第3章

第3章第1話


それから10年が経った。

人々の数が少なり、人類滅亡の危機に近づいていた。


とある村の少女はレイと言った。

レイの家は余り貧乏とは言えないが毎日生きるのに精一杯だった。


父は村に来た魔物を倒すと言ってから帰ってこず、母は毎日代わる代わる男を連れては行為に至り、金を貰っていた。


レイはそんな母と父を毛嫌いしていた。

自分の事は後回しでレイの為に体を使い、結局は、壊れていく。


レイは6歳という若さにして性の事を詳しくなっていた。

様々なプレイや用語も覚えた。


だが、それはいらない知識であった。



ある日、いつもどうり母が男を連れて来ようと外出した。

レイはその時を見計らい、家から出ようとした。


が、そこにあったのは黒い炎に焼かれる人々だった。


「えっ…」


レイは声を出して驚けるのがとても不思議だった。

声にならない声が出てきてもおかしくないのに。

まるで、心のどこかでこんな状況を願っていたかのように。


すると、気配がした。

全身、漆黒に包まれている人がそこにはいた。

レイはその人を凝視していたが、やがて意識が無くなる。


あぁ、これが、

死なのか。



対してレイを殺したユウタは仮面を外した。


「ふぅ…」


ユウタの顔は漆黒だった。

顔の形が見えなく、顔かどうかも認識できない。


そんな顔を、すぐさま隠し、ある場所に向かった。


「はぁ、思えば長かったな」


思い出すのは10年前の出来事。

カレンが撃たれ死んでしまった後、ユウタは人間を絶滅させようと決意した。


始めは人間不信なだけだった。

だがしかし、この世の黒い部分を見て、出会って、人間嫌悪にまで至ったのだ。


「…。ここも懐かしいな」


そこはユウタが住んでいたオーハタ村があった場所だ。


「よし、やるか」


人間は絶滅させた。

今まで仲良くした人間も、人間を一緒に殺した仲間も、そして今、自分自身を殺せば、

人間はこの世からいなくなる。


ユウタは自身の剣を引き抜き、自分へと向けた。

カレンを思い出す。初恋はレモンのように甘酸っぱいと言う人がいるが、あれは嘘だ。


初恋の味は、苦くて、苦しくて、寒くて、痒くて…

そんなのが沢山集まった硬い結晶を何とか噛み砕こうとして歯が折れたような感じだった。


ユウタは、腹に剣を刺した。

腹はすぐに死なないし、充分苦しんで死ねる。


ユウタは倒れた。


(あぁ、カレンはこれよりも痛かったんだろうなぁ…)


ユウタの体はどんどんと冷めていき、

次第に呼吸も浅くなってきた。


(神様。俺は貴方の事はいないと信じてきた)


ユウタの剣を握る力が無くなる。

目の光が消えていく。


(来世ではどうか、どうか、)


ユウタは最後の力を振り絞る。

手を、天へと伸ばした。


(カレンと幸せな生活を…)


そして、ユウタは死んだ。


人間が1人もいなくなった瞬間であった。


ユウタの願いは、

神様はどうやら聞き入れなかったらしい。

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