第3話 目覚めた場所は?

真っ暗な中よくわからない声だけの存在(たぶん女性)によって勝手に送り込まれた先で


最初に目にしたものそれはとても美しく若い女性だった。


この人が天使って言われても信じるレベルだけど羽は生えてないな。


彫りが深く前世だとアジア系ではなくエスニックな雰囲気だけどヨーロッパ系も入っている。


ファッションモデルさんかそれとも女優さんって言われても信じるレベルのその美しい女性の顔が自分の顔に近づいてきている。


え?なに?めっちゃ顔近づいてくるんですけどちょっと待ってどうしたらいいの?


あれ?自分の体というか顔も動かないというか動くけど思ったように動かない?なんだこれ?


更にその女性は顔を近づいてきた、まじ待ってうれしくないっていえば嘘になるよ、でも今はとりあえず待ってほしい。


キス?キスしちゃうの?前世?ではもちろんそんなことはしたことがない、残念ながら・・・


それどころか人と話すことさえ自分の方から避けていたような気がする。


そして前世?含めても初めての~キス・・・と思った頃もありました・・・



その美しい女性は自分のおでこを僕のおでこにあててきて


「マーティー、お熱上がってないかな?よかった・・・もう熱は大丈夫そうね、本当によかった・・・」


マーティー?熱?あ~僕は体調が悪くて熱が出ていたのでそれを確認したってことかな?


それよりマーティーってたぶん僕だよな?ん~~考えろ~~


明らかに自分に向かって話かけられているけど、返事するのが正解なのか?


よしここはとりあえず話を合わせて状況を把握しよう。


しかしここで思わぬ問題が起こった、少し前までコミュニケーションを極力取らないように学生生活をおくっていた人間なので言葉がうまくでてこない。


まさかこんな時にそんな弊害へいがいが起こるなんて、うまく声がでないぞ・・・あれ違うな?


「あぅぁ、あ~ぁ~」


声は出た!だか言葉になっていない。


「マーティーおなかすいたかな?」


あれ?さっきの暗闇の中では声は出ていたような気もするし実際あの声の主と会話してたよな?


あ!念話か?いや念話は声の主で僕は声を出していたはずだ。



よし一度深呼吸してというか冷静になろう・・・


え~と暗闇の中で姿の見えないというか見せなかった声の主に新しい世界に送り込まれた。


そしてここはたぶんその新しい世界だろう。


しばらくは暗い中にいた感じだったがだんだん明るくなったら目の前にはとても美しい女性がいた。


体はいまだうまく動かせないというか天井が見えているから寝ているんだろう。


おでこをあててきて熱がどうだとか言ってたから体調が悪かったのかもしれないがなぜかうまく寝返りができない。


これは転移ではなく転生して赤ちゃん的な何かになってるパターンか?


「マーティ~おっぱい飲めるかな~?」


マーティー=自分、そしておっぱいを飲む・・・赤ちゃん確定か・・・転生か。


ということはこの美しい女性はたぶん母?いやなんだっけ乳母とかもいるんだっけ?


どちらにしてもこんな美しい女性のね・・・おっぱいとか・・・そういうのは前世?の記憶のない頃(赤ちゃんの頃)にした以来なのだよ。


いくら何でもいきなり転生して赤ちゃん?になってるのにこんなに意識がはっきりしているとかやめてくれよ。


しかし赤ちゃんってことは普通に食事をとれないんだよな?暗い部屋の中で結構な時間過ごしたような気がしたがお腹はすかなかった。


だが今はお腹が空いている・・・ん・・・これはこの世界で生きていくため、そう!栄養摂取のためので、恥ずかしいとか嬉しいとかじゃない、断じてない!


さっき熱がどうのこうの言っていたから何かしらの病気をしていたのかもしれないし栄養を取らないと


そうだ生きるため!体力も回復させなければならない!これは仕方がないんだ!嬉しいとかじゃない、断じてない!



「おいしいでしゅか~?」


お願いだ・・・聞かないでおくれ。それで変な性癖とかになったらどうしたらいいんだ・・・


「ママのおっぱいおいしいでしゅか~?」


たぶんマザーな人よ・・・聞かないでおくれ・・・言葉がうまく出せないのがこんなにうれしいと思う瞬間はきっと生涯ないだろう。


赤ちゃん時代の記憶がないのはいろんな意味でいい事なのかもしれないな・・・。


もし言葉が話せていたなら返事をしなければならなかった。ほんとよかった。



いろいろな意味で僕の新しい世界の扉(性癖)が開きそうだが強引に扉を閉じた、だが黒歴史は確実に刻まれた。


再びあかちゃん用の柵があるベットに寝かされている。


赤ちゃん用ベットに寝かされてやっと冷静になれたのだが、


僕のこの世界の記憶は、ほんの少し前のこの母らしき女性の顔が近づいてきたところからしかないのだ。


この生まれてきた瞬間という転生してきた瞬間みたいな記憶はなくてもおかしくないが


生まれた日から今のいままでの記憶がまったくないのだ。


これってこのマーティーって存在がこの世界にいたけど、僕が転生することによって体を乗っ取ったとかじゃないよね・・・


さすがにそれは勘弁してほしいのだが。。。そうしたら元々のマーティーの意識はどこに行った?って話だし、現時点では確認しようもない。


実は生まれてきた瞬間から前の記憶はあったんだけど、このタイミングで急に転生してきた記憶が戻ったということだろうか?それは都合が良すぎるな・・・


とりあえずは保留ということにしないと話が先に進まない。


自分の内なる部分にもう一つのマーティーの声がする~~~~ってこともないのでとりあえず保留にするしかないようだ。


マーティー居ますか?って自分に聞いてみたが返事ないしね。



まずは僕の今いる部屋の把握をしよう・・・


まだ寝返りがうまくできないし、首もうまく動かせないのでぎりぎり黒目を左右に動かしみる。


周りを確認・・・確認・・・確認。。。


自分がたぶん転生したであろう家はすごいお金持ちで貴族の三男的な感じはなく、かなり質素というか素朴な感じの家のようだ。


そういう世界なかもしれないが、それでも質素だと思う。


なぜならきらびやかな調度品などはなく自分が寝ているのが子供部屋?だからかもしれないがほんとに何もない。


そういう調度品などが嫌でシンプルに暮らしてますって感じでもない。


と言ってものすごく貧乏という感じでもない。なんだろう?まだ情報が少なすぎて判断するには早すぎるかもしれないな。


そしてたぶん母であろう人はかなり若くて美人だ。


もちろん個人の主観などもあるだろうけど前世?の街中で前から歩いてきたら間違いなく目を奪われるレベルではあると思う。


前世?だったらまだ結婚してないような年齢って言われても信じるだろう。


それこそ留学生ですって学生服を着ていても不思議じゃないかもしれない。


むしろじ~と見てしまうだろう。綺麗なだけでなく目を奪われてしまうような魅力がある。母なんですけどね。



そして先ほど【栄養摂取】をしている時に感じたが、手なども荒れている感じではない。


農婦といった職業ならもう少し手が荒れてマメの1つでもあってもいいような感じはした。


着ている服装は貴族って感じではなく、シンプルなワンピースを着ているだけである。


首飾りはしていないし、髪留めは長い髪の毛をまとめるだけの質素なものだ。


足元も何と言っていいのか皮で作ったサンダルって感じだった。



結局わかったことが少なすぎて判断できないことがわかったという悲しい現実だ。


赤ちゃんじゃなくせめて動き回っても問題ないぐらいの年齢で、ある日頭をぶつけたら記憶がもどった~


とかならそこからいろいろ調べて~~~~みたいな展開もあるんだろうが、ベットから動くことができない。


唯一の頼みの綱は言葉を理解できるということだ。


たぶんだが、いまの僕の年齢では本来は言葉は理解できないだろう。


赤ちゃん言葉?というのか、【あ~】とか【う~~】とかしかこちらも言えない。


あくまでもだが言葉はしゃべれないが理解はできるというのは、


転生者特典的なものか暗闇の声の主が行ってたスキルなのかもしれない。


そのあたりは急いで転生されたとはいえよかった点だ。他のことがあまりにも悪すぎるからよく感じるような気もする。


しばらくは周りの様子を観察しつつ、この部屋に来る人たちの会話を聞いて過ごすしかないな・・・


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