第30話 別れ、そしてこれからのこと

【一部に不快感を与える可能性のある表現が


含まれておりますので、


苦手な方は閲覧をお控えください。】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


リズちゃんと一緒にジェフさんとエラさんの遺体を見ることになった。


洞くつ内は光るコケが生えているので暗くはない。


でもちゃんと足元を見て歩かないといけない感じではあるので


かなり損傷が激しい遺体を見るのにはいいのかもしれない。


特にジェフさんの遺体は・・・


「じゃぁテル、2人の遺体を出してくれる?」


「わかったにゃ」


テルが保存しておいてくれた遺体が地面から浮き出てきた。


これっていったいどこに入っていたんだろう?


不思議すぎる・・・


異世界転生ものによくある収納なんだろうか?



遺体がゆっくりと浮き上がり、全身に刻まれた深い傷跡が露わになった。


さすがに傷ついたところを布か何かで隠しておけばよかったが、


あの瓦礫の山では無理だったな。


リズちゃんの全身が硬直した様子がはっきりと伝わってきた。


普通そうなるよな。


自分の肉親の遺体を見る・・・


9歳の女の子がだ、それも昨日まで一緒に生活していた両親の遺体だ。


普通に生活していて病気で亡くなったとかではなく、


魔物と戦って殺され傷ついた遺体だ。



自分なら耐えられるだろうか?


頭ではわかっていたつもりだが、実際に遺体を見たらどうだろうか?


目の前で母が魔物に殺された、


だか最後に話ができ別れも言えた


それでもどこにもぶつけられない思いが胸の奥に残っている。


そして父は一応は行方不明ということにしてある。


だけど死んでいるだろう・・・



ジェフさんとエラさんの様子からすると父の遺体も相当傷ついていると思う。


僕も再び遺体と向き合わなければならない。


その時どんなことを思うのか?


悲しみ、憎しみ、自分への後悔の念、


いろいろな感情が湧いてくるのだろう。


リズちゃんは大丈夫だろうか・・・



リズちゃんは動かない、


いや動けないんだろう。


やはり頭で理解してるつもりだった無理だったかな・・・


「リズちゃん・・・」


聞こえてないかな・・・


「あり・・・がとう 最後に二人に会えて、パパとママに会えてよかった」


涙をこらえながら必死に堪えている。


こういう時は泣いた方がいいに決まっている。


感情を抑え込むことが必ずしも良いことではない。


「リズちゃん、無理に我慢しないで泣いていいからね」


リズちゃんの隣に寄り添い手を取る、


リズちゃんが手を握り返してくるその力が徐々に強くなっていった。


そして涙が静かに溢れ頬を伝って流れ落ちた


「我慢しなくていいよ」


テルもリズちゃんの背中に周り寄り添っている。


「いっぱい泣くにゃ」


リズちゃんの体が小刻みに揺れている。


肩が震えながら握った手に力が込められ、


胸が締め付けられるような悲しみが広がった。


思いきり泣いた。


僕も一緒に泣いていた。


2人して涙をながしながら遺体を見ている。


魔物から村を救おうと頑張ってくれたジェフさんとエラさん・・・


僕たちを守ろうとして母を戦闘の場所から逃がしてくれた。


その結果ぼくたちはテルと会えることができた。


ほんとうに父もいれて4人のおかげだ。


あの時東の丘に母が来てくれなかったら、


たぶん森へ行くかどうか最後の最後まで迷っていただろう。


なんとかやり過ごして北側が南側に行っていた可能性が高い。


その道中で魔物に襲われていただろう。



そんなことを考えていたら母からもらった遺書のことを思い出した。


ジェフさんとエラさんの遺体には遺書はなかったので


こういう時のために4人分の遺書なんだなと思った。


リズちゃんに遺書があり


それには4人分の言葉が書かれていることを説明して渡した、


そういえば父の遺書も書いてあるんだった。


母とは最期のわかれができたけどあとで遺書も読もう、


父の言葉も読まないとな。



リズちゃんはゆっくり遺書を読んでいる。


涙を拭きながら読んでいる。


何度も読み返しているのかもしれない。


そして遺書を読み終わるとリズちゃんの顔つきが変わったように感じた。


リズちゃんのその瞳には何かを決めた強い覚悟が


宿っているのが感じられた。


「ここでは埋葬できないから、


もう一度テルに預かっててもらうね」


「うん、ありがと、テル君おねがいね」


「わかったにゃ~」


そしてまたテルの収納の中へ沈んでいった


さてこれからどうしようか・・・


「ねえ、マーちゃんのパパとママのこと聞いてもいい?」


「うん、大丈夫だよ。ママの遺体はテルが預かっててくれているよ、


パパのは見つからなかったんだ」


「あのままずっと探してると魔物に囲まれていたにゃ」


「そうなんだ、でも探さなくていいの?」


「探したいけど、今は危険な事は避けた方がいいからね。


村の様子も気になるけどしばらくはここにいるつもりだよ。」


「そうなんだね、わかった」


「ただ食べ物をどうするかだよね、


テルといっしょなら隣の村まで行けるけど、


村に入るときはテルは無理だろうし


子供2人だけで入れるかどうかわからないよね」


「そうだね、入り口の門のところで止められるよ」


「そうなんだよね。いきなり現れた子供2人が


隣の村の生き残りだってわかったら騒ぎになって


いろいろ聞かれたりするだろうから」


「テル君のこと話さないと逃げ延びれたって信じてもらえないよね」


「そこでなんとか誤魔化せたとしても、


その後どうなるかわからなくなるし」


「大きな街にいけば孤児院っていうのがあって、


そこは親のいない子供が大人になるまでいれるんだって」


孤児院の存在はきっとあるんだろうとは思ってはいたが、


よくそんなこと知っているよな。


孤児院か~


ありかなしなら僕はなしだよな。


勇者のことに関与するしないに関わらず


しばらくはテルと一緒にいて行動したほうがいいだろう。


でもリズちゃんはどうだろう?


リズちゃんを守ると約束したけど、どういう風に守るかだよな。


本人の意思もあるだろうし、聞いてみるしかないか。


「リズちゃんよく知ってるね」


「うん、パパの冒険者の知り合いの人が死んじゃって


子供がそこにいるからって年に数回寄付してるって言ってたの」


なるほど冒険者の子供か、


たしかに両親ともに冒険者は多そうだもんな


当然リスクも高くなる。


「リズちゃんはそこに行きたい?」


「ううん、マーちゃんと一緒がいい、ダメ?」


女性に言われたらうれしい言葉だけども、この世界で2人で生きていく。


そんな簡単なことではない。


大人だってかなり大変な世界だ。


どうやって?テルがいれば食料は何とかなるかもしれないが


それでも大人と呼ばれる年齢まであと7年はある。


大人になるまで7年間


リズちゃんは8年間


2人だけで生きていく?成人したとしても何をして生活するのか・・・


冒険者?


一応、駄天使からやってほしいって言われていることがある、


たぶんそれをやるためにテルが近くにいる。


それをもしやらなければ


テルは居なくなってしまうかもしれない?。


そうなったら場合僕はリズちゃんと2人で生きていけるのだろうか・・・


ここはテルと昨日の話の続きをちゃんとしないといけないな・・・




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る