第32話 この選択は間違いだったかな?w


〈ここに契約が交わされた 魂を新たにし存在を変えし力を授ける〉



使い魔テルと僕の契約が結ばれると


禍々しい気配を放ちながら宙に浮いた本が、


こちらに向かってゆっくりと近づいてきた。


手を伸ばしてその禍々しい本を掴もうとしたが、


指先をすり抜けてしまった。


僕の体の内側へと溶け込むように入り込んできた。


本が体内に吸い込まれると、


胸元から黒く染まり始めている。


服が黒く染まっているように見えるけど気のせいか?


もとに戻るよね?


まさか服が黒くなるなんて設定やめてくれよ?w


そういうお年頃じゃないからね?


「マーちゃん!!」


リズちゃんが心配で叫ぶ。


「テル、これ大丈夫なんだよね?」


返事がないな・・・


これはどっちのパターンだ。


今はいろいろとやることがあって答えることができない。


答えられるけど、


大丈夫かどうかはわからないから、


様子を見ながらスルーしている。


さてどっちだ?


あれ?


ほんとに返事ないの?


せめて黒じゃなくて他の色だったらな~


って白だとそれはそれでなんだか怖いか?



胸から下が徐々に黒く染まり、


次第に両腕、両足もその色に染まっていった。


なんだろう?


こんなキャラクターいたようないなかったような?


思い出せないな・・・映画だっけ?


そんなことを考えていたら


胸から下がすべて黒くなった。


自分で言うのもなんだけど、


なんとも悪役ぽいな・・・。


悪役?


あれ?そういえば勇者がやろうとしていることを


邪魔するって悪役なんじゃないのか?


この世界的にはいいことしてるけど、


人族的にはあいつ何を邪魔してるんだって話だよね?


アンチヒーロー?


アンチヒーローではないな・・・


世の中で求められていることを


非合法な方法を使っても行うって感じだよね?


世の中で求められているのは魔力が濃い場所を失くすことだけど、


それは本当は必要だから非合法な方法を使っても邪魔する。


説明しても人族には共感してもらえない・・・


ま~ヒーローに憧れるかって


聞かれたらまったく憧れないって


答えるような人間だからいいかなw



「テル?」


今度は頭の方が黒く染まってきた。


召喚の時下半身が徐々になくなることはあったが、


この黒く染まるのもあまり気分のいいものじゃないな。


しかし体が痛いわけでもなく熱いとか冷たいってこともない、


リズちゃんから見たら浸食されているように


見える状況だが不思議と恐怖心はない。


「大丈夫にゃ、あと少しにゃ」


テルの声がどこからともなく聞こえた。


やっと話せるようになったのか・・・


「でも体がどんどん・・・」


リズちゃんが心配そうに言う。


頭から足先まで黒く覆われたが、


その直後、音もなく黒いものが霧のように消え、


何事もなかったかのように元通りになった


よかった~服も元に戻ってる・・・


そういう設定じゃなくてほんとよかったよ、


また新たな黒歴史が更新されるところだった。



リズちゃんが近づいてきて僕の体を触りながら


「マーちゃん大丈夫?」


かなり心配だったようだ。


「大丈夫だと思うよ?


どこも痛くないし少しだけ体がだるいような?


気がしないでもないけど」


「ほんとに?」


まだいろいろ触っている・・・


触りたいだけとかじゃないよね?


別にいいんだよ。


こんな僕の体でよかったらね、減るもんじゃなしね。


目がね、少し怖い感じになってるけど


見なかったことにしておこうかな。



僕の影からテルがもとの姿に戻って現れた。


お~テルも元に戻ってる。


禍々しい本になってるのと


今の姿どっちが本当の姿なんだろう?


実は両方見せかけで本当は・・・とかってなるのかな?


「少しマーティーの魔力をもらったから


その倦怠感かもしれないにゃ~」


魔力をもらった?


また事後報告ですか?


そういうことはできるだけ事前に報告してくださいね。


「本?みたいなのに魔力流すのって


少しで大丈夫みたいなこと言ってなかった?」


「契約の時の魔力は少しでいいにゃけど、


契約を結んだらマーティーとつながって


魔力を貰うことで力を維持できるにゃ~」


「できるにゃ~じゃなくてそれ言ってないよね?」


「そんな常にもらうわけじゃないにゃ、


力を使った時とかだけにゃ~


マーティーケチにゃ、女の子に嫌われるにゃ~」


いやいやそういう事じゃないと思うよ。


「ケチって、そうならそうと最初に言えばいいだろうに・・・」


「そんなことでマーちゃんのこと嫌いにならないよ?」


リズさんやいきなり何を言っているんですか?


嫌いにならないって言われるのは


非常にうれしいけど、


ケチでも嫌いにならないってことだよね?


別にケチな訳じゃないんだよ?


勝手に魔力取られるからケチとか関係ないからね?


「・・・リズちゃんありがとう」


言いたいことはあるけれど


ここはお礼を言っておいた方がいい場面だろう、たぶん。


リズちゃんはお礼を言われて


うれしいのかとても素敵な笑顔をしている。


よかったたぶんお礼を言ったのは正解だったんだろう。



さて契約したはいいけれど、何か変わった感じがしない。


力が身体を駆け巡り始めている~~~


みたいなことが1ミリも感じられない。


「テル、契約したけど僕何か変わったのかな?」


「契約して急に力を持ってしまうと


魔法が暴発したりしてあぶないから、


徐々に強くなるにゃよ」


「徐々に?何かしら魔法訓練するとってこと?」


「そうにゃ、


魔力制御の訓練したりするといいと思うにゃ、たぶん」


そこは言いきってくれw


「たぶんって・・・魔法制御以外はないの?」


「がんばるにゃ」


そしてここに来てまた魔力制御ですか・・・


それもがんばるって・・・


この世界に来て魔法の訓練=魔力操作なんですけど。


すごく地味だよね・・・


使えば使うほど魔力が上がって~~~


みたいな感じだと楽なんだけどね。


画期的な魔法の訓練の仕方とかって誰か作ってないかな?


そういう魔法学校的なところあったりするんだろうか?


そういうところがあっても、もう行くのは嫌だな・・・


学校という言葉を思い浮かべると、


嫌な気持ちが先に立ってしまう。



「細かく聞いてないからにゃ~


でも魔法に関してはかなり強くなるにゃ、


あと加護持ちにもなってるにゃ」


「加護持ち?スキルじゃくて?


話が違うって訴えもいいでしょうか?」


やっとスキルについて聞けると思ってたのに・・・




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