第2章第2話
ユウタは何日かして帰った。
リリハやリリトの事だ。
きっとユウタの帰りなんて気にしていないだろう。
そう思っていたユウタだが、とある部屋から声が出ていた事に気がついた。
(なんだろう…)
そう思い、少し開いているドアに目をあてる。
そうするとユウタはリリトとリリハが性行為に及んでいる事に気がついた。
「ん、あぁ!リリトさまぁ!」
「オラ!イケ!」
「ぁあ!」
「ははは、今頃アイツはダンジョンで死んでるだろ。とんでもないやつ連れてきやがって!」
「うぅ!す、すみません…。いぁう…」
「ククっ、もっと鳴けっ!」
ユウタはその光景を見るしか出来なかった。
が、すぐさま写真に納め、どこかへ行った。
まるで、急いでいるかのように。
夜。
「ユウタ様」
「…なんだ」
「単刀直入にお聞きします。 私とリリト様の性行為の写真を持っていますよね」
「…」
「どうなんですか」
「あぁ。持ってる」
「…リリト様が今出かけてらっしゃるのはそういう事でしたか」
リリハは続けて言う。
「貴方は私とリリト様が性行為が出来ない関係だと知っていたのですね」
「…」
「もしそれをしたら、リリト様はもう子供が産めないようにされてしまいます。もしかしたら、精神が崩壊する可能性も」
リリハは怒っているかのように言葉を強くする。
「それを分かってやったのですか」
「あぁ」
「っ…!?死に損ないの癖にそんな事をやるですね…」
「それが、どうした」
「助けてあげたのに」
「助けてくれなんて言ってない」
「応援してあげたのに」
「応援なんかいらなかった」
「生かしてあげたのに」
「生きたのは俺の意思だ」
「っ!一々うるさいですね!」
ユウタはリリハに押し倒された。
ユウタは引き剥がそうとしたが、出来なかった。
「なにすんだ!」
「大丈夫です。気持ち良くしてあげるだけですから」
「!?」
ユウタは本能的にリリハに性的に襲われる危険性を感じた。
「貴方を快楽に染めて、リリト様の無実を証明させてあげます」
「くるなぁ!」
「フフっ、弱いですね。それがダンジョンに行っている人の力ですか」
「クッソぉぉぉぉぉぉ!」
そうしてユウタの童貞は簡単に捨てられたのだった。
「…」
昨日、何回もの絶頂を迎えたリリハとユウタは裸で寝ていた。
「…」
ユウタはどうしてもリリハを殺してやりたかった。
だが、出来なかった。
体力も無くなり、精神的に参っていたからである。
「ん…」
リリハは起きるとすぐさま着替えどこかへ行った。
ユウタはリリハが寝ていた所を殴る。
そうすると、ベットは忽ち壊れてしまった。
ユウタは考えていた。
何故、自分はダンジョンの深層のモンスターを倒したのに、リリハをどけられなかったのかと。
リリハはそんなに強い訳では無いのに。
(そうか…)
ユウタは気がついた。
『それに貴方、死んでないじゃないですか』
(俺が心のどこかで願ってたんだな)
ユウタは手を伸ばした。
(誰かに必要とされて、愛される事を)
大切な人達が死んでしまった悲しみの中、
誰かが生きる糧になってほしい時にリリハが現れた。
ユウタは、着替え始めた。
(ダンジョンへ行こう)
その先を考えたくないが為に家を出た。
が、そこにあったのはいつしか見た村の惨状と同じ景色であった。
「え…」
後ろを見るとさっきまで、家の形をしていた物が潰れていた。
これは、
アイツ。
そう、『《敵》』の技たった。
ユウタは敵を探す。
すると、全身が黒に包まれている人を見つけた
ユウタは剣を出し、切りかける。
敵もそれが想定外なのか、こちらを向いて驚いていた。
だが、切ったのは仮面だけだった。
仮面は、剥がれて落ちる。
ユウタは敵となる相手の顔を見た。
「は…?」
相手は敵でも何でも無かった。
「カレン…?」
初恋の相手であった。
「…バレちゃったか」
そうしてフードを取ったカレンの髪は、前のような長い金髪ではなく短い黒髪だった。
たまに見える首元は漆黒に染まっていた。
「なん、で?」
「…これを伝えちゃったらユウタ君は絶望すると思う」
「…っ、それでも!カレンが何でこんな事をしている知りたい」
「分かった。私は、犯されたの」
突然、空気が凍ったように感じた。
「ユウタ君の父のように優しくしてくれたソルフおじさんは私を快感へと溶かした。ユウタ君が母親のように慕っていたハナタおばさんは押しつぶすように私を虐めた。ユウタ君が兄のように尊敬していたニヤカト兄さんは燃える火のように私の乱れを広めた。村の人達はそれを救わなかった」
「そんなの、俺に何時でも相談してくれたら…」
「ユウタ君は忙しそうだったし、それに」
カレンは息を吸って行った。
「何よりユウタ君が私の事を見てくれ無かったじゃん」
ユウタは今更気がついた。
カレンの魔法がやり返している事を
溶かした人を溶かし、
潰した人を潰し、
燃やした人を燃やした。
そして、ちゃんと見ようとしないユウタ自身は燃えるように苦い苦しみを味わいながら何も見えなくなっていったのだ。
「私、苦しかった。燃えるくらい。なのに、ちゃんと見られなかった。私、ユウタ君なら見てくれるって、好きだって思ったのに!」
「…!俺も、俺もなんだよ!」
「うるさい!もう、ユウタ君なんて…」
「もう何も喋らないでくれ…」
「嫌い!」
「人殺し!」
パァン…!
時間が、ゆっくりと進む。
カレンの頭が撃たれたのだ。
「クソ!誰にでも股を開くような女がよくもリリハを!」
そうリリトが言う。
だが、次の瞬間には頭が無くなった。
だがしかし、ユウタはそれ所では無かった。
「カレン!」
「ごめんね…ユウタ君」
「頼む、生きてくれよ!」
「私は、生きていきたかったんだけどなぁ…。きっと心のどこかで死にたいって思ってたんだな」
「そんなこと…言うなよ!」
「…ありがとう。愛してる。ユウタ君」
「俺もなのに…」
カレンは黒い塵となり、ユウタの体を包む。
それと同時に記憶が流れてくる。
痛い、苦しい、助けて、
でも、
あぁ、こんなに心の中が…暖かい。
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