第20話 東の丘

南門にも火の手が上がりそちらに避難することは危険だと判断して、


マーティーとリズは東の丘へ向かっていた。


「リズちゃん疲れてるだろうけどもう少しで上り坂終わるからがんばってね」


東の丘はそれほど急勾配ではないが、


小さな子供が歩くには地味に体力を奪われる。


とりあえずの水と食料はあるが、


いつこちらにも魔物がやってきてもおかしくはない状況だ。


すぐ後ろに魔物がいて必死になって逃げるのと、


確実に魔物はいるがいつ来るのかわからないので逃げるのでは


同じ逃げるのでも違うものだ。


いつ来るかわからないから常に周りを気にしないといけなし休んでいられない、


気持ちばかりどんどん焦ってしまって精神的に疲れてしまう。


問題は丘に着いてからだ。


少しでも隠れられるような場所があればいいのだが、


悪い方へ考えていてはだめなのかもしれないが


今は最悪の事態を想定して行動しなくてはいけない。



隠れるような所がなかった場合、


夜という事で周りも暗いとはいえ高い場所で


体の小さな子供が2人もいればやはりどうしても目立ってしまう。


うつ伏せになって身をひそめている?だめだよな。。。


他に何か方法はないだろうか・・・


土魔法を使うか?壁などを作ったら余計に目立つかもしれないが、


人間ならまだしも魔獣が土魔法で作った壁を見て


おかしなものがあるって思うだろうか?


魔物にどれぐらい知能があるのか不明だからな・・・


そもそもどうやって獲物を見つけているのか、音?匂い?


とりあえず丘に行って隠れる場所がなければ身を隠せるぐらいの壁を作ろう。



丘の上には誰もいなかった、こちらには誰も逃げて来なかったのだろうか?


北側から魔獣が侵入してきてら村人たちは反対側の南門へ逃げるだろう。


西側は川、東側は丘そしてその先は魔物のいる森なら当然かもしれない。


リズちゃんも休みなしでここまで歩いてるから少し休ませてあげたい。


「リズちゃんこの辺りで少し休憩しながら様子をみよう」


そして土魔法初級を詠唱する


「ソイルウォール!」


1メーターぐらいの土壁を4つ出現させる。


そこに2人して座って隠れている。


人間が見れば明らかに怪しい壁だが、魔物が気がつかないことを祈るのみだ。


ここにきて希望的観測をしている時点で手詰まり感はぬぐえない。


しかし他に方法が思いつかない・・・


穴を掘って隠れる方法もなくはないが1メーター近くも穴を掘る


それも2人分隠れる大きなものだ・・・普通に無理だ・・・


魔法で穴を掘ることもできなくもないができて30センチぐらいの深さだろう。


魔法の不思議設定な部分なのだが何もないところに壁を作るのは


もちろん大きさにもよるがそれほど大変ではない。


事実僕もできている。


土魔法が使えるなら目の前の地面を触りながら操作できるんじゃないかと思って


何度が密かに練習してみたができなかった。


目の前にある土(地面)を利用して壁を作ったり土を掘ったりする方が


個人的には楽だと思うんだがそこはそうじゃないらしい。


なんで?不思議すぎる・・・


あるものを利用して何かした方が魔力量的にも


余裕が生まれていいと思うんだけど、魔力も無限じゃない


壁なら何度も作ったことがあるのでどれくらい魔力が残るか計算できるが


これからの事を考えればやはり不安になる。



北側と西側はここから見る限りまだ燃え続けているが


魔物の咆哮が聞こえなくなっているような気がする。


魔物がどこかへ移動したのだろうか?


南側はどんどん火がまわって


炎が街を飲み込むように広がって逃げ場を奪っていく。


どちらかが鎮火とまでは言わないが少しでも火事が


おさまってきてくれればそちら側に避難することができが・・・


それまでなんとかここで様子を見たいところだ。


このまま続くようなら最悪は森へ行かないといけない。


一人でもどうなるかわからないのにリズちゃんと一緒は絶対に無理だ。


森を抜けて隣の村へ行くのにどれくらい時間がかかるかわからないし


魔物が出たら逃げる方法しか取れない。


それ以前に森の抜け道をよくわかっていない。


東の森は魔物狩りをしたりする場所だがそれでもエリアごとに強い魔獣、


弱い魔獣と住み分けがされているらしい。


東の森から抜けていけば隣の村へ行くこともできるって話を


父とジェフさんが話していることがあった。


だがそれは魔物を狩れる人間が一緒にいればっていう条件付きだろう。


こちらに逃げてくる大人がいれば最悪一緒に森の方へ


行くこともできるかもしれないが・・・




〈〈 シェリー 視点 〉〉


3人の決死の攻撃でなんとか北側の戦闘場所から脱出できたシェリー。


早くマーティーとリズちゃんを探さないと、


教会に居たはずの2人がどういう行動をとったか・・・


避難するとしてまずは南側だろう。


その前にあの2人なら家に寄っているかもしれない。


南側に近いのは自分の家だ、そこで食料とかを持って避難しているだろう。


あのマーティーならできるはずだ。あの子なら・・・


もしかしてエラの家の方にいる可能性もゼロではないので一応寄ってみよう。



そうしてシェリーは身体強化を体全体にまとうように薄くかけた。


身体強化も最初は部分的にかけて使ったりしてしまう、


その魔法が使いやすいし魔力操作が未熟だと


体全体に薄くまとうなんてできないからだ。


なので魔力操作が未熟な人は使う場所に強くかけるのが効率的だと思ってしまう。


そして全体的に魔力をまとう時も部分的にだけ強くかける時も


同じようにやってしまうのでものすごい魔力がかかってしまう。


体全体に薄く魔力をまとうことで部分的にする時よりも


魔力量を少なくすることができるし、


一部分だけ強化するとその部分を怪我したりすることが多い。


それに走るという行為も結局は足だけではなく


体全体を使っているということ、筋肉も体全体で繋がっている


ということに気がついたりする。


魔力操作が上手で体全体で薄くまとうなんてことが出来て


初めて気がつけることではある。



ジェフとエラの家へついてシェリーは中の様子を見たが家の中にはいない。


さすがにここに居ることはないか・・・


ここにいないのなら次は自分の家だ。


また先を急ぐシェリーは南側の火の勢いが


かなりひどくなってきていることに気がつく。


家にいなかった場合あのマーティーは南へいったのだろうか?


村の大人といっしょなら南へ行っただろうし、


途中で家へ寄ることはなかなか言い出せないだろう。


だがもし2人だけで移動しているなら・・・


ん・・・・・・


シェリーは考えたマーティーならどうするか?


あの子は少し不思議なところがある。


年相応の子供の時と自分たちよりも年上の大人のようなことを言う時がある。


そして子供とは思えない落ち着きがあり、いつも周りを観察している。


普通の子供ならこの状態ではパニックになっているが、


あの子ならリズちゃんを守らないといけないと思い


冷静に判断し行動しているだろう。



そうして考えながら先を急いでいたら自宅までついて家の中を確認した


「マーティー!リズちゃんいる?」


祈るように声を上げたが反応はない。


ここにもいないか・・・


だがもしマーティーが寄っているとしたら何をするか・・・食料!


保存食を置いてある部屋へ行くと、少しだけ干し肉などがなくなっていた。


そして水を入れる革袋もなくなっていた。


これはここに一度寄ったわね。


でも家にはいない・・・


もし他の大人と一緒に行動しているならもっと保存食がなくなっているだろう。


南門も火が上がっているこの状況で2人で行動しているなら


東の丘にいっている可能性もある・・・


あるが、まずは南門の様子を見に行こう。


問題はどのタイミングで南門の火が上がったのか。


2人が南門へ着いてる状態で火がついたこともありえる。


マーティーならリズちゃんを連れて何とか逃げてこちらへ


戻って来て東の丘へ行くだろう。


すれ違いになることはないと思いたい。


身体強化をまといなおしてシェリーは南門へ急いだ。


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