第4話:信じろよ母ちゃん。
俺は羅利子を連れて木の電話ボックスからバス停横の電話ボックスに出た。
「羅利子、キョロキョロしないって・・・」
「ずっと森にいたから・・・あんまり街に出てないの・・・」
「壮太、置いてかないでよ」
「大丈夫だよ、俺は約束は守る男だから・・・」
「今からバスに乗るからな」
「ああバスね?」
俺はバス停の時刻表を確認した・・・まあ見なくても時刻は大体知ってる・・・
いつも利用してるからな。
「17時25分ってのがあるな・・・」
「そいつに乗るからな、羅利子」
「・・・・・」
「羅利子?」
(って、いないじゃないかよ、もう)
「・・・さっそく迷子か?・・・羅利子・・・羅利子〜」
そのあたりを見回してみても、いない。
「ったく、どこへ行ったんだよ・・・」
もしかしてって思って俺は、電話ボックス前のコンビニを覗いてみた。
いたよ・・・。
「なにやってんだよ、勝手にウロウロするなって迷子になったらどうすんだよ」
「私、お腹すいた」
「まじでか?・・・」
「あれ、食べられる?」
羅利子が指差したのは、おにぎりだった。
「あれは、おにぎりだよ」
「おにぎり食べたい」
そう言うから俺は羅利子におにぎりを買ってやった。
(なにしろ、ないがしろにしたら不幸貧乏になるらしいからな・・・)
ついでにお茶も買ってやった。
羅利子はバスの中で俺の顔を見ながら美味そうにおにぎりを食べた。
バスは俺と羅利子を乗せて夕日が沈む海岸通りを西に向かってブヒブヒ〜って
走って行った。
30分ほど走るとバスは俺んちの近所のバス停に停まった。
「羅利子・・・ここが俺んち、なんてことねえ家だろ?」
「大丈夫だよ・・・いつかビルが建つから」
「え?俺の家、誰かに買い取られるのか?」
「そうじゃないよ・・・いいから家の中に入れて?」
「ただいま〜」
すると、母ちゃんが血相を変えて居間からドタドタやってきた。
「壮太!!あんた、どこで何してたのよ?」
「学校から、あんたが無断で学校休んでるって連絡があったよ」
「ちゃんと連絡入れときなさいよ」
で、母ちゃんは俺の後ろで小さくなって上目遣いで母ちゃんを見ている
羅利子を見た。
「え?誰?その子・・・」
「あ〜あのな・・・」
「あんた・・・あんた、まさか誘拐?」
「なわけないだろ・・・人に頼まれたんだよ」
「頼まれた?・・・誰に?」
「とにかく、説明してやるから上にあがらせろよ」
そう言って俺は羅利子を居間に連れて行ってソファに座らせた。
「この子、
「え?、なに?、もりかっぱ?」
「わざとらいい間違い方だな〜」
「ほれ、羅利子・・・俺の母ちゃん・・・」
「・・・・」
「黙ってないで、なんとか言えって」
「おしっこ」
「え?」
「おしっこ〜」
「おしっこって・・・小学校低学年か・・・」
「お前さ、俺とタメくらいの歳だろ?」
「漏れちゃう・・・」
「待て待て、漏らすな・・・トイレ、トイレ」
俺は羅利子をトイレに連れて行った。
妖怪はおしっこなんかしないのかと思ってた・・・俺の間違った先入観だよな。
羅利子がルンルンでトイレから出てきたので俺は改めてこれまでの出来事を
母ちゃんに話して聞かせた。
「う〜嘆かわしい・・・そんな大ウソをついて女の子まで誘拐してきて・・・
情けない 」
「悪いことは言わないからその子連れて警察に自首しよう」
「違うってば」
「あんたの息子を信じろよ・・・全部本当のことなんだから」
「誘拐なんかじゃねえし羅利子も同意の上だよ」
「な、羅利子・・・」
「私、壮太に取り憑いてるから離れなれないの・・・おばさん」
「おばさん?・・・まあ、たしかに・・・おネエさんじゃないわね」
「って言うか、なにそれ?取り憑いてる・・・って?」
「おまえ・・・いつ俺に取り憑いたんだよ」
「帰りのバスの中で・・・取り憑いちゃった」
「だからもう死ぬまで壮太は私から離れられないの」
「まじで?・・・じゃ〜なにか?俺は一生人間の女と恋愛とかできないのか?」
「だね」
「だねじゃねえわ」
「まあそれはちょっと置いといて・・・母ちゃん実はこの子、座敷わらし
なんだわ・・・」
「ざ?・・・ざしき?・・・ざしきわらし?」
「母ちゃんだって座敷わらしの話くらい聞いたことあるだろ?」
「聞いたことあるね、家に住まわせといたら大金持ちしてくれるって市松人形みたいな子のことだろ」
「微妙に違ってるけど・・・まあ、そんなもんだよ」
「だから、ここに置いてやってくれよ」
「大事にしたらいいことあるって言うし・・・」
「うん、いいよ・・・ずっといてくれていいからね、らりかっぱちゃん」
「羅利子拝だよおばさん・・・なんて親子なの」
(なんだよ座敷わらしって聞いただけで母ちゃんのその態度の変わりよう)
母ちゃんは私利私欲に走った・・・。
つづく。
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