第15話 この世界に来て10年経ちましたよ


この世界に転生してもう少しで10年の月日が経とうとしていた。


相変わらず黒い猫さんは見つかっていない。


本当にいるのか説を最近考えている・・・


あの暗闇の声の主結構焦ってたし


いい加減な感じもあったから僕とは違う世界へ


黒い猫さんを送ったとか?


何かありそ~とか思ってたりしている・・・



10歳になったとはいえ村を抜け出して森へ行って見つけに行けないというのもある。


この世界は魔物がいるので子供だけで森へ遊びに行くなんて、


罰ゲームどころかデスゲームでしかないので


森へ黒い猫さんを探しに行くなんてことはできない。


今は村となっているが少し前まで開拓地、


通常いるような魔物も比較的強い魔物が多いみたいで、


いくら魔法が使えるようになったからといって


子供を魔物狩りに連れて行くようなことはない。


最近は村になったことで他の土地から移住してくる人もいて


人口が増え始めてきたようだ。



そうなると当然治安が少しだけ悪くなったりもする。


以前は父とジェフさんの2人だけが魔物狩りをして、


村の住人同士などで揉め事があったりしたときも仲裁に入ったりしていたが


さすがに2人だけに任せるのはどうかということで、


村に自衛団のようなものができた。


しかし自衛団を作りました、武器を渡しますと言ったところで


元冒険者でもなければ急に魔物と戦えるわけではない。


魔法も使える人はいるが戦闘で使えるのかと言われれば無理だろう。


魔物は止まっている的ではない、動くしこちらを殺しに狙ってくるのだ。


そんな殺気みたいなのを感じてしまったら魔法どころではないだろう。


一応訓練みたいなこともしてはいるが、


村の北と南に門があるのだがそこを警備する程度のものである。


そんなも自衛団みたいなのができれば子供の出番など当然なくなってしまう。



村に猫や動物がいないのか?って言われると、


村にいるのは移動に使用したりする前の世界でいうところの


馬とロバの間のような感じのムルスという動物がいたり,


ミルクと毛皮が使えるカプラと呼ばれている


前の世界の山羊やぎのようなひつじのような動物がいる。


あと隣町などと緊急の連絡を取るためのホーミーバードという鳥が村長の家にいる。


まずペットという概念がないのかもしれない、


あったとしてもお金持ちぐらいなのかもしれない。



そんなこんなでどうやって黒い猫さんを探していいのか


途方にくれそうな日々を送っていた。


そんな平和な日々がずっと続くと思っていたが・・・


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カーン!カーン!カーン!カーン!


その日の夜、自衛団が最近作ったという村に何か緊急の事が起こったら村人に知らせる鐘がなった。


鐘ができたことは知ってはいたし、


一度どんな感じなのか村人に知ってもらうために聞いたことはあった。


だがそれ以来初めて鐘が鳴ったことで最初反応できなかったが、


緊急の鐘の音だとわかり外にでて周りを確認した。


外を見て何が起こっているのかはすぐにわかった。


村の北側ですでに火の海ができていたのだ・・・


ここからは正確なことはわからないが、たぶん北門の辺りだろう。


火事が燃え広がったのかな?とも思ったが


ドーーン、ドーーン、ドーーンと聞いたことのない地響きのような音もしている。


北門の辺りなら何か魔物が村に入ってきたのかもしれない。


この世界に来てから今日までこんなことがなかったので油断していたが、


前世の世界より命が危険にさらされる可能性が高い世界だ。


一つ間違えれば簡単に死んでしまう。


魔物に見つかれば簡単に殺されてしまう世界なのだ。



父がすぐに武器と防具を装備して出かけようとしていた。


母も装備の準備をしていた。


「パパとママは様子を見てくるマーティーはリズちゃんと


教会に行って避難しててくれ」


「え?ママもいくの?」


「あぁ、ここから見ただけではわからないがこの火の様子からすると


少しやばいかもしれない。ジェフとエラと4人でじゃないと


対処できないかもしれない」


「・・・・わかった。。。」


「大丈夫だ、開拓地の最初の頃はこんなこともあったからな」


「シェリー準備いいか?」


「ええ、大丈夫よ、まずはジェフの所にいきましょう」


そして3人でジェフさんの家へ向かった。


ジェフさんの家へ向かっている途中でも村人がみんな心配そうにしていた。


「みんな危なくなる前に火のない方へ逃げるか教会へ避難するんだぞ!」


父が周りの村人たちに声をかけている。


「おぉ、ヘクター、気をつけていってきてくれよシェリーもな」


村人たちが声をかけている。


「あぁ今回のは久しぶりにやばそうだから、逃げる準備だけはしておけよ」


父がそういうとみんな表情がさらにこわばっていた。


苦労して開拓地からやっと村になってこれからって時に


もしかしたら村を捨てなくてはならない。


捨てなくてもいいかもしれないが、


ここから見る火の様子からすると復興するのにもそうとう時間がかかるだろう。


危なくなって村から逃げたところで隣の村へいくしかない。


そこで最初は命からがら逃げてきたので助けてはくれるだろう。


しかし隣の村だって裕福なわけではない。


命が助かっただけよかった、また1からやり直せばいい。


言うのは簡単かもしれないが、


開拓事業を最初から参加している人たちはその苦労を知っている。


「死んだらおしまいだからな、ギリギリまでここにいて逃げ遅れるなよ!」


父が大きな声で不安にしている村人たちに言った。


「・・・わかってるよ」


村人たちは力なく答えた。



ジェフさんの所につくとジェフさんエラさんともに装備の準備は終わって


リズちゃんといっしょに家の前にいた。


「ジェフ、準備はいいか?」


「あぁ大丈夫だ、教会によって2人を避難させてからでいいよな?」


もしかしたらこのようなことが起こった時に用に


マニュアルじゃないがどうしたらいいのか決めごとのようなことが


あるのかもしれない。


「リズ、パパとママは様子を見てくるからマーティーと一緒に


教会でいい子にしててね」


エラさんがリズの手を握りながら伝えた


「マーティー、リズを頼むな お前が一緒ならリズも安心するだろう」


「マーティー、リズをお願いね」


ジェフさんとエラさんが僕の顔を見て言う


「はい、わかりました」


いっしょにいてあげることしかできないけど、


心配を少しでも減らしてあげたくてそう答えた。


「よし!行こうか!」


父が声をかけて4人で教会へ向かった・・・



カーン!カーン!カーン!カーン!


まだ緊急を知らせる鐘は鳴りづづけている。


だが教会へ行く途中にある家々からは人が逃げる様子はない。


いままで何とかなってきたから今回も大丈夫だと思っている人も


いるのかもしれない。


「何があってもいいように、いつでも逃げられる準備をしておけよ~~~」


父とジェフさんが家々に向かって警告している。


避難訓練なんてしたことがないのはわかるが、みんな大丈夫なんだろうか?


火が上がっている場所はたしかにここからは離れている。


やはり人はどこかで自分だけは大丈夫って思ってしまう生き物なのかもしれい。


みんな逃げ遅れないでよ・・・


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