第16話 このままでは・・・

カーン!カーン!カーン!カーン!


最近作ったという村に何か緊急の事が起こったら村人に知らせる鐘がなった


僕の家族とリズちゃんの家族で


教会へ着いたら他にも避難している人たちがいた。


自衛団に所属している人たちの家族などだ。


「いいか、ここに避難していても危なくなりそうなら


火のない方へ早めに避難するんだぞ」


「ここは村の真ん中あたりに位置してるから逃げる時は


逃げる方向も気をつけるんだぞ」


父とジェフさんが避難している人たちに声をかけた


「神父さんよろしくお願いします」


母が僕とリズちゃんを見ながら言う


「はい、たしかにお預かりします、みなさんも無理のし過ぎはいけませんよ」


神父さんが父、母、ジェフさん、エラさんに向かって言う


「「「「 はい 」」」」


「マーティー、リズちゃんと一緒に待っててね」


母がいつも見せないような真剣な顔をしながら抱きしめてきた。


「ママ、無理しないでね」


抱きしめられながら耳元に伝えた。


「うん、大丈夫よ」


母は作り笑顔で答えていた。


ドーーーーン!!!


その時いままでの中でも一番大きな音と地響きが起こった。


「よし!いこう」


父がそう言うと母は少しだけ歩いてこちらに振り返った、


手を振りながら【だ・い・す・き・よ】と口が動いた気がした。



教会の中といっても前世のようなシェルターのようなものではない。


民家よりは作りがしっかりしているだろうが


大きな魔獣がきたらひとたまりもないだろう。


リズちゃんは小さくなって震えていた。


僕も何と言って声をかけたらいいのかわからないので、手を握ってあげていた。


地響きはおさまらないし、ゴーン・ダーン・バァーンと何かをたたきつけ


それどころか徐々に近づいてきているような気がする。


「神父様、音がだんだんと近づいてきているように


感じるんですが大丈夫でしょうか」


「そうですね、さきほどよりも音が大きくなっているような気がしますね・・・


もう少し様子を見てまだ近づいてくるようなら場所を移動しないといけませんね」


「ここから移動するとしたらどこに避難するのですか?」


「火の状況にもよりますが、南門のほうがいいかもしれませんね、


西側は川ですし、東は丘で少し高くなっていますがその先が森ですからね。


夜に森を移動するのは危険すぎます、移動しなければいけないようなら


南のほうへ行ったほうがいいかもしれません」


「歩いてずっと避難するのですか?」


「ムルスと荷車があればいいのですが、


すでに避難している人たちが使っているかもしれません。


大人は歩きで小さな子供は荷車に乗せてもらえるようにしましょう」

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ムルス・・・前の世界での馬とロバの間のような感じ

      荷車などを引かせてたりする

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こんなにのんびりしていていいのだろうか?


いろいろと考えなければならないとは思うが判断が遅いような気がする。


ここからさらに避難して大丈夫だったらそれでいいだろうし、


ダメなようなら食料とかも必要になる。


水は魔法があればとりあえずは何とかなるだろう、


リズちゃんが水魔法は使えるはずだ。


他にも道はあるかもしれないが村の中とはいえ夜に移動するのはかなり


危険なはずだ、武器などもないだろう・・・


開拓事業がはじまって最初のころに似たようなことがあったと


言っていたが少なくても最低10年は大きなトラブルなく過ごしてきた。


それだけにいろいろと危機感がうすれているような気がする。



南側から逃げて隣の村まで歩いてどれくらいかかるんだろう・・・


まったく情報がないな・・・



「リズちゃん、隣の村とかそれ以外の近くの村までいったことある?」


小さな声でリズちゃんにだけ聞こえるように言った。


「うん、一度だけパパといったことあるよ」


おぉ!まじか!その情報はありがたい。


「大体どれくらいで着いたか覚えてる?」


「ん~ムルスの荷車でお昼前ぐらいに村を出て、


向こうで荷物の交換みたいなのをして夕方になる前には帰ってきたよ」


なるほど村で取引する時間が1時間ぐらいだとして、


4.5時間の距離か?夜ということも考えても歩いて


1日かかるような距離ではないだろう。


あとは魔物や盗賊なんかに遭遇しないかどうかか・・・


そればかりは神頼みになってしまう。


この状態を見て盗賊などが来るだろうか?


村で火事などが起こっているだけなら村に来くるかもしれないが、


魔物が村で暴れている状態ではリスクが高すぎるよな?


どこかで様子は見ているかもしれないが・・・


魔物はかなりの確率で来そうだよな。


逃げるとなった時大人の人たちが戦えるかどうかにかかっているのか。


あまりにも他力本願すぎるな・・・



また大きな地響きがしてその音が徐々に近づいてきている、


それと同時にいろいろな所から叫び声も聞こえる。


そろそろ逃げた方がいいような気がする。


一人だったら逃げるんだがリズちゃんを置いてはいけない。


周りにいる少し大きな人を誘導してみようか・・・


知らない人だけど子供が先導して言うよりいいかもしれない。



「そろそろ移動したほうがいいような気がしませんか?」


近くにいる少し自分より少し年上の男の人に小声で伝える


「ん・・・どうなんだろう、神父様が移動しないと動けないよ」


ダメだ・・・人任せすぎる・・・


「神父様は教会が家ですから、動こうとしないような気がするのですが」


「あ・・・たしかにそれはあるかもな、


俺でも家にいたらギリギリまで移動ためらうよな。


ん・・・よしちょっと言ってみようか」


ん~何とかなればいいんだけど?あとは神父さん次第か・・・


「神父様、先ほどより音が近づてきているようです、


そろそろ移動したほうがいいと思いますが、どうでしょう?」


男の人が神父さんに伝えたが、


「そうですね・・・どうしましょうか・・・」


あかん・・・ダメなやつだ・・・


「子供や女の人もいますから早めに移動しないと間に合わなくなりませんか?」


仕方がないので神父さんへ向かって言ってしまった。


小さな子供から言われると反発するかもしれなが言わないよりいいだろう。


しかし何か考えているのか、


考えることをすでに放棄しているのか返事は返ってこなかった。


まわりの大人たちもここにいては危ないかもしれないと


思いはじめてはいるが、なかなか行動することができない。



ドーーーーーン!!!バァーーーーーン!!!


その時何かをたたきつけるような大きな音が教会の近くで響いた。


教会にいる人たちもその音の大きさにさすがに驚いた。


女の人たちはキャーーと叫び声をあげている。


これ以上ここに居ちゃだめだ。


ドーーーーーン!!!バァーーーーーン!ドーーーーーン!!!!!


さらに大きな音が教会の近くで響いた。


よし!今しかない、死ぬよりましだ。


「リズちゃん行こう!ここにいると危ない!」


リズちゃんの震える手をしっかり握りなおして言った。


「・・・うん、わかったマーちゃん」


その様子を見ていた周りの大人たちもこのままではいけないと思ったのか


立ち上がって移動しはじめた。


「神父さま、移動しましょう」


1人の男性が神父に声をかけるが神父はなぜか動こうとしない・・・


あぁ・・・もうダメだな。


できるだけ急いで村から避難する人たちと合流しよう。



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