第1章第2話

次の日、


その日もまた、ソルフおじさんやニヤカト兄さん、ハナタおばさん、カレンから応援をされてダンジョンに潜った。


今日はゴブリンを倒すのが楽に感じた。

昨日、グールを倒したからだろうか。


たまにグールに合い、倒しながら進んでいった。


「ふぅ…今日はカレンに怒られないですみそうだな」


見ると、綺麗な夕方が街全体を、照らしていた。


すると、太陽に照らされた、カレンを見つけた。


「おーい!カレン!」


カレンは肩をビクリとさせ、ゆっくりと振り返る。

その顔は何処か暗い顔だった。だが、ユウタの顔を見て安心したような顔を見せた。


「ユウタ君。今日も無事に帰ってきたんだね」


その声はユウタでさえ分かるくらい弱々しい声だった。

しかも、これまで近かった距離が伸びていた。

これは、何かあった。

ユウタの直感は警鐘を鳴らしていた。


「カレン。何かあった?」


ユウタは自然に、聞いた。


カレンは、目を見開いた。

口を開き閉じ、何か迷いがある目で、

「なんでもないよ」


と言った。

そして、逃げるかのように早足で去って行った。

ユウタはそれを追いかける覚悟が無かった。


ユウタはすぐに家に帰った。

ソルフおじさんにその事を伝えたら、


「女の子にはそんな時があるんだ。あまり触れない方がいい」


と言った。


果たして本当だろうか。

カレンのは、そういう物では無かった。


もっと、重要で、過酷で、虚しいような表情だ。


ユウタはその日、良く眠れなかった。



次の日。


街に、活気が無くなった。


カレンの様子がおかしくなってから、ソルフおじさんも。ニヤカト兄さんも。ハナタおばさんも。

全員が、何かに取り憑かれていたかのようにクマを作り、意味不明な言語をブツブツと繰り返していた。


それを横目にダンジョンに行った。

きっと、数時間して、戻れば、皆笑顔で、

皆仲が良くて、それで、それで…。


ユウタはそんな考えをもっていた。

だが、今の現状が現実である。

簡単な話。ユウタは現実逃避していた。


何処にもやれない苛立ちを敵達にぶつけた。

奥に行けば行くほど、それは強くなっていた。


すると、誰かが倒れていた。

ユウタは急いで駆け出して近づいた。


「大丈夫ですか!?」


「う、うー…」


返事はあるので生きている。

まだ間に合う。

ユウタはポーションをその人に使った。


「あ、ありがとう」


その時だった。


ドスン!ドスン!

と地面を揺らしながら何かが近づいてきた。

見ると、10mはあるであろう蛇がすぐそこまでに近づいていたのだ。


「立てますか?」


「あぁ。」


「なら、出口まで敵に会わずに逃げてください」


「で、でも君は?」


「僕の事はいいから早く!」


「は、はい!」


そうして彼がいなくなった。


『クルル…』


「来いよ…」


『シャー!』


歯を立てながら迫ってくるのを上手くかわし、体に剣を振る。


『グラァ!』

痛がっている。

どうやら、攻撃は効いているらしい。

ならば、攻撃を当て続けるだけ。


ユウタは早速、蛇の体を突き刺す。


『クラァ!』


「クッ!」


蛇が体全体を動かし、抵抗してくる。

図体がデカいと動きずらいらしいが、どうやらこの蛇は違うようだ。


(なら、隙を付いて攻撃を入れれば…!)


そう考えたユウタは近くにいたスライムを蛇の目を目掛けて、投げた。


『キィァァァ!』


どうやら効果抜群らしく蛇は身を固めた。

そうしている間にユウタは走り、飛び、頭を狙うように突き刺した。


『クラァ!クルァァァ!』


すると蛇が全力の抵抗をし、地面が割れる。

不味い。そう感じるのには遅かった。


地面は崩れ落ち、それに蛇と蛇をさしたユウタまで巻き込まれた。


「クッ!」


剣を離せば、死ぬ。

そう分かっていても、振動や落ちる時に振りほどかれそうだった。


いずれ、その勢いは止み、地面へと叩きつけられた。


「はぁ、はぁ」


ユウタは生きた心地がしなかった。

だが、地獄はここからだった。

ダンジョンは、階層が下に行くほど敵が強くなっていくのだ。


そしてさっき、蛇と一緒に下に落ちていった。


『グルルルッ!』

『キシャー!』

『カリリ!』


「ひっ!」


敵が強くなりさらに、多くなっていた。

怯えるユウタだが、そんなのお構いなしに敵は襲ってくる。


ありふれた日常とユウタ自信が壊れ始めた瞬間だった。




1時間後…。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


敵から逃げ切り、何階層か上り、ユウタには疲れが出てきた。


(早く、早く帰らなきゃ。カレンが心配してるんだから)


そう思っても、疲れ果てた体は言う事は聞かない。


30


それは、蟻がカマキリを一匹で倒したような、頭が悪い人が頭の良い人になんの勉強も無しで勝ったような、そんな無理で、驚愕の事が起こったのである。



(まぁ、デカゴキブリを倒すのには良いくらいの時間か)


ユウタはその重みを知らなかった。

生きてることさえ、運が味方してくれたからこそであるのに、敵に襲われた上、強敵を倒した。


ユウタは無自覚に、確実に、青天の霹靂のように、成長していった。


そんなユウタでも体力の限界が来ていた。

当然だ。

今は何時かは分からないが、きっと夜遅くである。

いつも10時には自然に寝ているユウタからしたら、寝そうで限界だった。

人の3大欲求の全てが溜まりに溜まっているユウタは立ち止まる事は出来なかった。


それなのに、体は活動終了の準備をしている。


そこに、ちょっとした穴があった。

人1人は入れそうである。

そこで寝ようか。

ユウタは、もし敵の巣だったら、穴が下に続いていたら、

そんな危険を考えずに中に入った。


中は暖かく、まるで、誰かに包まるているような気分がした。

そうして、ユウタは眠りに入った…。


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