ゲーム配信!3
:いつ見ても羅刹は迫力あるな
:羅刹VS夜叉とかほぼ怪獣バトルだからな
:まあ毘沙門天にはひっくり返っても勝てないんですけどね
:羅刹と夜叉がタッグ組んで戦いが成立するレベルだもんな
:それでも夜叉より全然強い定期
説明するタイプのモブかお前らは。反感買うから言わんが。
しかし羅刹か。こいつ疾い、堅い、強いの三拍子揃っててめんどくさいんだよな。
やることは何も変わらない。敵の攻撃を全部避けて顔面に弾をぶち込むだけ。ただ難易度が段違いだ。
「現実なら楽勝だがゲームの俺の体は脆くて困る」
:逆ゥ!
:確かに不思議な力はあるっぽいけど鬼には勝てねぇだろw
「いやいやこれくらいの鬼とは割と」
羅刹の身体がブレたと思ったらすでに目の前にいたので普通に回避。
「戦ってたっちゅーの」
:よく避けられたな
:拙者鬼が出てくるような世界観に住みたくないでござる
:でも普通に身体能力は気になるよな
:少なくとも動体視力はいいよね
「いつかお前らの前で俺の力見せたるからな……」
ぼやきつつ羅刹の猛攻を回避する。顔面撃ってるけど大して効いてね〜。
羅刹は疾い。本当に早くて速くて疾い。さっきのワープじみた高速移動(実質的にはワープと変わらん)に発生フレームが全部5F以下の超優秀な攻撃を各種備えている。もちろん人間態で当たったら全部即死。あークソゲクソゲ。
避ける避ける避ける避ける。もう全部避けて避けて避ける。当てる当てる当てる当てる。全ての弾を顔面に当てる当てる当てる当てる当てる。
「ほんっとにHP減らねぇな!」
:これだけやってもまだ5分の1くらいしか削れてないよな
:かった
:人間じゃ無理だよ
「だから諦めないっての」
このままいけば俺の勝ちだし。
「そんだけ疾いと操作も大変だろ?ん?」
だから俺に攻撃が当たんねぇんだ。
上位のghostの性能は確かにクソ強いがどちらかというと対ghostを意識した性能をしている。つまり小回りが利いて的が小さい人間には微妙に適してないんだなこれが。
そもそも俺のキャラコンが死ぬほど上手いってのは前提条件だけどな。
「感じるぜ。お前の焦り。気がついてるな?」
「──この人、本当に強い」
:頑張って!
:全部避けてる……
:本当にチートじゃないの!?
:今運営に問い合わせてる
「チートではないです。チーターにはこんな動きはできない。彼の細かな所作が、人間であることを証明している」
夥しい数のフェイント。私が移動するラインへの正確無比な予測撃ち。スレスレで回避する反射神経の高さ。そして何より変化していく状況に対する異常なまでの適応能力。
「本当にすごい……」
成し遂げてしまうかもしれない。私がかつて諦めたことを。私がこのゲームにいつか見た、そしてとうとう成し得ないと結論づけてしまった夢を。
──だからこそ。
「私はあなたを全力で打ち倒します」
そして見せて欲しい。
人間は────
「人間は怪物なんかに負けねぇってなァ!!!」
:おいおいおいおい
:マジかよ本当に当たってねぇ
:これ体力半分くらいまで行ってるんちゃう?
:でももうフィールド狭いよ
:この狭さで避け続けるの無理では?
全て避ける。全て当てる。これを続けていれば勝てる。確かにその通りだ。
これができていたのはフィールドの範囲がある程度あったからでもある。だが、もう最後のフィールド縮小が始まった。
:これ勝てる!?
:狭くなったフィールドでも避け続けられるならワンチャン
:あと1分で削り切るの無理ゲーでしょ
「削り切らなくていいんだよ」
羅刹の攻撃が一層激しくなる。高速移動による俺の後ろを取るとみせかけた上方向への跳躍。回避。着地と同時に振り向きざまのパンチ。回避。足払い。回避。飛びかかり。回避。
「俺の攻撃で倒す必要はない」
:なんで?
:あーーーそっかフィールド外って固定じゃなくて割合ダメージなんだ
「その通り」
フィールドの外に出た場合プレイヤーはダメージを受ける。ただそのダメージの数値は%だ。膨大な体力差があれど、同タイミングでフィールド外に入れば無傷の俺が勝つ。
残り10秒。
フィールドは極限まで狭くなる。こうなるともう回避は難しいな。
:本当に勝っちゃう!?!?
:偉業じゃん
:まだ誰も達成したことねーぞ!!!
:頑張って
:勝て!!!!!!!
残り8秒。
羅刹の大ぶりな腕の振り回しによる攻撃。もちろん普通なら悠々と躱せるが、フィールドの範囲的に無理だな。
「しゃーねぇなぁ!」
バックステップでフィールド外に出る。
HPがガリガリ削れていく。
モーションが終了したのを見てから再度フィールドにイン。HPが羅刹以下になった瞬間俺は終わりだ。
残り4秒。
羅刹が足を大きく上げたのが見えた。範囲攻撃の予兆。地に足を付けていると膨大なダメージとスタンを喰らう地割れだ。もちろん人間は死ぬ。
まだ飛ばない。飛ばない。飛ばない。
足が付く。地面がひび割れ、それが広がっていく。飛ぶ。
残り3秒。
俺が飛んだのを見逃す羅刹じゃない。地割れのモーションの終了をじっと堪えている。
残り2秒。
俺が地面に着く前に硬直が終わった羅刹が飛び込んでくる。真っ直ぐ、真っ直ぐすぎるほど完璧に俺を狙った飛び蹴りに向かってショットガンを撃つ。
残り1秒。
空中でショットガンを打った反動で後ろに吹っ飛ぶ。
その飛び蹴りは届かない。
残り0秒。
お互いは既にフィールドの外。
体力がもの凄い勢いで削れていく。
最後の一撃になると分かっていた。
このまま避けることに専念すれば、俺の勝ち。
フィールドの広さはすでに関係なく、俺からすれば最後の羅刹の一撃を避けることなんて簡単だ。
それでも。
「お前を打ち倒すのは俺だ」
勝つ。今飛び込んできている羅刹の拳からそんな執念が伝わってくる。
俺も同じ気持ちだよ。
ショットガンを撃つ。
眼前の拳は止まっていた。
「強かったなぁ」
:かっっっっっっった!!!!!!!!
:人間で勝利うおおおおおおおおおおおお
:今夜はカツ丼じゃあ!!!!!!!!!!!!!!
:とんでもない大物新人が来たでぇこれは
:なんか泣いてる
:霊能力とか全く関係なしでもとんでもねぇ新人だ
ピコン。通知の音がしたと思ったら「本物のghost」という称号を手に入れたらしい。
化物を打ち倒す人間こそが本物の化物ってか?やかましいわ。
「今日はこんなもんでいいか。配信終わるわ。じゃあな」
:一試合で配信をやめる男
:これはしゃーない
:絶対ネット記事になるぞこれ
:俺たちはとんでもないものを見てしまったのかもしれん
いやいや俺の凄さがわかるのはこれからだぜ。
全人類に教えてやるんだよ。俺という存在をな。
配信を閉じた。
「いやー結構楽しかったな」
ゲームに真面目に取り組むことあんまりなかったからな。今日はいい試合ができた。
さて。
トゥイッターの通知がかなり多い。その中の一つに、桐ヶ崎 峰にフォローされたという知らせもあった。
フォロバした。楽しかったもんなぁ。また遊ぼうぜ。
DMまで来た。
【はじめまして。今日はありがとうございました。あれほど素晴らしい試合に参加させていただいたことを誇りに思います。
話は変わりますが、天童院さんもVtuberをやっていると伺いました。よければ私とコラボしませんか?】
また遊ぶってそんな近日中の話じゃなかったんだけどね。うん。
「マジかよ……」
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