第5話
突然ですが、私は幼少の頃より白馬の王子様に憧れておりました。
真っ白な駿馬に跨り颯爽と現れてお困り事を解決する。
なんと格好いいのでしょう。私もそのような大人物になりたいものです。
無論、ここで言う憧れとは被救済願望ではありません。
例えばの話です。
私がかの有名なシンデレラだとしましょう。
ある日、イジワルな継母たちにいじめられて舞踏会への不参加を命じられたとして。
シンデレラは泣き崩れてしまいましたが、私はしゃらくせぇッ!とばかりに家中をピカピカに磨いた後、フェアリーゴッドマザーと共に広間の拡張工事を敢行して、舞踏会の会場を我が屋敷に変更させるよう仕向ける気概があります。
私は私の目の前に立ちはだかる障害に対して常に体当たり精神なのです。
つまるところ、私は白馬の王子様に迎えに来てもらうのではなく、むしろ私が王子様ををお迎えに上がりたい系乙女なのです。
しかし、現実は非情なり。
今の私は似て非なる完全な別物と化しておりました。
空を駆けるは可愛らしいパグ。
その背には王子様のように勇ましい顔つきをして髪の毛をたなびかせる乙女が一人。
そうです。
現在、私はまめ次郎さんに騎乗して、虹のたもとへと向かっているのでした。
もしもここに乙姫さんがいたらこう言ったことでしょう。
デパートの屋上とかにあるパンダ号に乗っているお子様みたいね、と。
「まめ次郎さん、重くはないのですか?」
「このくらいなんてことはない。まるで羽のようだ」
「あら、随分とプレイドックなのですね」
「なにせパグ界一の美パグだからね。生前はよくモテたものだよ」
そんな軽口を交わしながら、私は足元を覗きました。
遥か眼下に広がるはどことも知れぬ町並み。
それらがどんどん後ろへと流れていきます。
顔にへばりつく髪を掻き上げて、ずいぶん遠くまで来たものだと感心しました。
当初は虹のたもとまで我が健脚をもって踏破しようという腹積もりだったのですが、まめ次郎さん曰く、虹のたもととは世界の果てのとある雲海にあるのだとか。
いくら私でも即日で世界の果てに辿り着くのは困難です。せめて一週間は欲しいところ。
しかしそんなことは言っていられないのが現状。
私はまめ次郎さんに平身低頭お願いして、空旅を共にさせていただくこととなった次第です。
「ところでまめ次郎さん、虹のたもととはどのようなところなのですか?」
私の問いかけにまめ次郎さんはふがふがと答えます。
「世界の果てにはこの世とあの世を繋ぐ虹の架け橋があるのだが、我々が向かう虹のたもとはあの世の方だな。静かで空気が美味い場所なんだが、なんといっても景色が素晴らしい。キミも見たら絶対に気に入るだろう」
「待ってください、景色も大変興味がそそられるのですが、もう一つ重要なことがありました」私は恐る恐る尋ねました。「これから私たちはあの世に向かうのですか?」
「む、確かにそうなるのか」
むむ、と。
まめ次郎さんは今気が付いたとばかりに小さく呻きました。
「まあキミは渡り切らなければいい話だろう。私がケン何某から言伝を預かってこよう。キミは待っていなさい」
「うーん、少々口惜しいですが、今は我儘を言っていられる状況ではありませんからね」
この世界の果て行軍は私の職務上の過失から発生したものです。ゆえに、まめ次郎さんにはあくまで行き来のサポートだけをお任せするつもりでしたが、残念ながらそうはいかないご様子。
もしもあの世から帰ってこれなくなるようなことがあれば、それすなわち配達業務の再度失敗を意味します。
それだけはいただけません。
私は渋々まめ次郎さんに言伝の受領をお願いしました。
「ところで、なぜこの世のたもとではなくあの世なのですか?」
「恥ずかしい話だが、虹のたもとに辿り着いた我ら犬はそのあまりの絶景に興奮して、ついついわたり切ってしまうものが多いのだ。それがいつしか慣例となり、いつの間にやらあの世のたもとが集会所のような役割を持ったというわけだ」
「なるほど、それはなかなか期待が持てますね」
私は大きな虹の橋にはしゃいで駆け回る犬たちを想像しました。
もふもふわさわさしている大変素晴らしい空想です。
私はとても幸せな気持ちになりました。
「そら、ラストスパートだ。振り落とされないように気を付けたまえよ」
まめ次郎さんはその言葉通り次第にスピードを上げていきます。
薄く引き伸ばされた雲海を突き抜けていきます。
黄昏時もまもなく終わりを迎えるのでしょう。
遥か遠く、赤く燃え上がる雲の地平線を、じわじわと宵闇が侵食しております。
世界の果てに着くころにはすっかり日も暮れているやもしれません。
夜の虹。それはそれで乙なものなのでしょう。今からわくわくが止まりません。
もはや地表は遥か彼方。目視は到底叶いません。それどころか先日お邪魔した天上の世界すら足下です。
宵闇のさなか、まばらに煌めく星々を天井に、私とまめ次郎さんは世界の果てへと延びる流れ星になりました。
◇
厚い厚い雲の層を抜けた先。
そこには摩訶不思議な光景が広がっていました。
前人未到の宇宙世界に誰よりも近い成層圏を駆け巡っていたのに、気が付けば眼下には大海原が広がっていたのです。
地平線の許す限り、周囲には人工物どころか島ひとつありません。
あるのは貯水槽のような大きな水溜まり。底の見えない群青色は一切の凪を立てていません。生命の息吹を感じさせないその様は畏怖すら感じます。
空を見上げると呆れかえるほどの快晴です。
それすなわち、お天道様がお顔を出しているということ。
はて、つい先ほどまで宵の刻でありましたのに、これはいったい何ごとなりや。
そんな疑問に答えるかのようにまめ次郎さんが言いました。
「さあ、着いたぞ。ここが世界の果てだ」
「なんと、もう着いたのですか」
私の体感ではまだハワイ島にすらついてないはずです。世界とは実は私が知らないだけでビー玉くらいのサイズだったりするのでしょうか。
「世界の果てに辿り着くために距離は関係ないのだよ。決められた手順を決められたとおりに行い、決められた順路で進みさえすればどこからでも世界の果てに辿り着くことができる」
「意外とシステマチックなのですね」
「世界とはそういうものだ。テキトウなようで意外ときっちりしていて、しかしやっぱりテキトウだ」
「お犬の掟しかり、ですね」
「それは言わない約束だ」
まめ次郎さんはいたずらっ子のように笑いました。
「さて、友よ。何か聞こえてこないか?」
「はて、なんでしょう。私には何も聞こえませんが」
「ふむ、友にはまだ聞こえないか。だが、もうしばらくだろう」
勿体ぶるような物言いに私の好奇心は俄然掻き立てられます。
目を瞑って意識を耳に集中させます。
轟々と耳を掠める風。
バサバサとたなびく髪。
どちらももはや旅のお仲間と言っても過言ではない音たちです。
しかし、そんなさなか。
耳元で騒ぎ立てる彼らの奥の方で、何やら水の音が聞こえてくるのです。
打ち寄せる波の音とも違う、ドドドド、という豪快で厳めしい濁流と、それを包み込むような、ヂヂヂヂ、という鋭い音。
私はこの音に聞き覚えがありました。
それは忘れもしない数時間前の出来事。
魔法使いと知蛇瀑の語らいを訳知り顔で勘違いしてしまったときのことです。
忘れるはずもございません。
これは紛れもなく、知蛇瀑が響かせていた語らい、すなわち滝の音なのです。
「さあ、到着だ」
永遠に続くかと思われた水平線が突如として途切れました。
そのあまりにも壮大な光景に、私は一瞬にして目を奪われたのです。
「これは......!」
「ここが世界の果て名物、人呼んで、大瀑布だ」
足元の遥か下。
地球を包む大きな海が世界の下――としか形容できない場所――に落ちているのです。
それはもはや瀑布という形容が正しいのかどうかという疑問すら抱かせます。
しかし、実際の所、私たちがこれまで表面を滑ってきた大海原は、ある一定を境に海底を失くし、その身を底の見えない深淵に投げ出していました。これには知蛇瀑もびっくりです。
そして恐ろしいことに、これだけの水流が落ちているのに、着水する音が欠片も聞こえないのです。
果たしてこの深淵はどこに繋がっているのでしょうか。
黄泉、あるいは冥府か。甚だ疑問が尽きません。
「恐ろしく深いだろう。滝壺にはなにやら龍の住処があるらしい。私はここを通るたびに戦々恐々としているが、まあ早々会うことはないだろうな」
「アッ、そういえば
私の発言に驚いたのか、まめ次郎さんが鎌首をもたげてこちらに視線を向けました。
「友は龍とも知り合いなのか」
「ええ。いわゆる呑みトモダチというやつですね」
「それは愉快だな」
わははは、と。
楽しく笑い合いながら、私たちはついに世界の果てに辿り着いたのです。
これはもしかすると今日中に帰ることができるのでは?なんて考えておりましたが、我が道中がそんなまっすぐな導線を引かれていたことなど一度もないのをこの時の私は失念しておりました。
異変に気が付いたきっかけはやはり音でした。
大瀑布の轟音に混じって、聞き慣れない音が耳朶に響いてくるのです。
巨体が水の流れを切り裂くような音です。私はそれを聞いて、滝を遡上する大き鯉を想起しました。
疑問に思って音の方向、すなわち深淵を覗いてみます。
すると、それはもう目の前に迫ってたのでした。
前方方向の進路上。
私たちの眼前すれすれを、真っ黒なにょろにょろとした巨体が凄まじい勢いで昇って行ったのです。
あまりの風圧に前髪が一瞬にして弾け飛びました。
思わず海老のように仰け反ってしまった私を笑うものはいないでしょう。
まめ次郎さんも驚きのあまり情けない声で遠吠えをしていました。
「貴様、いつぞやの配達屋か?」
危機が去ってしばらく。
落ち着かない様子のまめ次郎さんをわしゃわしゃと撫でていると、頭上から声がしました。
はて、こんな世界の果てにお知り合いなんていたかしら。なんて考えながら頭上を仰ぎ見ると、そこには大変見覚えのある龍がいらしたのです。
「おお、
「ふん、龍がそう簡単に死んでたまるものか!」
彼は鼻息を荒くして猛々しく吠えました。
その傲岸不遜な物言いはまさしく雨龍黒さんご本人に間違いありません。
乙姫さんに呑まれて以降、その安否を密かに心配しておりましたが、変わらずご壮健なようで何よりです。
久しぶりの友人との再会を心より喜んでいると、落ち着きを取り戻したまめ次郎さんが尋ねました。
「友よ、友よ。この龍はいったいなんなのだ。まさか、例の呑みトモダチとやらか?」
「ええ、そうです!このお方こそ私の呑みトモダチ、雨龍黒さんなのです!」
「誰が呑みトモダチか」
雨龍黒さんは甚だ心外だとでもいうように鼻を鳴らしました。とってもシャイなお方なのです。
それを聞いて納得したのか、まめ次郎さんは恭しく頭を下げました。
「雨龍黒殿。お初にお目に掛かる。私はまめ次郎という。見ての通りパグ界随一の美パグだ」
「なんだ、時折この辺りをうろちょろしている獣の一味か」
「なんと、我々を知っているのか」
「ふん、我が退勤する時分によく飛び回っておるのでな。嫌でも目に付く」
雨龍黒さんは早々に話を切りあげてこちらに視線を向けて、
「......いや、そんなことよりも配達屋、貴様と再び相まみえる時をどれだけ待ち侘びたことか」
むっつりとそう言いました。
私もまったく同じ気持ちでしたので、喜びを表現するために笑顔で万歳なんかしてみました。
「私も雨龍黒さんに会える日を心待ちにしておりました!」
「たわけ、そういうことではない。......ここであったが百年目。前回は最期の最期で邪魔が入ったからな」ニヤリと不敵な笑みを浮かべて続けます。「時が来たのだ。さあ、今こそ雌雄を決しようぞ」
もったいぶったその仰々しい言い回しは雨龍黒さんらしいのですが、対する私はおとぼけ顔です。
どうやら雨龍黒さんは前回の呑み比べに納得がいっていないご様子。
思い出してみれば、私としても少々消化不良な側面はありましたが、最後に立っていたものが勝者である、などと嘯くつもりはございません。あれは紛れもなく私の敗北なのです。
「雌雄もなにも、勝敗はとうに見えておりました。私が敗れ、雨龍黒さんが勝ちました。約束通り私をパクリといきたいのであれば否やはありません。私は約束を守る乙女ですので。ただ、その代わり、少しばかり待っていただきたいのですが......」
「ふん、今更貴様を喰おうなどとは思っておらん。だが龍たるもの、それを抜きにしても正式な勝利でなければ腹の座りが悪い。以前の幕引きでは到底栄誉ある勝利とは呼べん」
眉を八の字にして謝意を表明する私に、雨龍黒さんは構わず続けて、
「どれ、再戦といこうではないか。我が馳走してやろう。付き合え」
とそう締めくくりました。
そこでようやく、私の橙色の脳細胞が真意を理解しました。
てっきり雨龍黒さんは呑み比べの果てに私を今一度打ち倒して、栄誉ある勝利の美酒に浸りながら気持ちよく私をパクリといきたいとばかり考えていましたが、どうやらそうではないご様子で。
失念しておりました。
彼はつんでれなのです。
そこから導き出される答え。
それは至極単純なことなのです。
つまるところ、雨龍黒さんは呑みトモダチである私にお仕事帰りの呑みをお誘いをしているだけなのでしょう。
やはり、昨日の敵は今日の友。一献交わせば竹馬の友。
昔の人はよく言ったものです。
悟りの境地に至った私の心はぽかぽかと暖かくなります。
そのままついついお誘いに乗ってしまいそうになりますが、失念してはなりません。
私にはケンさんから言伝を頂戴するという大事な使命があるのです。
行きたい。雨龍黒さんと楽しく呑み交わしたい。けれど、行けない。お仕事があるから......!
私は喉まで出かかった了承の言葉を飲み下し、拳を握り締めながら断腸の思いでお断りを告げました。
「雨龍黒さん、申し出は大変喜ばしいのですが、私には火急的速やかにこなさなければいけないお仕事があるのです。故に、大変残念ではありますが、今回はお断りさせていただきます」
「なに?この我の誘いを断ると言うのか?」
「申し訳ないのですが......」
そう言うと、雨龍黒さんは不機嫌そうにふんすッと鼻息を漏らしました。
心做しか縦長の瞳孔が鋭利さを増したような気がします。
「ふん、ならばいい。貴様ごとき人間と呑んでも酒がまずくなるだけだ。我は多忙なのだ。貴様に構っている余裕などない」
ご立腹です。
しかし、怒りのままに私をパクリといく気は内容でした。
彼のプライドを傷つけてしまったのか、雨龍黒さんはそう吐き捨てると、長大な体躯をうねらせて身を翻しました。
今度は私からお誘いしよう。
そんなことを考えていると、おもむろにまめ次郎さんが一歩前に踏み出して、去りゆく雨龍黒さんに向かってワンっと吠えました。
咎めるような、非難がましく聞こえたのは私だけではないのでしょう。
雨龍黒さんは億劫そうな雰囲気で、じろりとこちらを
「うりぐろとやら、少しいいか?」
まめ次郎さんの言葉を受けて、雨龍黒さんはため息を吐きました。
「獣ごときがなんのようだ」
「私はまめ次郎だ。獣という名ではない。というのも、あなたの発言で聞き捨てならない箇所があった」
「ほう、虫けらのような小さき獣よ。貴様ごときが我に楯突こうと言うのか?」
「無論だ。私は私のことをどういわれても気にはしないが、友のことを悪く言われるのは許せないのだ」
もう一歩踏み出して。
まめ次郎さんはしわくちゃの顔に厳めしい凄みを持たせて吠えました。
「今すぐ友に謝ってくれ」
「謝る?我が、この人間に?」
その言葉を聞いた瞬間、雨龍黒さんが纏っていた雰囲気が一転します。
軽んじていた雰囲気が殺意すら感じる殺伐とした雰囲気へ。
剣呑なものを感じ取った私は慌ててまめ次郎さんを静止しました。
「まめ次郎さん、私のことは気にしないでください!」
「いや、これはキミのためだけではない。これは犬としての矜持の問題だ」
その凛とした物言いに私は言葉を詰まらせます。
そう言われると私から言えることは何もありません。
お犬さんの掟は聞き及んでおります。
人の友たれ。人を守りたまえ。
過分ながら、人類を代表させて言わせてもらうと、お犬さんに守られるなんて大変恐縮過ぎてむしろ全力で守ってさしあげたいのですが、今は置いておきます。
永世名誉お犬さんであるまめ次郎さんは、生前から今日に至るまで、その誇りを胸に生きてきたのでしょう。
そんな彼にはたとえつんでれ相手であろうと、友である私、ひいては人間を貶めるような発言をする雨龍黒さんが許せなかったのです。
相手が龍であろうと関係はない。
己の矜恃を貫き通すためならたとえ神にだって楯突いてやる。
黒真珠のように真っ黒な瞳から不退転の覚悟を悟った私は、大人しく成り行きを見守ることにしたのです。
「龍というものは偉いのだろう。強いのだろう。あなたを見ればわかる。だが、それは友を見下していい理由ではない」
「ええい、ごちゃごちゃとうるさいぞ獣ごときが。一息に喰ろうてやろうか!」
「やってみるがいい。できるものなら」
売り言葉に買い言葉。小さなパグに大きな龍。
静かに行われた言葉の応酬は、やがて雨龍黒さんの激情へと結びつきました。
漆黒の顔はいつぞやのように僅かな朱を帯びております。
どこからどう見ても怒り心頭なのです。
「いいだろう!その人間ごと貴様らを喰ろうてくれるわ――!」
天を引き裂くような咆哮が世界の果てに轟きました。
腹の底まで響くその声は全身の肌を粟立たせます。ビリビリと臓腑が揺れる感覚は畏怖を抱かせます。
腕を擦ってみると奇妙な感触で、こんな状況にも関わらず、私は少し笑ってしまいました。
そしてそれが合図となりました。
突如、雨龍黒さんがうねるようにして襲いかかってきたのです。
そこにはもはや先ほどまであった格下を見下す空気はありません。
ただ、己に不快をもたらした不埒者を誅す凄みだけがありました。
一息に丸のみにしようとしたのか、大口を開けて迫ってきた雨龍黒さんでしたが、それを予見していたのか、まめ次郎さんはすんでのところで駆け出して難を逃れました。
ガチン、と。
背後でエナメル質の硬質で無機質な破断の音が聞こえました。
「巻き込んでしまってすまないね」
「いえいえ、もともと私が巻き込んだようなものですからね。お気になさらず」
「ありがとう。そう言ってくれると助かるよ」
大口を開けて迫り来る雨龍黒さんから逃げるように、千々に乱れた薄い雲を掻き分けながら私たちは駆け抜けます。
それはさながら流星のようですが、それだと途中で燃え尽きてしまわないか心配になってしまいます。
果たして、虹のたもとに辿り着くのはいつになるのやら。
お昼に食べた焼き芋の美味を思い出しながら、はてさてこれからどうしよう、と。
私は頭を悩ませるのでした。
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