第5話:羅利子ちゃん効果。
俺の話した絵空事のような話を母ちゃんは疑いながらでも受け入れた。
って言うより羅利子が座敷わらしと知って、考えをガラリと変えただけ・・・。
まあ、それが人間の正直な反応だし行動・・・みんなそうするだろうな。
「結局、隣近所、親戚周りには養女をもらったってことにした」
で羅利子は金魚のうんこみたいに俺について回って、やたらハグしたがるし
チューしてってせがみまくってくる・・・。
彼女って言うか強制的に取り憑かれてるからどうしようもない。
しかたなくチューしてやったら、なんと妊娠したって言ってくるし、
な訳ないだろ」
おっさんのギャグじゃあるまいし、チューしたくらいで妊娠なんかするかよ。
それと母ちゃん、には大事なことを言って置いた。
「母ちゃん羅利子を邪険にするなよ・・・大事にしないと俺っち不幸貧乏に
なるからな」
「分かってるわよ、どこに自分ちの娘をないがしろにしたりする親がいるのよ」
「え?もう親になってるのか?」
「蝶よ花よって大事にするよ」
「ひとりぶん余分に生活費が増えるけど、あんたの分減せばいいことだし・・・」
「父ちゃんの稼ぎ、もっとあったらね・・・出世の見込みもないしさ・・・」
「そんなこと言ったら父ちゃん可哀想じゃん腐っても一家の大黒柱だろ?」
「腐ってもって、あんたのほうが、ひどいよ」
俺と母ちゃんが話してる間、羅利子はソファにおとなしくて座って母ちゃんが
出したオレンジジュースを美味そうに飲んでいた。
「あ、お腹痛い・・・」
「なんだよ、なんでもバクバク食ってるからだよ」
「生まれるかも・・・」
「なにが?」
「赤ちゃん・・・」
「まだ言ってるのか?・・・早すぎだろ、昨日妊娠したって言ったばかりじゃ
ないかよ」
「てか、妊娠なんかしてねえし腹だって大きくなってないじゃえかよ」
「そだね・・・食べ過ぎかも・・・ああ楽しかった妊娠ごっこ」
怒りたかったけど我慢した・・・なんせ大事にしないと不幸貧乏だからな。
だけど、それから俺の親父は出世した。
家に帰って来た親父は偉そうに俺と母ちゃんの前で言った。
「部長に昇格したぞ・・・どあっあっあ」
万年平だった親父が出世って・・・これってもしかして羅利子効果?
「座敷わらしは住み着いた家の人の扱いによって幸福をもたらすか不幸を
もたらすかそのどっちか」
壮太一家が羅利子を可愛がったことによって一家の生活が徐々に豊かになって
いった。
羅利子が言った。
「壮太の父ちゃん出世したみたいね・・・よかったね」
「え?やっぱり羅利子のしわざ?・・・羅利子のおかげ?」
「言ったでしょ、いいことあるよって?」
「ほんの手始め・・・これは壮太が私を預かってくれたことへのお礼、
恩返し」
そうか・・・羅利子を大事にしないと親父はまた平に戻ることになるのか・・・
責任重大だな。
羅利子を泣かせるようなことは、しちゃいけない・・・これは大いなる
責任を伴うな。
俺には羅利子が取り憑いてるし・・・
期待も不安も付きまとう・・・これから俺たち一家はどうなっていくんだろう?
そう思いながら俺にへばりついてくる羅利子を見た。
まあ、へばりつかれて悪い気しないし。
ハグされてるようなもんだしな。
「壮太・・・・ね、聞いて・・・・今ね、妊娠3ヶ月」
「まだそんなこと言ってんのかよ」
つづく。
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