある日、実家のポストに切手無しの手紙があって中には剥がした爪と愛してますの文字。

家の中で開けたから、驚いた拍子に爪がどっか飛んでって探すのが大変だった。爪を見るまでは両親も半信半疑だったけど、爪と手紙を警察へ持って行った。

男がストーカーされても警察の対応はイマイチ。爪だよ?と見せても、あーハイハイ、パトロール増やしますねでおしまい。母親が怒ってた


もしかして彼女に何かあったのでは?と連絡すると無事で、テレビ電話で爪を見せてくれた。

ミチコの存在を明かして逆に勘ぐられるのも嫌だったから「黙ってたけど俺ストーカーされてたんだ。逆恨みしてエリを襲うかもしれないから1年くらい気をつけて欲しい迷惑かけてごめん」と伝えた。俺が急に実家に帰った訳が分かってちょっと安心したって泣いてた。嫌いになった訳じゃない守りたかったって言うと、相談して欲しかったと呆れられ俺も泣いた。


数日後、ポストに謎の鍵が入っていた。たまたま家の前に落ちてたから親切な人がポストに入れてくれたのだろうと警察に落とし物として届けた。

そして、逆にポストから手紙が抜き取られていたことがあった。引っ越して住民税とか国民年金の請求書とかの市役所からの書類が届いてなかった。

役所で調べてもらうと支払い済だと言う。調べると俺の知らない口座から引き落としされていた。なぜか俺の名義になっていて、前の職場から1千万ほど入金されてた。


横領を押し付けられると思い、面倒だけど弁護士のとこに駆け込んで、間違って入金されてる旨を弁護士から会社に伝えてもらった。

一応「前の職場でミチコってストーカーに追い回されて、会社が知らぬ存ぜぬ見て見ぬふりして助けてもらえなかったから家業を継ぐと言って仕事辞めて逃げて来た」と説明すると苦笑いして了承してくれた。まあ依頼料払ってるしね。


会社側が調べますと言って数日たった頃にポストにまた鍵が入っていた。

今度は手紙も一緒に入っていて、中には地図と「ここで待ってます」とまた爪が入っていた。警察に駆け込んで、母親がキレまくり一緒にその地図の場所に行くと、ユウスケとミチコがいて同棲ごっこみたいな事してた


それ以上に、そこでユウスケが語った内容はヤバかった…

奴の中では俺たちは既に付き合っていて、将来を約束した仲だと言う

「マコトさん会いたかった。あなたがお義母様ですか?彼はオレの為に彼女と別れてくれて、オレの為に仕事を辞めてくれたんです。日本ではまだ同性婚が認められてないけど、いずれはアメリカへ移住し結婚します。そのために2人で預金も貯めてますホラ」

「…それはあの国民年金とか住民税の引き落とし先の通帳か?俺は知らない間に勝手に口座を作られて年金支払われてたんだ。あ、爪が2枚ない…あれお前のだったの?」

「マコト、本当に何も知らないの?」

母親にまで疑われ、俺は断固否定して弁護士事務所に電話して件の口座の説明を求めたが…その弁護士さん行方不明になっていた。もしや消された?


会社に電話してもそんな電話無かったと言われ、役所に電話しても知らないと適当に言われた…クソッ!

爪を手紙に入れるなど、どう考えても異常だけどミチコがわけわからん理論を展開した。

仕事を辞め彼女と別れる事になったから、けじめのつもりで爪をはいだと。こちらが本気で償う気持ちを分かって欲しかったと。

俺は金が欲しいなど一言も言ってないけど「言われた通りに慰謝料も払ってずっと待っていた」とのたまった。

「金なんかいらないですし貰ってません、通帳も勝手に作られました…お願いしますもう関わらないで下さい」

「そんなっ!あんなに愛し合ったのにオレのこと忘れたんですか?思い出して下さいマコトさん!」

こうやって俺はズルズル巻き込まれゲイの結婚詐欺師扱いされ近所でヒソヒソされまくり。

それでもユウスケを拒否し続けたら、ネットやテレビのニュースにまでなり、会社から1千万の横領を訴えられた。

彼女を巻き込みたくなかったからスマホも処分して一家で母方の実家の方へ夜逃げした。

引っ越し先にもユウスケは現れて「誤解なんです、オレの話しを聞いてください」と付きまとわれて田舎でもヒソヒソされるはめに。

すぐまた夜逃げし、引っ越しても追いかけられて、ついに限界が来て一家離散。姉ちゃんだけは守らねばとお互い連絡せずにいて会社辞めてから半年過ぎたあたりで

俺は階段から突き落とされ入院した。ユウスケは病室に当然のようにお見舞いに来て入院費も勝手に支払われた


そこで動けなくなった俺の手を勝手に握り

「オレのせいでマコトさんがこんな目に…オレが一生かけてあなたの面倒を見ます。オレがあなたを幸せにします。やっとあなたがオレだけのものになった…こんな事になったのに、オレは少し嬉しいんです。ずっと愛してます。今度はあなたが死ぬまで側にいますから。でも何で逃げたんですか?逃げなければこんな事故に合わずに済んだのに」

俺の髪を愛おしそうに撫でて、おでこに口づけを落として満足そうに笑っていた。

くたばれサイコパス野郎!

両親は疲弊していて、俺の面倒など見れない

俺は階段から落ちた時に幽体離脱して植物人間になっていた『いっその事殺してくれよ!』と泣き叫んでも誰にも聞こえない。


死神はどこにでもやって来るんだな、ミチコに注射器で毒を打たれ俺の幕は閉じた…この時ばかりは待ちくたびれたぜ。

ユウスケは手首を切って後追いしたが現代医学で一命を取り留め、俺の代わりに昏睡状態に。

ミチコは冷ややかな目でユウスケを見下ろしていた。

俺が死んで体が消滅する火葬場までの短い時間に、ミチコがユウスケの病室を訪れる事は無かった。


それから何回目か忘れたが

ユウスケのくっだらない前世の話しを懇切丁寧に聞いていった。助かるヒントが欲しかったから、だけど無駄だった…

――以下

前世の俺は絶世の美女で良い所のお嬢様で金持ちで優しくて自分を愛してくれてパーフェクトらしい。ユウスケはそのお嬢様の執事兼従者でよく一緒に出かけた云々。人生で一番楽しかった云々。

そしてその美人に二股かけられてたって。

いやそれ俺じゃねーし!二股なんてかけたことないからな!

ユウスケは2番目でいいから愛してほしいと懇願して自らキープくんに。

どっかの軍隊?格闘協会?か何かを利用して本命の彼氏を消そうとして逆に返り討ちに、そして反逆罪で美人の彼女ごと処刑。

最後は自分が先に死んだからどうなったか分からないけど、おそらく刑は免れなかっただろうと泣きながら後悔を語っていた。


アホくさ馬鹿じゃね?何そのエロゲ?漫画の読みすぎ!

ってかコイツのせいで美人のお嬢様が死んでるやん。何となくだけど2番目って言ってるのもコイツが勘違いして勝手にストーカーしただけじゃね?

その心優しい美人も優柔不断とかじゃなくて、やんわりか、もしくははっきりお断りしてるのに話が通じないとかだろうな。

俺じゃないけど、その美人は完全に巻き込まれてるだけの不運な人やん……あれ?今の俺と同じじゃね?

信じる訳じゃないないけど、前世も含めてコイツに粘着されてる事にならね?怖っ!

まあ前世なんて知らんけどな


今回は、もういっそ普通に死んだほうがマシだと思い、一番最初に生き延びた1年前のルートを辿ろうとしたけど、欲が出てスポーツジムに通った。

鍛えたら勝てるんじゃね?と浅はかな事を考えて。

そしたらユウスケがジムに入会してきやがった…今回は早くも詰んだかな?


まあ自然に仲良くなる方法をとるよね?

向こうもそれを意識してるっぽいし、偶然を装って更衣室で隣のロッカー使って顔馴染になって

↑今ここ


俺の飲んでる脂肪燃焼系スポーツ飲料を見てユウスケが自然を装って話しかけてきた

「ちょっといいですか?それって効果あります?」


チラチラ見すぎなんだよ!


「コレっすか?効果はイマイチわかりません。テンション上げる為に飲んでます」

「へぇーそれ美味しいですか?」

「飲んでみます?」

「え?!」


俺の飲みかけなど渡さないよ?

もう一本ロッカーに入れっぱなしにしてたから出して渡す


「開封前の新しいのです。別に布教活動とかじゃないです、おにーさん体鍛えてますね…腹筋エグッ」


本当に腹筋エグい…何なの?勝てそうにないんだけど、力強いわけだわ


「あ、どうもありがとうございます。なんか催促したみたいになってすいません。…あの、よかったらこの後飯行きませんか?オレ最近、越してきてこっちに友達いなくて、これのお礼になんか奢りますよ」


腹筋褒められて嬉しそうに照れて笑った。

前世云々言わなければ普通にイケメンでいい人に見えるね


「ジュースがご飯になるとか俺が得しすぎじゃないですか?割り勘でいッスよ、あ、俺は藤原マコトです」


「小林ユウスケです、ユウスケって呼んで下さいマコトさん」


すっげー嬉しそうに照れながら笑った

そのまま前世言わず普通にしてくれよ、今回は友達目指そうぜ?…俺の着替え見すぎなんだよ!


「越してきたばっかでこの辺り知らないなら俺、案内しますよ。この時間に麺類とか炭水化物食うとアレなんで、おでんか焼き鳥か焼肉ッスか?」

「おでんの店なんてあるんですか?」

「駅裏の商店街におでんの屋台ありますよ、安いしちょい飲みに丁度いいです。駅近いし帰り楽ですよ行ってみます?」

「はい!」


お前は車で迎えがくるだろ?商店街裏ならミチコが車で尾行しにくいはず。女が1人で夜中の飲み屋街を歩けるなら尾行してみやがれ!


それから歩いて向かう間も、俺の営業トークで間を持たせる。接待ならまかせろ!伊達にサラリーマンしてねぇぜ!


「ユウスケさん何か運動部やってたんですか?もとから体鍛えてますよね?」

「オレ、大学でサッカーやってました。マコトさんは?」

「へぇーサッカーやってたんですか何かカッコイイっすね!俺は中学はバスケで高校は水泳やってて、大学はオカルトサークルと美術部入ってました。社会人になると運動しなくなりますよねー」

「それだと大学から運動してないですよね?」

「アチャー、バレました?ハハッ実はオカルトサークルって週末に神社とか寺巡ってて――」


飲み屋街のおでんの屋台に連れてく、ユウスケは喜んでいた。

良い所のお坊ちゃんを案内してはいけない店

今までのループの感じで、何となくコイツはこんな店に連れてくと楽しそうだと思った


「おっちゃん2人いい?」

「あいよ」

カウンターが空いてたから並んで座る


「ユウスケさんトマトのおでんって食べたことあります?けっこうイケましたよ」

「無いです食べます…こう言う屋台ってテレビの中だけだと思ってました」

「俺も大学の時にOBの先輩に連れてきてもらわなかったら行かないですね。大人を通り越しておっさんになったみたいな?ハハッ

おっちゃん、トマトおでんとなんか適当に、瓶ビールとコップ2個」

「あいよ」

瓶ビールをついでやり乾杯する


「お疲れ様でしたー(ゴクゴク)……ぷふぁ!うまっ」

「マコトさん良い飲みっぷりですね…ビールは一口目が1番美味いですよね?」

「そうそう!喉越しが最高ッス」


全てが珍しいくて楽しいとキラキラした目が雄弁に語っていた

最初の絞殺インパクトが強すぎて、ユウスケ本人をちゃんと見ようとしてなかった事に気がついた


箸割る時に歪になって「あっ」とか笑って、なんだ普通じゃないか。

ループしてるからユウスケ本人は同じ人間だけど、出会い方1つでこうも変わって来るの?

ミチコに洗脳されてるだけで、コイツ自身は悪いやつじゃないのかな?恋人とかは無理だけど…何も知らなければ友達になれたかな?


「屋台のおでん初体験です!トマトを丸々沈めた時は驚きました!ほんと美味しいですね」

「な?チーズ乗せて七味唐辛子かけると、トロッとなんかお洒落に見えてくる、不思議っすねアハッ」

「マコトさん、ビールもう一本頼んで良いですか?おでんと飲みたい」

「ユウスケさん結構イケる口ですね、じゃあもう一本だけ」

「オレが注文します、あのっお、おっちゃん!瓶ビールもう一本下さい」

「あいよ」


瓶ビールがドスと置かれ栓をシュポと抜かれた

「次はオレが注ぎます」

「あざっす……あっ溢れる!」


瓶を傾け続けるから急いで縦に戻した

その時に手が触れたのは仕方ないが、思春期の少年みたいな顔で見んなよ


「おっとと…俺、ビールの泡好きなんです」

「オレも好きです」


お前の言い方は告白(カミングアウト)に聞こえるんだけど?


「あの、マコトさん、まだ飲めそうだけど場所変えませんか?」

「あー俺、明日仕事なんですユウスケさんは休みですか?」

「あっそうですよね…。今の仕事は楽しいですか?」


「んーとね、研修期間終わって慣れてきた所ですよ。ウチの会社は3ヶ月の研修期間があって毎月違う部署に回されて流れを把握するんです。慣れた頃に次々移動なんですよ。俺、一人暮らしなんで帰ったら溜まった洗濯しなきゃなんで、また今度!」

「え?一人暮らしですか?それは大変ですね…あ、また次行きましょう。あの…連絡先」

「連絡先ッスね。ハイ」


そう言えば俺の嘘の経歴をババアから吹き込まれてるんだっけ?遊び人のイメージ訂正しておこう


「俺、学生の頃キッチンでバイトしてたんで、そこそこ自炊出来るんですよ。和食も洋食も作れます!姉ちゃんに"アンタの天ぷらお店レベル"って言われましたアハッ」

「へぇそれは凄いですね…マコトさん彼女とかいるんですか?」


知ってるくせにしれっと聞いてくる。俺より嘘つくの上手だね


「最近付き合ったばっかの彼女いますよ。ユウスケさんもいるでしょ?」

「いませんよ」

「黒い高級車に乗ったショートヘアで真っ赤な口紅の、実年齢40くらいだけど頑張って三十代前半に見せかけてる感じの中年女性がスポーツジムの外からユウスケさん見てましたよ?熟女な彼女じゃないんですか?」※ミチコの特徴


「彼女じゃないです!…その中年女性の服装は覚えてますか?」

「そこまでは、高級車と真っ赤な口紅とシミ・シワ消し特殊メイクの感じが親戚のおばちゃんっぽいから本人かと思って見てただけなので…もしかしてストーカーですか?」

「違うと思います…」

「知らない人に付け回されるのって、めっちゃ怖いですよね!俺も似たような中年女性にコソコソ付け回された事あるんで解ります。ユウスケさん気をつけて下さい。あ、なんかあったら遠慮なく連絡して下さい!俺で良かったら力になりますよ」

「…ありがとうございます」


その日はさらっと解散する。ユウスケは駅の改札まで付いてきて見送ってくれたが、俺は一旦電車に乗ったふりして走って戻った。

車のロータリーが見える所に隠れて待つと、黒塗の高級車が来てユウスケを乗せた。


スポーツジムでミチコを見たなんて嘘だけど、本当に来てた。

ふぅー…今日も生き延びだな


それから月木コースでジムへ通う

受付のお姉さんがやたら愛想いいと思ったら連絡先を渡してきた。あれモテ期?

「彼女いますから」と断ろうとしたら「ユウスケさんに渡してください」だと!?

「そーゆーの自分でやってください」と断った上で別のトレーナーにチクっておいた


「先日はどうもです。…マコトさんってモテるんですね」

俺のランニングマシーンの隣をしっかりキープしてるユウスケが話しかけてきた。さっきの受付の娘とのやり取りを見ていたのだろう


「それ嫌味ですか?…受付の娘にユウスケさんに渡してくださいって連絡先寄越されてもねー?欲しかったら本人からもらって下さい」

「そうだったのですか…ククッ」

「くっ!俺も鍛えよう」


スペックでも負けてて、筋力的なステータスも負けてる…あれ?俺これ勝てなくね?


「マコトさん、今日も飯行きます?」

「そっスね、高タンパク低カロリーの焼き鳥行きます?」

「行きます」


すっげー嬉しそうだね。そんなに前世の俺が好きだったの?前世で美女と愛を誓い合ったらしいけど、ここまできたらもう呪だな。前世なんて忘れて新しい今の人生を生きたらいいのに…こんな恵まれた人生送ってるのにさ?


帰りに受付の女の子が頑張ってユウスケに連絡先渡してた

「私、あと30分であがりなんです…良ければご飯でも」


俺がフリーなら即OKしたであろうオッパイ系の癒され可愛い女の子なのに、ユウスケは「すみません」と迷惑そうな顔して断っていた


残念だったね?

と俺なら諦める展開だが彼女は諦めなかった


「あの、(筋トレ)メニューとかおすすめしたいので連絡先だけでも教えて下さい」

「いらないです、マコトさん行きましょう」


そこでなぜか俺が受付の娘に睨まれる

「ちょっとあなた察して下さいよ、見てわからない?空気読んで下さい」


それ、乗ってあげるよお姉さん

「あの、俺今日は帰ります。どうぞそっちで飯食って下さい」

「え?!マコトさん待って下さい」


俺を引き止めようとしたユウスケを受付の娘が腕にまとわりついて引き止めた。ナイス!


「ユウスケさんお疲れ様でした、じゃっ」

「ちょっと待っ、いい加減にしてくれオレは君に興味ない!」

「そんな言い方酷いわ…ウゥゥ私は良かれと思ったのに」


後ろでごちゃごちゃやってるけど無視して帰った。メールでユウスケは謝って来て、今度ちゃんと飯行こうと誘って来た。

冗談のつもりで「付き合ったの?あの娘可愛いかったね」と送ったら「全然好みじゃないので不要です」と返事が来た。


それから数日たってまたジムの日、受付の娘を冷やかしてやろうと思ったらいなかった。

他のトレーナーに聞くと、あの娘は急に来なくなって連絡も取れないと言う…嫌な予感しかしない

ユウスケの邪魔したから消された?もしかして俺のせい?ひぃー!ごめんなさい


いやいや単に振られてユウスケと会いにくいから辞めたのかもだし…

「あ、マコトさんお疲れ様です」

「ぴゃっ!…お疲れ様っす」

「今日は終わったら飯行きましょうね」

「うん行く行くー」



チュンチュンと鳥の声――


うぅ今何時だ?…朝の6時か、飲みすぎたな…久しぶりに二日酔いで頭痛い。

モゾっと隣が動いた

エリにしてはゴツいし違和感が……え?いるのって…


イャァァ!!ユウスケがいるぅ!

やっちまったー!ウホー!!!

何でいんの?えー?ここ俺の部屋だよね??あっパンツはいてる?セーフ!


隣で寝てたユウスケが俺が起きたのに気付いたようだ


「マコトさん、オレ、初めてでした嬉しい」


アッー!!アウトォー!ギャァァァ


「俺…」どうしよう?本当にどうしようかな、もう死んで詫びる?どうせループすればなかった事になるし?


「マコトさん…順番が逆になりましたが、オレたち相性悪くないみたいなんで…つ、つ、付き合いませんか?」

「男として責任とります…?」

「アハッ、マコトさんならそう言ってくれると思ってました。オレが今生も幸せにしてあげます」


放心してる俺に顔を寄せチュッと横っ面にキスかましてきやがった。条件反射で殴るのをぐっと我慢した俺偉いよね?


「マコトさん、今日も仕事ですよね?オレが朝食作りましょうか?」

「…お願いします。あ冷蔵庫にパン入ってます日持ちするんです」


――数分後


「すいません焦がしてしまいました」

ユウスケがシュンとする、イケメンがやると何しても絵になるね


「あぁ、気にしなくていいですよ。フライパンが良くないんです、実家の持ってきたから。コレはパスタ湯がく用に使ってたし…言ってなくてゴメンね」

「新しいの買いましょうか?」

「目玉焼きならコッチの小さい方でやるから大丈夫。後は俺がやりますから、まあ座っててよ。スムージー飲む?コーヒーの方がいい?」

「スムージー?」

「バナナとキウイどっちが好き?」

「マコトさんは?」

「キウイかな、同じのでいいですか?」「はい」


ちゃちゃっと用意する。二日酔いだしサッパリしたキウイスムージー飲みたい

冷蔵庫のパンにチーズ乗せてトースターへ

ベーコンと卵割って入れてフライパンの蓋して目玉焼き

その間に冷凍キウイと飲むヨーグルトをミキサーに入れてスイッチ・オン

後は出来た順に皿に乗せる、冷凍のミックスベリーをスムージーの上に乗せて、はいお洒落!


「いただきまーす」

「マコトさん手慣れてますね」

「まあ一人暮らししてるし、ここ俺の部屋だからね?ホームグランドじゃないから使い勝手違うし、失敗とかホント気にしないでよ?」


「マコトさん優しい…もしかしてオレ彼女扱いされてますか?」

「え?…その体辛くないですか?初めては男女関係無く…その…ケツ大丈夫デスか?」…くぅっ


「え?」


「え?」


――ふぅ、セーフだ!

お泊りデートが初めてだったらしい…女子か!

良かった俺の息子はまだ穢れてない

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