第13話 ギャルとメイド
「はぁ、はぁ、流石に、襲撃の数も減ってきたか?」
倒した忍者を見下ろしながらアヤカは額ににじんだ汗を拭った。
「クソッ、あのババア余計な真似しやがって」
アヤカは怒っていた。
今の状況にではない、頭領に対してだ。
オダと同盟を組むことによって様々な問題が発生することは予想していた。
しかしそれを解決することが次期頭領としての責務であり、頭領としての実績を積むためのチャンスだと思っていた。
しかし頭領はその機会を台無しにした。
これでギャル流の忍者たちはこう思うだろう。
これは頭領が悪い、と。
オダを引き入れたことによるリスクなんて頭から飛んでいき、頭領がヘイトの全てを受けるということだ。
アヤカはその行為が未熟な後継者への献身的なサポートなどではないことを理解していた。
───お前の考えなど掌の上。お前の道はワタシが敷いてやる。
暗に頭領はそう言っているのだ。
アヤカを頭領として認める気すらなく、自らがその座を譲る気もない。
アヤカを傀儡として上に座らせて、自分は裏から全てを意のままにするつもりなのだ。
───そしてそれをアヤカに隠す気もない。
その事実がアヤカを苛立たせた。
「なめ、やがって」
倒れている忍者を力任せに蹴り上げその怒りを発散する。
為す術もなく打ち上げられた忍者は唾液を撒き散らしながら宙を舞った。
そして、その唾液の一滴に反射する影があった。
咄嗟に振り返りその影の殺意のこもった腕を蹴り飛ばす。
不意打ちに対応されたその影は少しだけ驚くと能面のような無機質な表情を浮かべた。
「おいコラぁ、どこの田舎もんだよ。そこに転がってる雑魚ですら仕掛ける前に名乗ったぞ」
「あら失礼しました。あまりにも無防備な背中だったので誘っているのかと」
その人物は服の埃を払うと懐から白手袋を取り出して装着するとスカートの裾をつまみ、礼をした。
「それでは名乗らせていただきます。わたくし、メイド流忍者、天乱 咲と申します。それではどうか、死んでくださいませ」
有無を言わさず構えを取った咲と名乗る忍者を見て、アヤカは鼻で笑った。
「不意打ちはする。忍者同士の風情も知らない。メイド流とやら、お前、新興流派だろ?」
「───貴様……!!」
アヤカの言葉に顔を歪めて怒りを示す咲を見て、アヤカはやはりな、と思った。
こいつはギャル流によって衰退した流派のルーキーだ。
「怒ったか?ちょっと待てな。今思い出す……。うーん、メイド流……あぁ!!思い出した!!うちのミユに頭領潰されて落ちぶれた流派だろ!!身の程知らずの雑魚だったから一蹴したって言ってたわ!!」
───咲は言葉の代わりに足で地面を踏み砕いた。
歯を砕かんほどに食いしばり、目に見えるほどの殺意をアヤカに向ける。
「くっ、くくく、ギャル流忍者、アヤカ。───かかってこい三下」
「殺す……!!」
因縁有りの復讐劇。
これこそ闇の真骨頂。
いざ尋常に、始め。
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