第14話 ギャルとメイド(2)
───先手を打ったのはアヤカだった。
疾風の速度を持って一気に相手に接近する。
アヤカは近距離を主流とするタイプではないが、それでも初手で接近戦を選んだのには理由があった。
戦い慣れていないルーキーが急に接近されたのなら取れる選択肢は限られる。
近距離タイプであるなら受けてくる。
遠距離タイプなら距離を取る。
それ以外なら───、
「っ、龍流忍術、土石龍!」
こんな風にセオリー通りの対応をしてくる。
(これだからルーキーは好きだ。素直で、読みやすくて、そして弱い)
「鎌鼬」
放たれた濁流はアヤカに触れることなく寸断されていく。
アヤカは速度を緩めることなく咲に向かって突進していく。
「龍流忍術!岩天蓋!」
咲の周りを地面から盛り上がってきた岩石がドーム状に覆う。
この忍術は岩による防御である。
つまり───、
「ぶ、はははは!!おいマジかよ!!あそこまで息巻いておいて逃げ!?最高だな!!」
アヤカは思わず吹き出していた。
あまりにも無様すぎる様子を見て、積み重なっていたストレスも相まってS心に火がついてしまったのだ。
「おいー?頑張って避けろよー?運が良ければ桃太郎みたいになれるかもなぁ!!」
足を振り上げ、岩のドームを踏み付ける。
鎌鼬の付与された右足は岩を豆腐のように切り裂き、手応えすらなく地面を踏み付けた。
「……あん?」
そう、手応えすらなく。
割れた岩の中には、誰もいなかった。
「───クソボケあそばせ。油断大敵の教材として坊ちゃまに見せたいくらいですね」
振り返ると、アヤカの後方で印を結んでいる咲の姿があった。
咄嗟に駆け寄ろうとするも既に術の発動準備は終わってた。
「メイド流忍術、Madeインメイド」
ぼこぼこと地面が泡立ち、何体もの土塊たちが人の形を取り始める。
やがてそれらは給仕服を着た使用人、メイドの姿をかたどった。
よく見ればそれぞれ特徴の違うメイドたちは指示を待っているように佇んでいた。
「メイド流忍術、orderメイド」
その術の発動と共に土塊のメイドたちの目に光が宿る。
そしてそれぞれが独自の構えを取り、地面から様々な武器を生成していた。
「───それでは、リンチの時間にございます。どうぞ堪能されますよう」
咲が指を鳴らすのと同時に、無数のメイドゴーレムたちがアヤカに襲いかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます