第7話 アラン

私は、まだ病人ということで、食事は病室に運ばれてきた。


用意されたのは1人分。


「えっと……アラン?」


「何だ?」


「アランはご飯を食べたの?」


「いや、まだだ。」


「一緒に食べないの?」


「今は護衛中だからな。俺は後から食べるから、気にするな。」


「でも……。見られながら、私だけ食べるのは……。」


「ふふっ。俺に見られていると、恥ずかしいか?」


「…………。」


黒髪のアラン。


私と同じ20歳だと言っていた。


背は175センチくらいかな?


少し鋭い目つきをしているけど、私は恐い印象を持っていない。


幼馴染と言っていたけれど、私とはどんな雰囲気だったのかな?


じっとアランの顔を見る。


「ん?俺の顔に、何かついているか?」


私のことを対等に扱ってくれているのが分かる。


感覚で分かるけれど、この世界では男性優位のようだ。


だから、女の私を普通に1人の人間と扱ってくれているのが嬉しいと感じる。


記憶はないけれど、アランに気を許していたのだと分かる。


「ねぇ、アランから見た私は、どんな人間だったの?」


「そうだな〜。一言で言うと『お転婆』。小さい頃から、俺達に混じって剣の稽古をしたりしてたな。」


「へぇ~。」


話を聞きながら、ご飯を食べることにした。


「女に生まれたことが悔しいと言っていたよ。はははっ。」


「悔しい?」


「あぁ。男だったら、絶対騎士になっていたと言っていたよ。でも、少し大きくなってからは、アミーリア様の側に仕えて守ると意気込んでいたな。」


「アミーリア様……。うん。確かに記憶はないけれど、アミーリア様を守りたいという想いがあるわ。」


「今回のこともそうだけど、いつもお前はアミーリア様を守っていたよ。」


「いつも?」


「あぁ。アミーリア様は、この国の宝…。だから、他の国から狙われることが多い。護衛騎士だけでは守れない時もある。そんな時に、アミーリア様の側でメイが守っていた。何ていうのかな……メイは感が鋭いところがあって、他の人間が見落としていたことに気付いて、未然に防いでいたな。」


「そうなの……。今の私で、アミーリア様を守れるかな……。」


「………メイ。アミーリア様の侍女を続けるつもりか?」


「体調が落ち着いたら、侍女の仕事をしたいと思っているわ。」


「………そうか。」


私の答えを聞くと、アランは少し難しい顔をした。


そうして、私が朝食を食べ終わると、薬を飲んで少し休むことになった。


「怪我の影響なのか、とても眠いの。」


「ゆっくり休めよ。俺が見てるから。」


「……見られていると、恥ずかしい。」


アランがいない方に体を向ける。


「はははっ。今更だな。俺達の仲だろ?」


アランが私の髪を撫でる。


「おやすみなさい、アラン。」


「あぁ、おやすみ。」


そうして、再び眠りに落ちた。


怪我をしてから、ずっと寝てばかりいるような?


眠りに落ちると、小さな頃の夢を見た。


さっきアランが話してくれた頃のようだ。


アラン、エヴァン、ニコラス、そして私の4人で剣の稽古をしているような夢だった。


今より若いディルが、私達を見守ってくれていた。


とても幸せな夢だった。


目を覚ますと、午前11時。


「……夢を見ていたみたい。アランが話してくれた、小さい頃の夢みたいだったわ。」


「そうか。そろそろ交代の時間だ。次はエヴァンが来るはずだ。」


「そうなの…。ありがとう、アラン。側にいてくれて、安心できたわ。」


私がにこりと微笑んで言うと、


「どういたしまして。」


アランはにっと笑って、私の頭を撫でた。


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