第19話 ヘクター、シェリー、ジェフ、エラ 視点 2

ヘクター、シェリー、ジェフ、エラ 視点 2



1匹目のアルマドはエラが2匹目のアルマドはヘクターとジェフが


投石をしながらなんとか敵の注意を引きつける。


シェリーは3人が敵を引きつけながら移動できるように声を出して誘導している。


投石といっても身体強化をかけた体で両手を使って投げるような大きさのがれきだ。


一度でも嫌がって敵意を集めれば、あとはうまく川へ誘導できる、普通ならば。


しかし逆上し興奮状態のアルマドはただやみくもに暴れる。


まずアルマドの意識を向けさせるのがかなり困難になっている。

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アルマド・・・全長3メートルぐらいの大きさ 

       4本足もしくは体を丸めて移動する魔獣

       こちらから攻撃しなければ攻撃を仕掛けてこない

       しかし攻撃されると体を丸めてボール状になり転がり

       移動しながら敵に突進していく

       さらに転がりながらジャンプもする

       皮がかなり硬いので物理攻撃だとはじかれてしまう

       さらに体に火をまとうため、よほど素材がほしい場合を

       除いては見かけても戦闘はしないようにする

       村や街に入ってきたら災害レベルになる魔獣だ

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ヘクター、ジェフの2人で何度も投石をしてやっとアルマドの意識を


こちらへ向けさせることができた。


村半分ぐらいはすでに崩壊しているだろうか・・・。


2匹目のアルマドも教会の近くまで来てしまっている。


子供たちはさすがに避難しただろうが・・・


やはり教会の様子が気になる4人だが少しでも注意が散漫になると命が危ない、


そこへ想定外の変化が起こる。



2匹目のアルマドが急に変則的な動きをしだしたのだ。


回転しながら普段の倍以上高くジャンプして地面へ激突した。


全長3メーター近い魔物が回転しながら空高くジャンプしてから


地面へ激突したため地面にある瓦礫などがいつもより弾けるように飛ばされた。


矢のような速さで飛んできた瓦礫にジェフが当たってしまった。


アルマドによって飛ばされた瓦礫に当たったジェフは吹き飛ばされて


まだ残っていた建物の壁に激突し血を吐いた。


瓦礫が飛んできて体に激突する時に身体強化かけていたし、


壁に激突する時も身体強化を使っていたため辛うじて致命傷にはならなかった。


しかしダメージは受けているこれ以上の戦闘続行は命を落としかねない。


「ジェフ!いったん下がれ!」


「下がれって言っても行くところなんてないだろうが!」


ヘクターの声へ口から出ている血を拭いながらジェフが答える。


「やれるところまでやる、どうせどこにも逃げ場はないからな!」


ジェフが口から出ていた血を袖口で乱暴に拭き取る



たしかにもう逃げる場所はない。


4人で完全撤退することもできなくはない。


さすがに2匹目のアルマドは想定外だし、1匹でも災害級なのに


さらにもう1匹は到底無理な話だ


しかしまだ身をかがめて隠れながらも必死で逃げている村人達がいる以上


少しでも時間を稼がないといけない。


「なんとか村人達が逃げる時間を少しでも稼ごう」


ヘクターが言うとシェリー、ジェフ、エラの3人も、


もう自分たちが生き残れる可能性が極めて低いことを悟った。



2匹のアルマドは完全に4人を標的にしている。


そして最初に狙われるのは傷ついたジェフだ。


こういう弱っている者を見つける嗅覚はさすが魔物だ。


普段は1匹で行動するアルマドが2匹で行動している、


近くにいるから魔物同士で争いが起こりそうなのだが


なぜだか人間相手の攻撃を優先させている。


なんで魔物同士で争いが起こらない?


同じ種族だろうがアルマドは通常1匹で行動する魔物だ、


2匹いたら喧嘩になりそうだが、何か変だな・・・


ヘクターは目の前の2匹のアルマドを見て考えていた。



なんとか攻撃をよけているジェフだがアルマドからの攻撃を受けて満身創痍状態。


このまま魔力がきれて身体強化が切れたら逃げることさえできない。


ヘクターは西の川へ何とか誘導するためにできるだけアルマドに近づいている。


エラも水魔法攻撃の手をゆるめないようにしているがジェフのことが心配で


動揺しているのがわかる。


シェリーもアルマドが火をまとっていない一瞬のスキをうまくついて


風魔法を詠唱して攻撃しながら3人に声をかけて誘導している。


何か1つでもこのバランスが崩れたら崩壊する、そんな緊迫した状態が続いていた。



そんな時今度は南門の方から火の手が上がっているのをシェリーが気が付いた。


(え・・・なんで南門が・・・)


3人はまだ気が付いていない、伝えるべきかどうか迷っている。


今意識を他の事に分散させたら何とか保っている均衡が崩れかねない。


そしてたとえ伝えたとしても行くことはできない・・・


南門の方にはマーティーとリズちゃんがいるかもしれない。


どうしたらいいのか迷っているとそのシェリーの顔を見た


ヘクターが最初に気づいてしまった。


そしてエラも様子がおかしいシャリーを見て気づいた。


みんな一斉に子供たちのことを思った・・・


そして最後に気づいたジェフがシェリーに向かって言った。


「シェリー頼む、南門へ行ってくれ!」


「何言っているの!そんなことできる訳ないでしょ!」


シェリーがジェフにむかって叫ぶ。


「もう時間稼ぎしかできない、俺はそろそろ魔力が切れる、


お前はまだ魔力が残っているだろう、リズをマーティーを頼む!」


「シェリーわたしからもお願い南門へ行ってちょうだい」


「そんなことできないわよ!」


シェリーはジェフとエラの言葉に驚きを隠せない。


「3人でなんとか時間稼ぎするから子供たちを何とか逃がせるようにしてあげて」


「そんな・・・そんなこと。。。」


シェリーがヘクターに答えを求める。


「大人ならなんとか逃げようがあるかもしれないが


マーティーとリズちゃんは小さい子供だ、逃げ遅れてる可能性が高い。


行ってくれ、俺からも頼む」


ヘクターもシェリーにつらいことを頼んでいることは理解している。


「・・・そんな・・・わかったわ。。。 でも絶対逃げ延びてよ、


わかった?絶対よ!約束して」


シェリーが3人に向かって叫んだ。


「わかった」


「当たり前だろ」


「逃げ足は速いんだから大丈夫よ」


4人ともわかってはいた、それが叶う可能性がとても低いことは。


でもそれでも若いころから一緒の冒険者パーティを組み、


4人で開拓事業に参加して村にまでして子供も生まれた。


とても楽しくそして幸せな時を一緒に過ごした最高の仲間だ。


結束の固い4人はこんな時こそどういう顔をしないといけないのか理解していた。


そうこんな時こそ笑顔でいなくてはいけないことを。


「シェリー、リズをマーティーをまかせたぞ」


「シェリーよろしくね」


「シェリー、頼んだ!」


3人がシェリーに向かって笑顔を作って言う。


「わかった、任せて子供たちは何があっても絶対に守ってみせる」


シェリーも胸が締めつけられるような気持ちを必死に隠して


笑顔で返事を返した。


そしてシェリーをその戦場から逃がすために3人で


さらに激しくアルマドの注意を引きつけて


シェリーの逃げ道を作った。



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