第17話 八方塞がり?

教会の正面扉から外にでたら、そこは想像以上に酷い状態だった。


北側一面が火の海になり西側のほうもすでに火の手が上がっていた。


教会の周りの建物もかなり崩れているし、なんだか大きな穴?


というかその周りにあった物すべてが押しつぶされている跡が見える。


何があったんだ?これでよく教会無事だったな。。


もっと早く移動してもよかったぐらいだ。


でもこれをやった魔物は近くにいないのか?


ビクビクしながらも辺りの様子を見たが魔物はいないようだった。


しかしこうなると南門の方へ行くしかないか・・・


「リズちゃん、南門の方へ行くから手をしっかり握っていてね、


もし何かあったり、物や魔物を見つけたようなら遠慮しないで教えてね」


「・・・うん、マーちゃん」


よし!南門へ行こう。



南門の方へ行くとして途中で少しでも時間があれば


家によって食料というか保存食を持っていった方がいいかもしれない。


それだけの時間があればいいんだけど水か・・・


「リズちゃん、水なんだけど水魔法で水出せるようになってるよね?」


「うん、ウオーターボール出せるよ」


「そっか、それなら水は大丈夫だね」


あとは食料か、家によって干し肉なんかの保存食を少し持っていきたいけど


荷物になるかな?


カバンにいれてあとは何がいる?


お金?すこしぐらい持っていてもいいかもしれない。


「リズちゃん、僕の家へよって保存食を持っていこうと思うから寄っていくね」


「うん、わたしの家にも少し寄っていい?」


「何か持っていきたいものあるの?」


「うん、少し前にリュックカバン買ってもらったから、


それにいろいろ入れられるよ」


「そっか、わかったリュックなら動きやすいしいいかもしれないね」


リズちゃん意外と冷静だな、


手はかなり力強く握ぎられているから怖いんだろうけど。


あと服か・・・いるかな?


おれは男だからいいけどリズちゃんは女の子だからな・・・どうなんだろう


とりあえず持ってきてもらうか?


僕のカバンに詰め替えてあげてもいいから


少し持ってきてもらってもいいかもしれない。


「リズちゃん、家についたらリュックと


その中に少しだけ自分の服入れてきてね」


「うん、わかった」



振り返って北側の様子を見ると完全に火の海になっている。


もう教会があった場所ぐらいまで火がまわっているような気がする。


神父さんも逃げてくれてればいいけど・・・


少し急ぎ足で歩きリズちゃんの家についた。


リズちゃんは荷物の用意をしている。


やっぱり他の人たちはもう避難しているな、


ここからなら南門の方へ行ったんだろう。


「リズちゃん、焦らなくていいからね。まだこの辺りは大丈夫だと思うから」


そしてリュックに服を入れて準備できたようだ。


次は僕の家だ。



自分の家にも寄って服と水を入れる革袋、


干し肉などの保存食を持って再び南門の方へ移動しようとした時、


南門がある方角から大きな音と共に火の手が上がった。


ドーーーーーン・バーーーン・ドーーン!


ゴゴゴゴゴ・・・


それに続いてものすごい地響きが聞こえた。


え?なんで南から・・・南からも魔物が?どういうことだ?


北側の魔物が南側へ移動したのか?


それならここまで来る間にわかるような跡があるはずだが・・・


「マーちゃんどうしよう・・・南門の方も火事になってるよ」


どうしたらいい?南に行ってもいいけど戻ってこれるかどうかわからない。


これで逃げられる道は東側と西側・・・


しかし東側は丘になって村全体を見える感じになっているが


その先は森になっている。


そこは魔物がいる森だ・・・


西側に行っても川を渡れるかどうかわかない。


この夜に子供二人で川を渡ったはいいけど、その先は?


こんな時大人がいてくれれば避難場所なり抜け道なりを知っているからもしれない。


だが家へ寄ったのもあるが、近くの民家の人たちはすでに避難しているようだ。



「・・・ん、とりあえず東の丘まで行ってみて上から村の様子を見よう、


その先の森へはどちらにしても危なくていけないだろうし」


「川の方は?」


「教会から出る時に見たけど北からかなり火が伸びていたから何とも言えないけど、


川の方へ行ったら危ないと思う、


それに川を渡った先に何があるのかわからないし」


「川の向こうは森があってその先は山があるってパパが言ってたよ」


そうなんだ!そんなことよく知ってるな・・・リズちゃんすごい。


しかし川を渡ったら森か・・・そんな気はしてたんだけど危なくていけないよな。


魔物がいない森なんてことはないだろう。


もし西側からどこかへ続く道があるなら橋があってもおかしくない。


だが橋があるって話は聞いたことがない。


川は魔物から村を守る防波堤代わりにしているんだろう。



しかしリズちゃんは思った以上に冷静だよな。


自分は中身は26歳ぐらいだからまだギリギリ冷静にいられるけど、


普通の9歳の女の子なら間違いなくパニックになっている。


その前にあの教会から移動してなかったと思う。


でも怖いのは怖いんだろうな、握られている手がものすごく痛い。


でも精神的にパニックになってないだけありがたい。


これでパニックで泣いてしまって動けなくなったりしたどうしようもなくなる。


手の痛みぐらい何とでも我慢できる。



ドーーーーーン!ギャーーーーーー


ゴゴゴゴゴ・・・


その時北側からさらに大きな魔物の咆哮とともに地響きがした・・・


「ねえ、マーちゃん」


「どうしたの?」


「パパとママたち大丈夫かな?」


何と答えればいいんだろうか・・・


大丈夫だよと言ってあげたい。


しかしここまで咆哮が聞こえてくるような魔物がいる現状で大丈夫はないよな。


パパたちなら大丈夫だよ、なんて何の根拠もない。


教会の周りの様子をすでに見ている。


あの状況で大丈夫もないだろう・・・


10歳にもなっていない女の子不安に思っている時に


なんと言えばいいのかわからない。


「・・・・わからない、わからないけど迎えに来てくれた時に


リズちゃんがいなかったらパパとママが悲しむでしょ?」


「・・・そうだね、がんばって逃げないとね」


求められている答えになってないだろう。


自分が情けない・・・ほんとうに情けない、こんなことしか言えない自分が。


かっこいいことを言う必要はないだろう。


そんな必要はない、ただ安心させてあげられる言葉を言うことができない。


その時握られていた手がさらに強く握られた。


リズちゃんを見るとこちらをしっかり見ていた。


目が合うと大丈夫だよと言われているような気がした。


完全に自分が励まされているな・・・



今日でこの異世界の生が終わるとしてもこの子だけは何とか助けてあげたい。


おれはすでにトータル20年以上生きている、この少女は10年も生きていない。


もしかしたら生き延びたことによって辛い人生が待っているかもしれない。


でも今はとにかく生き残る道を探ろう。


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