第4話 現状把握

「シェリー!シェリー!帰ったよ!マーティーの熱はどうなった?もう上がったりしてない?」


知らない男性の声が聞こえた。ほんとうは知ってるのかもしれないが如何いかんせん記憶がない。


ここは赤ちゃんってことでなんとでも誤魔化せるだろう。


コンコンコンとブーツでも履いているような足音がだんだんと僕のいる子供部屋に近づいてくる。


「ヘクターおかえりなさい、今日は一度も上がらないで落ち着いていたわ」


「はぁ~よかった・・・今日は出かけたくなかったんだが、ごめんよ」


「大丈夫よ、村の仕事も大切だしあなたしかできないことだったんだから」


この2人の会話の感じからするとこの男性が父親だろう。


ヘクターと呼ばれる男性はかなり体を鍛えている感じでソフトマッチョ以上めっちゃマッチョ未満といった体格。


眉毛の上に薄くなった傷跡もあるが悪者といった雰囲気はなかった。


こちらも母親と思われる女性同様農夫や商人、行商人いうよりは猟師といった雰囲気をまとっている。


まぁあくまでも僕がそう感じたというだけのことだが、実はマフィアのボスだったりした面倒だよね。


「もう少し大きな子供なら栄養のあるものを食べさせられるんだが、シェリーが代わりに栄養をとってマーティーにおっぱいをあげてくれ」


ヘクターと呼ばれる男性が僕が忘れようとしている黒歴史を思い出させてくれた。こいつ悪い奴だ・・・僕の人を見る目もまだまだだな。


「さっき飲ませてあげたのよ、最初は飲んでくれなかったから心配したけど、ママのおっぱいが大好きなの思い出していっぱい飲んでくれたわ」


シェリーさん?いや母よ・・・それは思い出させないでくれるとうれしいのだが・・・そして言い方!栄養摂取だからね!仕方がなかったんだよ、緊急事態なんだから!


なんだろう・・・このダメージが少しづつ蓄積されていく感じ。。。


「そうか、それならシェリーは少し休んでくれ、俺がマーティー見ているから」


「大丈夫よ、マーティーがおっぱいいっぱい飲んで寝ている間は私も座っていたし、ごはんの用意もできているから温めるわね」


ちょいちょい黒歴史をいじってくるな・・・そして母であろう女性は部屋を出てて父であろう人のの食事の支度をするために部屋を出て行った。


「マーティー熱下がってよかったな~マーティーにはちょっと苦いかもしれないけど薬草と大好きなママのおっぱいたくさん飲んで早く治せよ~」


なるほど・・・母親決定か。。。そういうことならこの人が父親だろう、しかしこの世界は相手の黒歴史は少しづつ攻めろっていう習わしでもあるのか?


そうなのか?そうなんだろう?


しかし薬草?薬とかじゃなくて薬草なのか・・・大丈夫なんだよね?あまり記憶にないけど前の人生?含めて草食べたことないんだけど、この世界では普通なんだよね?


実は薬はあるけど買えないだけって可能性もあるよな。


薬を飲むより薬草とかが主流な医療体制なら前世ほど医療が発達していないんだろうか?


さきほど両親と決定した父親はまだ確定してないが、その2人の服装からみても前世のようなカラフルな服というか繊維を染めた感じではなく


元々の布の色そのままをつかっている服装をしている。


何かしらの動物の皮などを使った感じのブーツやズボンをはいているし母はシンプルなワンピースだった。


この家だけ特別貧乏でもないかぎり、転生先はまだいろいろな意味で発展途上なのかもしれない。



しかしこのほぼ父と思われる男性は顔に薄くなった傷跡があるがかなりのイケメン。


かなり体も鍛えていていい感じの筋肉をつけている。


顔の傷跡も含めてマッチョ系のアクション俳優と言ったところだ。


しかも坊主系じゃなくイケメン系ときている、かなりモテルだろうなあんなすごい美人の奥さんもいるしなんだろうこの気持ち・・・


なんだか黒いものが心の中に沸いてきてしまった・・・


そして母もかなり若い感じがしたが、この父もまだ若い感じがする見た目の感じだと20代前半といったところだろうか。


美男美女の夫婦か・・・前世の僕は普通だったと思う。特別注目されるわけじゃない、ごくありふれた言ってみればモブAって感じだ。


たまにセリフや主人公の後ろで声だけはする感じだと思う、思いたい・・・セリフぐらいあっていいよね?



いまの自分の置かれた状況を想像してみた。


自分=赤ちゃん、なんだか熱を出していたみたいで熱が下がったら記憶?というか転生のことを思い出したようだ。


美男美女の若い夫婦が僕の父と母、これぐらの年齢の人がみんな結婚していたりする世界でないなら


若い二人が駆け落ちして俺を生んだはいいけどやっぱり生活は楽じゃないって感じだろうか?


あまりにもこの世界、そして自分を含めて周りの人の情報が少なすぎる。


そのあたりのことも含めてどうせ体は赤ちゃんで動かせないし、しばらく様子見というか情報収集しかできないな。


そういえばあの暗闇の声の主が言っていた使い魔の黒猫?はどこにいるのだろうか・・・


この家の飼い猫とかでジャジャーンと登場してくれて、やぁマーティー気分はどうだい?


君の母親と父親には僕の声は聞こえてないから安心してくれってなったらラッキーだけどそうはならない気がしてならない。


なんだかこういうときの嫌な予感だけは本当によく当たる気がする、悲しいくらいに・・・



このまま子供部屋で寝ているだけの生活をあとどれくらい続けるのだろう?


この世界というか赤ちゃんってどれくらい歩ける?動けるようになるんだ?


この世界では3歳ぐらいで自由に歩けるようになって、5歳ぐらいには子供だけで自由に遊びまわれるなんてことはあるのだろうか?


前の世界でも自分一人で親に何も言わないで好きに歩き回れるようになったのって10歳?いや中学生になったぐらいだった気がする。


なんだかよく覚えてないな。なんだか思い出せなくなってきてる?


この世界に来たからだんだん忘れていくとかって罰ゲームみたいなことないよね?


異世界転生お約束知識チートとかできるんですよね?



前の世界では知らない人にはついていかない、知らない人に声をかけられた逃げるようにって言われてたような


その時はそういうものだって思ってたけど、よくよく考えると危ない世界だよな・・・。


知らない人についていくのはさすがにダメだけど、知らない人とはいえ声をかけられただけで逃げなさいってどんな世界だよ・・・


この世界も似たような感じなんだろうか?


しかもこの家に黒い飼い猫さんがいなかったらどうする?


どうするもこうするも探すしかないよな、でも探すとなると最低限歩けないといけない。


自分で歩けるようになって探すとなると何年後になるんだ・・・


それまでずっとこの状態なのか・・・


さすがにそれはないよね?暗闇の声の主さん?


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