第10話 とうとうここまで来た


もう少しで解放の儀を行なえるので毎日やたらソワソワしているマーティーです。


やっと5歳になり解放の儀を行える、さすがに長かった・・・これで魔力量を計測し標準値内なら魔法が使えるようになる。


そうしたら今より行動範囲が広くなるだろうし、黒猫さんを探してなぜこの世界に呼ばれたというか送り込まれたのか、わかるかもしれない。


解放の儀ではチート能力じゃなくて標準的な能力であってくれと祈るもの異世界転生者としておかしなものだ。


今はなんとしても魔法を使えるようになって行動範囲を広げたい。


「マーティー、明日解放の儀のために教会に行くからね」


やっと・・・やっとこの日がきたか・・・


「うん!わかった!楽しみ!」


「ははは、マーティーは魔法使いたがってたもんな~シェリーみたいに魔法使えるといいな~」


ヘクターはマーティーの頭をなでながら笑っていた。


「うん、ママにいっぱい教えてもらう!」


最近は子供の体に意識が引っ張られているのか子供のフリをしていたつもりが自然とこんなことを言うようになっている。


「そうね~自分の子供に魔法を教えられるようになるなんて思っていなかったわ」


シャリーは嬉しそうに微笑んだ。


「ママ、いっぱい魔法教えてね」


「そうね、マーティーがママと一緒の魔法属性だといいんだけど」


「魔法属性違うと教えられなの?」


「そんなことないわよ、魔力操作はいっしょだから教えられるわよ」


魔力操作は教えられるけど、魔法は属性違うとやっぱり教えるの難しいのかな?


「マーティー、今日は早めに寝ましょうね」


「は~い」


やっと明日だ・・・今日はいろいろ考えても仕方がないので布団に入って早く寝よう・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日は待望の解放の儀 家族で教会まで歩いて向かっている。


教会に向かう途中でジェフさんの家を通るとジェフさんエラさん、そしてリズちゃんがいてこちらに駆け寄ってくる。


「マーちゃんおはよう~ヘクターおじさんシャリーおばさんおはよう~」


リズちゃんが元気にあいさつしてくれた。


なかなかマーティーと言えなくていつのまにかマーちゃんになりそのままその呼び名で呼ばれている。


「リズちゃん、おはよう、今から教会に行ってくるね~」


「「リズちゃんおはよう」」


「マーちゃん終わったら遊ぼうね」


リズちゃんにはなぜだかとても好かれているみたいでよく遊んでとせがまれる。


遊ぶと言ってもこの世界は子供専用のおもちゃが売られているわけじゃない。


それこそそのあたりの石を食器に見立てたおままごとや追いかけっこ、男の子どうしなら木の棒を使って冒険者ごっこぐらいなものだ。


村には他にも同じぐらいの子供はいるがリズちゃんはあまり他の子供たちと遊ぶのが好きじゃないのか、2人で遊ぶことが多い。


僕の家から他の子供たちがいる家へ行く途中にリズちゃんの家があるので自然と2人で遊ぶことになってしまうのだ。


ま~母がエラさんの所へ行く時にいっしょに出かける以外は1人でどこかに行くってことはまだできない。


僕とリズちゃんの家の間に他の子供がいれば話は別なんだろう。


「マーティー、解放の儀楽しみだな!」


「マーティー、魔法使えるようになるといいわね」


ジェフさんとエラさんから声をかけられる


「うん、早く魔法使ってみたい!」


「「「「ハハハハハ」」」」


と大人たちが笑う


「ほんとマーティーは魔法使うの楽しみにしてるんだな」


ジェフさんが言うと


「マーちゃんが魔法使いになるなら私もなる!」


とリズちゃんが言いだした。


「そっかリズちゃんも魔法使いになるのね」


母がリズちゃんの頭をなでてあげる。


「うん、ママわたしに魔法教えて!」


「リズには魔法はまだ教えてあげられないから来年の解放の儀の後ね」


「ほんと?マーちゃんと一緒に魔法使いなれる?」


「そうね、がんばればなれるわよ」


「マーちゃん、私がんばるね!」


なぞのがんばる発言をされてしまって、どうやって返事したらいいのかわからないが


「うん、いっしょに魔法使いになれるといいね」


ここは無難な答えがいいだろう。


「うん、いっしょ、まーちゃんといっしょ」


なんだかちょっと会話が成立してない気がしないでもないがそっとしておこう


エラさんがクスクス笑っている・・・


エラさんそこは笑うところではないですよ?


「リズ、剣士もかっこいいぞ?」


ジェフさんがなぞアピールをしてきた。


「私はマーちゃんと一緒の魔法使いになるの!」


そこは一緒【に】魔法使いになるじゃないかな?


母も父もクスクス笑いだした。


ジェフさんはとても悲しそうな顔をしている・・・がんばれジェフさん、応援してますよ。



そしてみんなで少し会話して別れ、教会へ歩いていく。


教会へは他の子供たちもいるようで家族で歩いている人たちを見かける。


何度か見たことはある子供たちだが遊んだことがないので声をかけづらい。


もっと子供が多いものだと思ったけどそうでもないのかな?


子供を増やしても育てなければならないし、もっと安全な村やお年寄りが多いような村なら子供の世話はお年寄りに任せて働くなんてこともあるんだろうけど


開拓地だとお年寄りははっきり言ってみたことがない。


父と母ぐらいの若い人がほとんどで、もう少し年上の人たちをたまに見るぐらいだ。


なので子供を産んだら自分たちで育てなければいけないし、その間は働き手が少なくなる。


働き手は増やしたいがそれまでが大変といった感じだろうか。


父と母はさすがに知り合いのようで挨拶したりしていた。


そしてやっと教会の中へ・・・



教会の中には神父さんであろう白髪の初老の男性が丈の長い白い薄手のコートのようなものを着ている。


たぶん前の世界の映画やドラマで見た以外では初めて神父という職業の人を見ると思う。


「みなさまようこそおいでくださいました、本日は子供たちの解放の儀を行います。


順番に本人の名前を呼びますのでそれまで座っておまちください」


もっと横柄な感じで言われるのかと思ったが、かなりソフトな感じでびっくりした。


先入観というか聖職者=横柄という勝手に思い込んでいてすみませんと心の中であやまった。


すべての聖職者が横柄なわけないよな・・・


自分の前に2人ほど名前を呼ばれて一人5分ほどで戻ってきた。


思ったより早いな~そしてとうとう自分の順番がまわってきた。


「マーティー君こちらへどうぞ」


「はい」


めっちゃ緊張してきた・・・


神父さんがいる方へ進み部屋の中へ誘導された。


「この部屋の中で魔力量を測り規定値内ならそのまま解放の儀をやるからね。


もし規定値より多いようなら一度戻ってもらってみんなの解放の儀が終わってから詳しく調べるからね、わかったかな?」


神父さんがとても親切に説明してくれた。


「はい、わかりました。神父様」


「君はヘクターさんとシェリーさんの息子さんだね。やっぱりしっかりしているね」


村の中で冒険者兼農家みたいな家は少ないし、開拓地時代からずっといっしょだから知っていて当たり前だよな。


ここでやる内容は母が以前言っていた内容と同じようだ。そしてもし魔力量が多すぎた場合は全員が解放の儀が終わったあとに封印するんだろうな。


最悪魔力量が多かった場合は逃げるか?って思ったがどこに逃げるんだ?そしてどうやって生きていくんだと思い、その考えをすぐにやめた。


「ではこちらの部屋に入ってね」


と言われ部屋に入った。


思ったよりも広い部屋で向かって左に机とその机の上に水晶がおいてあり、右側には魔法陣が書かれていた。


お~お約束の水晶か~そして人生初魔法陣!人生初というか前の世界も合わせても見たことないよ。


前の世界で魔法陣なんて書いてあったら、それこそ通報案件になりかねないよな。


趣味でやってますだったら問題ないけど、教会に書いてあったら炎上するだろう・・・


よし!やっと、やっとここまできたぞ・・・


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