異能都市

@kurokuro11223344

第1話 異能都市「エーデル」

 異能力――それは人類の進化の一歩という人もいれば、人類の滅亡への一歩という人もいる。


 人類最初の異能力所持者が誕生して3世紀、世界の形は大きく変わった。


 異能都市―――世界3大都市の一つであるそれは3大都市の中で異能力所持者の割合が一番多い都市だ。


「で、あと少しでその都市に着くってわけだ」


 都市エーデルへ繋がる高速道路を運転中、すぐそばは海で窓を開けると潮風が入り込んでくる。


「海もそうだけど、都市の外に山もあって冬はスキーもできるんだってよ。楽しみだな」


「・・・言っとくけど遊びに来たわけじゃないからね?。でも・・・スキーか・・・」


 満更でもなさそうだな。


「今は春だぞ、スキーはまだ当分先だぞ」


「べ!?べつにそういうわけじゃ・・・」


「お、見えてきたぞ。あれが「異能都市」か」


 はるか遠くから世界3大都市の一つが見えてくる、遠目で見てもわかるほど馬鹿でかい。


「そう言えばどうして俺らが派遣されたんだっけ?」


「忘れたの?前のバディが両方消息不明になったからって言ってたでしょ」


「そういやそうだったな・・・」


 殉職・・・とかじゃなくて「消息不明」だからなんか不気味なんだよな・・・、なんかめっちゃ不安になってきた・・・。


「・・・待って、"何か"が来る」


 次の瞬間、俺たちの上を何かがかなりの速度で通り過ぎる。


「パラノーマルか!」


 パラノーマル―――発生原因不明、生態不明。姿形は個体によって様々で、体内に「コア」と呼ばれる身体維持のための器官がある。

 既存の生物の進化から生まれたわけでもなく、まるで「後からポンと付け足された」かのように突如出現した生命体。推定40年前からその存在が確認されている。


 パラノーマルの中でも厄介な奴がおり、「依代型」と呼ばれるパラノーマルは、既存の物体、人物などから発生し、見た目は依代となった物体の特徴を大きく残している。今俺達の上を通り過ぎた奴は依代型だ、戦闘機の。


「アクセル目いっぱい吹かして!ここじゃ戦えない」


 俺は文字通りアクセルべた踏みで車の速度を上げる。たくさんの車の集団を抜け出した俺達に狙いを定めたパラノーマルは俺達目掛けて真っすぐ突っ込んでくる。


 奴はこのまま突っ込むことは出来ない、依代型のパラノーマルは他のパラノーマルに比べ知能がほんの少し高く、身体剛性は依代となった物体に依存する。


 予想通り橋スレスレの所を通り過ぎて行った。ここからが厄介だ。


「アイツの元の戦闘機ってどんなやつ?」


「見た所結構古い機体みたい。後ろにエンジンが2個付いてる、あと機首部分にバルカン砲も」


「それはヤバい奴だ!。たしか・・・A-10・・「サンダーボルト」だ!。機首部分に付いてるバルカン砲は一番ヤバい、GAU-8、通称「アヴェンジャー」。戦車の装甲を正面から蜂の巣にできるし、小規模の施設丸ごと破壊することも可能な・・・ヤバい奴だ」


「でももう昔の話でしょ?、当たらなければどうということは」


「問題はそこじゃない、ここは都市間を繋ぐ橋だ、ぶっ放されたら間違いなく橋が崩れる」


 俺の説明で理解したのか「じゃあどうすれば・・・」みたいな顔をしている。


「だがそう気安くぶっ放せるようなものでもない、お前弾丸斬れそう?」


「やったことないからわからない。だけど私の異能力なら…」


 そうこうしていると何か聴こえてくる。別の戦闘機の音だ。


「空軍か!助かった・・・」


 5機の戦闘機、通称γファイターと呼ばれており、ここ周辺の主力戦闘機だ。


 5機が抜群のコンビネーションで依代型パラノーマルに攻撃する。だがパラノーマルも負けじと身体特性を活かした部位変形で対抗する。


 しかし最新鋭の機体に訓練で鍛え上げられたパイロットには手も足も出ずにアッサリと撃墜された。


「・・・けっこうアッサリ倒されたな」


「3世紀も前の骨董品だからね・・・」


「・・・行くか、席についてシートベルトしてくれ。」


 こんなこと言うのは絶対にダメだと思うんだが、もう少しパラノーマル側も善戦して欲しかったような気もする。


 なにはともあれ、無事に都市にたどり着けそうだ。

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