第2話 真田麻由美二等陸尉

「クーデター? た! 大変だわ!」

麻由美は慌てて勤め先の総合幕僚監部の直属の上司に電話を入れた。東京は市ヶ谷駐屯地内に本部があり陸海空自衛隊の要である。

基本として独身の自衛隊員は自衛隊の宿舎に泊まらなければならないが、麻由美は特殊な業務についていて、特例として自衛隊が一部を借り上げたマンション住まいが認められている。麻由美以外の隊員は殆ど家族持ちで幹部のみが住んでいる。

しかし業務は多忙で酷い時は、二ケ月も帰る事が出来ない。よって食料は保存が効く物しか置けない。それでも駐屯地の宿舎に泊まるより快適で自由時間が持てるのは最高である。

「防衛戦略室情報官の真田二等陸尉です。村松陸将補はおられますか」

「お~真田か。ニュースを見たようだな。確か休暇のはずだったな」

「陸将補、私も自衛官の端くれ、非常事態です。すぐ駆けつけます」

 その上司の村松陸将補は陸自のNOⅡの存在だ。すぐに市ヶ谷に来いと言うことだった。麻由美はパンを口に入れ珈琲を口に流し込みながら着替えて、マンションを出るとタクシーを拾い市ヶ谷に向かった。

真田麻由美は防衛大学卒業のエリートで入隊して六年になる。四年間は陸上自衛隊で、みっちり鍛えた。現在は能力を認められ防衛戦略室に席を置いている。ここでも麻由美の才能が認められ一目置かれる存在となった。百七十センチの長身で顔立ちはキリリとして隙がない。男性から注目され女性からは憧れの存在だ。

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