第23話 東の丘 4
村の中にいたら危険だと判断して東の丘から森へ入ってきた
シェリー,マーティー、リズちゃん。
3人で森の中へ入って5分ほど過ぎたが、入ってすぐわかったことだが
思っていた以上に歩きにくい。
村といっても日本のように平らに舗装されているわけでもない。
コンクリートで舗装なんてこの世界では同然ないだろう、
大きな街には石畳ぐらいかもしれない?。
前の世界から見ればデコボコ道だ。
森の中はもっと歩きづらい、木の根っこが土から見えているような場所もあれば
膝まであるような草が生えている場所。
枝が人の侵入を阻む、羽音が聞こえるがどこにいるのかわからない虫たち、
緊張で視野が狭くなっているかと思うぐらい先が見えない。
夜の森ってこんなに歩きづらいんだ・・・
転生前の世界では田舎ではなかったが、深い森なんて入ったことはない。
小学生の頃にハイキングコースのような所へ遠足に行ったぐらいのものだ。
さらに今は子供の体で小さいので歩行困難度何てものがあれば最高潮である。
上を見上げれば木の葉が生い茂り明かりを遮っている、余計に恐怖が心を支配する。
リズちゃんと手を握ってなければ母の手を取って歩きたい、
そんな衝動と戦っている。
大丈夫だなんてリズちゃんに偉そうなことを言ったが全然大丈夫じゃない。
すでに1時間ぐらい歩いているんじゃないかと思ってしまうほど
精神的に追い詰められている。
さらに森の奥へ入っていき少したったところで周りの木と比べても
ふた回りは太い幹を持つ木がそびえていた。
「なんとかここまで来れたわね、ここまではまだこの森の入り口、
この先からさらに危険度が上がるから気を抜かないでね」
そうなのか・・・ここまでがまだ序の口なんて。
大きな木を回り込みさらに森の奥へ進んだ、
突然母が止まり手で止まれと指示をだした。
何かいる・・・何かいるのはわかる、
わかるがどこにいるのかがまったくわからない。
何かがいるのはわかる・・・しかしこんなにわからないものなんだな・・・
ほんの少しではなく、かなり侮っていた。
もう少し魔物が近くにいたらわかるものだと思っていた。
後ろから襲ってくるかもしれない、木の上から襲ってくるかもしれない、
異世界だ土の中から襲ってくる魔物もいるかもしれない。
考えれば考えるほど恐怖が襲って来る。
母は周りを探っている・・・
もしかしたらもうどこにいるのかはわかっているのかもしれない。
わかってはいるが2人の子供連れて戦闘するべきか考えているのかもしれない。
しかし森の中ではそのほんの一瞬の
魔物の出方を待ってしまった、
そう思った時には何かが音もなく降ってきた後だった。
「ウインドカッター!」
風魔法を母が詠唱する、しかしウインドカッターは
魔物によって打ち消されてしまった。
大きな鳥型の魔物、前世の梟のような魔物
しかし体長はかなり大きく2mはあるだろう。
「ルクシアンとは相性が悪い・・・」
と母が言った。
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ルクシアン・・・2mぐらいの鳥型の魔物
基本的には夜行性だが昼間でも活動できる
夜の森では影のように素早く移動する
ダークブラウンの羽毛が周囲の環境に溶け込むためで
昼間でも見つけにくい
頭は丸く目は大きく暗闇でもよく見え首は上下左右約180度回り
真後ろを見ることができる
待ち伏せて音もなく飛びかかり獲物を足で捕まえる
嘴も鋭い
風魔法も操り夜の森の皇帝と呼ばれている
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ウインドカッターが打ち消されたようにみえたのは
相手に耐性があるか、それとも中級魔法では効かないぐらい強い魔物か・・・
母のが使えるのは火魔法と風魔法、
火魔法の方が火力が出せるがこんな森のなかで火魔法を使ったら
火事になり自分たちが炎に飲み込まれてしまう。
僕が土魔法を使うか?
しかし使えても中級魔法のストーンバレットそれもまだ同時に3つぐらいしか
撃つことしかできない・・・
何もしないよりはましだろう、当たった所でダメージを与えらえるとも思えない。
それでもいつでも魔法が撃てる状態でいなくては・・・
しかしそんなことを考えている時ルクシアンがホバリング状態から
ふわりと浮かぶように翼を広げ瞬時にたたみ込んだ。
シュという風を切る鋭い音が響いた。
ドサッ
次の瞬間母が膝から崩れ落ちていた・・・
え?え?何?何が起こったのかわからなかった。
気がついたら母が倒れている、魔法?何?
母を見ると体の守る防具がまったく意味をなしてなく、
防具をつけていたのかわからないぐらいの
横一文字に切られた腹から血が溢れ出している。
「ママ!」
あっという間だった魔物が翼を広げて閉じたら次の瞬間倒れていた。
「うぅぅぅぐぅぅぅ」
母が息を荒げ、苦しそうにしている。
まだ息はあるしかしもう動けるような状態じゃない、
そんな時さらに追い打ちをかける出来事が起こった。
そこに体長が3mはあろう大きなトラのような魔物が現われた・・・
前の世界で小さい頃に恐竜辞典で見たことがあるような魔物。
そうまるでそれはサーベルタイガーのような魔物だ。
ここにきて2mはるルクシアンと3mはあるトラ型の魔物、
この森にはこんなに多くの魔物が潜んでいるのか?
今から怪獣大戦争でも始まるのだろうか・・・
こんな危険な魔物がいっぱいいるような森の横に村がある、
普通に考えたらこんな場所に村を作らない。
領主が開拓したいと言ってもこれほど危険な魔物が多くいる場所なら
事前に兵士などが調べて領主に進言するだろう。
大きな魔物が2匹も目の前に登場してリズちゃんも
腰を抜かして放心状態になってしまっている。
それが普通だろう、
自分がまだ意識を保てているのは目の前で死にそうになっている母と
放心状態で動けなくなっている9歳の女の子がいるからだ。
周りの人が自分よりもっとひどい状況にあるため不思議と平常心を保っている。
できれば僕も放心状態か気絶でもしていたい状況だ。
もしさらに何かがあれば、自分も精神的に崩壊しそうだ。
いきなり現れた2mはあろうルクシアン
そして母がそのルクシアンに一瞬で倒された。
そこにそのルクシアンより大きなトラ型魔物の出現。
思考停止しても誰も文句は言わないだろう・・・
姿形は10歳児だが中身は26歳。
だからと言ってどこの世界にこのシチュエーションで
最善の方法を冷静に考えられる?
無理ゲーを通り越して強制イベントで死ぬやつじゃないのか?
まさか異世界転生して10年で終了のお知らせくるとは思ってもいなかった。
前世の16年より幸せな10年だったような気がしないでもないが、
ここで幕を閉じるのか・・・
文句の一つでも言いたいところだが誰に?
姿を見たことがない暗闇の声の主?
怒りを抱いても相手の姿を知らないのとは何とも間抜けな話だ・・・
いったい何の転生だったんだろうか・・・
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