全然関係ないってことにはならない
「お前もなかなか強かったよ。俺以外なら大体死んでただろ」
いやマジでな。俺だから全部なんとかなったが、俺以外だったら全ての技が即死級だ。命の根本に関わる技ばっかだったからな。どれか一つでもまともに受ければその時点で終わり。とんでもない魔法使いだった。
ただ俺との相性があり得ないくらい悪かったってだけだ。
「お褒めいただき光栄の限り。私も、素晴らしいものを見せていただきました。最後の魔法、即興で作り上げたのでしょう?」
「そうだな。お前の魔法から逆算して作った魔法だ。なかなか凄かっただろ?」
「ええ。私の黄昏の魔法は、自分で言うのもなんですが現代にて最高峰の力の具現。それの
まあね。割とそういうの得意だからな。
「なにより……あの美しい世界……ふふ。私もあなたが見ているものを、信じてみたくなった」
ほーん?なんか心境に変化があったか。いいことだ、多分。シアンが俺の瞳をじっと見つめている。なんだ?
「やりたいことができました。少々、準備が必要ですね」
「おーう。悪いことはすんなよ」
「あなた基準では悪いことではないと思いますよ。部下たちの説得が少々骨が折れますね。なんとかなるでしょうけど」
何する気だこいつ。悪いことする気がないならいいけど。訝しげに瞳を見つめ返す。黄昏色の昏い瞳に、何かしらの活力が宿っているのが見えた。
「何か知らんが頑張れよ〜」
「きっとあなたも驚きますよ。今回のお返しをしてあげましょう」
「おう待ってるわ」
じゃあ割と楽しみにしとくか。それはそれとしてそろそろ帰らないとな。先輩待たせすぎるの悪いし。あー、寺の人たち……はいいか。大丈夫だろ多分。
「んじゃ俺帰るから。気が向いたらまた遊ぼうぜ」
「では近いうちにまた。そのときは楽しみましょう」
「うーいまたなー」
さあ帰ろう帰ろう。先輩の縁を探す。うーん、ここら辺かな。あ、いたわ。よし。
縁と縁を繋ぐ。人と人を繋ぐ。道と道を繋ぐ。縁は人であり、人は道。そして、道ならば通れるのも道理。
景色が入れ替わる。寺の前から、先輩の部屋の中へ。
部屋の中を見渡すと、先輩が双子に囲まれていた。
「本当にお怪我はないですか?どんな小さな傷でも治してみせますから、正直に言ってくださいね」
「いやだから大丈夫だって!どこも痛めてないから!」
「ほんとに?ほんとに大丈夫?怖い思いしなかった?」
あー過剰に心配されとる。ウケるね。どんだけ過保護なんだよ双子も。そんなベタベタ先輩触りやがって。ん?お前ら触りたいだけじゃないか?なんか歪み始めてない?大丈夫?俺怖いよ。
「ぶっちゃけ天童と一緒にいるのが一番の恐怖体験……」
「おい」
「うわーーーーー!!!!!!」
今日一番の悲鳴を上げるなうるさい。失礼すぎるだろ。アホか。大体俺と一緒にいるのが一番の恐怖体験ってなんなんだよ許せねぇな。
「は、はは……帰ってるなら早めに教えてくれてもいいんじゃないか……?」
「双子といちゃついてるのを邪魔するのも悪いしな」
「いちゃついてねぇよ!お前らもなんか言ってやれ!」
先輩に言われると双子どもがもじもじとする。おい。
「い、いちゃつくだなんてそんな……全くそんなつもりは……」
「そ、そうだよ!山にいといちゃつくなんて……ねぇ……?」
順調に関わり合いになりたくなくなってきたな。ごめんね先輩。こいつらもうダメかもです。自分の容姿が可愛いからって調子に乗ってるところあるよな。
「じゃあ俺、帰るから……」
「あ、ちょっと待ってくれ」
先輩が俺を呼び止める。なんだ?
「今日はありがとう。総がいなければ助けられない人たちがたくさんいたんだ。助かった」
「金貰えるしな。俺は仕事しただけだ」
先輩から感謝されることはないだろ。
「そういうなよ。人を助けたいってのはただの俺のエゴだよ。それを手伝ってくれたこと、マジで感謝してんだ。ありがとうな」
ああ、そう。
小っ恥ずかしいな。頭が痒くなってきたわ。ガシガシと手で頭を掻く。
「どういたしまして。じゃ、そういうことで」
「おう!またいつでも来いよ!」
先輩が手を振って見送ってくれる。わかったよ。またくるさ。
「天童様!さよなら〜!またね!」
「またお会いしましょう。お元気で」
双子も手を振る。明るくなったな、お前ら。やっぱ環境の問題だよな。天童院、どうにかしないとなぁ。
見送られながら外に出ていく。……気分は悪くない。帰るか。
数日後、魔法紳士美少女系Vtuber(イケボ)ウェルトラス・ルーゼシアンがデビューしたのは俺とは全然関係ない話ってことになんないかな。なんないよね。そうだね。
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