n回目の転移で異世界を救済してみた

ロード

第1話 n回目の転移

「今回の転移も上手く行ったみたいだな。さて、この世界で俺がやるべきことを探そうか・・・・ってなんだ・・・これは・・・。まるで世界の終わりじゃないか・・・。」




荒廃した世界の真ん中で一人佇むこの青年。その名はロイロ・サルバトーレ。自身の世界を探すべく幾千万と異世界転移を繰り返してきた超人だ。ロイロの秀でているところと言えば単純に魔力のコントロールだろう。どんな高位階魔術でもすぐに使いこなしてみせるのだ。そしてもう一つ秀でているとすれば環境把握能力だ。ロイロの環境把握能力は凄まじく、風景の違いから風の流れまで読み取ってみせるのだ。


そんなロイロは辺りを一通り見回す。すると木や鉄板をツギハギして作られた小さな小屋を発見する。




「あの小屋、人の気配がある。とりあえずこの世界について聞いてみるか。」




そうつぶやくとロイロはその小屋に向かい、ノックをする。




「誰かいるのか?いるなら出てきてくれ。」




ロイロがそう言うと中から怯えた様子のおじいさんが出てくる。




「なんじゃ?まさか連合軍の関係者か!?」


「違うんだ爺さん、俺はどこの関係者でもない、ただの一般人だ!」


「ほう?その様子じゃと本当なのじゃろうな。よし、中に入るといい。」




そう言っておじいさんはロイロを招き入れる。するとロイロは驚愕の声を上げる。




「なんだこれは・・・!」




そこで目にしたものは・・・大量のナイフや拳銃といった武器の類だったのだ。




「爺さん、これは一体何なんだ?」


「あんた知らないのか?この世界はもう終わっているんじゃ。」


「終わっている?どういうことだ?詳しく聞かせてくれ。」


「事の発端は二年前、世界の各地に巨大な隕石が落ちてきてのぉ。そこからは早かった。大量の神話生物で町は溢れ返り、政治システムは全て崩壊、今世界を牛耳っているのは世界連合軍とその配下の魔導兵団じゃな。連合軍は次第に暴走し、逆らう者は即刻処刑するまでになってしまった。」


「世界連合軍か・・・。それのトップはどんな奴なんだ?」


「連合軍のトップか?それはのぉ、エルガト・デストルックトルという人間じゃ。この男はかつての戦争で負けなしとまで言われた男じゃ。はっきり言って奴に勝てる者はもうこの世界には存在しない。皆諦めておるわい。」


「へぇぇ?負けなしかぁ。一度戦ってみたいわぁ。」


「なんじゃと!?そんなこと冗談でも言うでない。聞かれでもしたら・・・。」


「大丈夫だよ。俺強いからさ。」


「本当かのう・・・。」




その時だった、その小屋の入り口付近で大きな物音がした。




「なんじゃ!?」


「爺さんはここで待っときな。俺が行く。」


「頼むぞ、お前さんには色々と聞きたいことがあるのじゃ。」


「あぁ、ナイフとこの拳銃は借りてくぜ?」


「おう、もちろんじゃ。」




そう言ってロイロは入口の方へ向かっていく。そこには見たこともない生物がいた。その容姿は手足には鋭く長い爪、全身を硬い鱗で覆われている四足歩行の異形の生物だった。




「おぉい、こりゃどういうことだ?まさか神話生物か何かか?」




そのつぶやきに応えるように唸り声をあげる異形の生物。次の瞬間だった。異形の生物はその鋭い爪をロイロに向けて振るってきたのだ。




「おっとぉ!危ないねぇ。」




ロイロは当たり前のようにその攻撃を躱して見せた。




「どんな生物にもな、振り終わりには隙が生まれるもんだ。俺の斬撃は鋼鉄も切り裂く。」




次の刹那、ロイロは借り物のナイフを凄まじい速度で振り抜く。そのナイフは容赦なく異形の生物の右前足を切り飛ばしたのだ。それに耐えられなかったのか異形の生物は遠吠えを上げる。




「さぁ、そろそろ死んでもらおうか。時間がもったいないんでな。」




そうつぶやくと同時、ロイロが左手を前に掲げる。




「『聖なる炎よ・彼の者を救済せよ』」




ロイロがゆっくりと唱えた瞬間、手のひらには魔術の法陣が現れ、炎が圧縮されていく。




「死は救済・・ってな。喰らっとけ!『フレイム・オブ・レリーフ』!!」




煌々と輝く炎が異形の生物目掛けて撃ち放たれる。その炎は異形の生物を巻き込み、さらに激しく燃え続ける。そして少しの時が経つと、そこには異形の生物の痕跡は何も残っておらず、跡形もなく消え去っていた。




「爺さん、怪物の処理は終わったぜ。」


「お前さん・・・、まさか魔術師か?」


「んあ?魔術師か・・・。まぁそんなところかな。言っちまえば、通りすがりの魔術師ってところだ。それがどうかしたのか?」


「ありえん・・・。だが実際神話生物を倒すほどの実力があるか・・・。お前さんに一つ頼みたいことがあるんじゃ。」


「ん?なんだ?」


「この世界を・・・救ってくれんか?この望みをかなえてくれるのはお前さんだけじゃ。どうか・・・頼む・・・!」


「この世界を救うか・・・。」(世界の救済、それがこの世界でやるべきことなのか・・・?)


「無理を言っていることは承知の上じゃ・・・!」


「わかった、その願い、叶えてやるよ。」


「本当か!?ありがたい・・・。ところでお前さん、名前は?」


「俺の名はロイロ・サルバトーレ。通りすがりの魔術師だ。」


「ロイロじゃな、よろしく頼んだぞ・・?」


「当たり前だ。絶対にこの世界を救済してやる。」




こうしてロイロは世界を救うため、そして己の世界を見つけるために旅に出るのだった。だが、この時既に、歪んだ歯車は回り始めていた・・・。




「へぇぇ?ここが『終わりの世界』ねぇ。潰し甲斐がありそうじゃなぁい。ようやく見つけたよ。ロイロ。」

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n回目の転移で異世界を救済してみた ロード @takumi0913

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