第7話 ベニテングタケ
「昨年、我が国で表向きは気象衛星として打ち上げられたスパイ衛星アトムのデータによりますと。千歳駐屯地から拾った音波を解読したところ(真那井国王バンザイ)とか北海道王国と言う言葉が解読されました」
「それはどう言う意味だ。まさか北海道を独立国家とする気か! 冗談じゃない日本を二つに分断するなんて絶対に許されない」
各、閣僚たちは溜め息ついて事の重大差があまりにも大きく声さえ出なかった。大泉総理は防衛庁長官となにやらヒソヒソと話をしている。
「諸君、おそらく真田二等陸尉の情報通りだろう、しかし迂闊に出れば北海道道民の生命財産に関わる問題だ。それに同じ民族に銃を向ける訳にはいかない。かと言ってクーデターを許し訳には行かんが」
麻由美は、おそるおそる閣僚達の発言が途絶えた時、手を挙げた。
「申し上げます。これは関係があるかどうか分かりませんが、首謀者の真那井一等陸佐と梅木警視監の共通点が沢山ありました。その一つは共に長野県菅平出身です。この地方では昔からベニテングタケを食用として食べる人もいる。鍋料理としても食べられますが余り食べると幻覚症状を引き起こします。毒キノコとまで行きませんが、他にもベニテングタケを乾燥して調味料に使っています。もちろん毒は使い方によって薬にもなりますが、これは幻覚症状を引き起こす成分イボテン酸、ムッシモ-ルが多量に含まれていてインド中米では宗教儀式に使われるくらいです」
「なに、きのこ? それでは彼らの首謀者の数人が幻覚症状を起こしているというのか。毒キノコで錯乱してクーデターが起こるなんて信じられるか」
「あくまでも参考の話です。仮定として申し上げられるのは、麻薬患者のように常用していれば夢が膨らんで、自分の王国を作りたいという妄想が生まれて来ます。二人は王国という言葉を多用していたようです」
確かに信じられない話だが、幻覚から起こる妄想なら有り得ない話でもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます