第3話 猫手川、小出毬の手際のよさに感嘆す
1
東の方から順番に、金貨のような
そんな折──
「あなたはこの物音に目を覚ましたんじゃない──」
猫手川の顔のすぐとなりで、
「よくもまあ、こんなに
「一体、なんなんだよ?」
その黒猫の『
エリーは
ばた、と、音がするたび、ベランダの窓が揺れ、エリーは迷惑そうに、あくびを噛みころした。
聴覚の発達した、同じ猫であるはずの
もっとも彼女は、
ばた、と、再び音がした。
「なんだ、これは……?」
猫手川が身を乗りだすと、ベランダの窓の向こうに、小さな影がいくつも、いくつも、
ばた、と、また音がして、小さな影が窓にぶつかった。
「……と、
「早く、中にいれてあげなさいな」
驚きを隠せない猫手川をよそに、エリーは
2
その鳥たちは、コアジサシであった。
コアジサシは、
そして、猫手川のベランダで山となって、
「我々の
「本来であれば、こちらが、我々の目指す砂礫であるはずなのですが……」
コアジサシは、チドリ目カモメ科に分類される鳥であり、
体長はおおよそ28センチ程度。小アジサシの名のとおり、アジサシ類のなかではいちばん小さい。大きな
「我々渡り鳥が行き先を見失うことなど、あるはずもございません」
そうだ、そうだと、傷つき、疲れたコアジサシたちも、同意を示して
「しかしここは、僕の部屋で、
猫手川の部屋は、小高い丘のうえに建つ洋館の二階にある、賃貸住宅であった。
埋め立て地であるはずもなく、また、この先、海に
エリーは傷ついたコアジサシの手当をしながら、その手を休めることなく、言った。
「
「極?」
「そう。体内に古い
渡り鳥をはじめ、長い距離を移動して生きている動物や、魚たちは、その体内に
そのせいで、
「どうすればよいのでしょう……」
群れの長は、
「コンパスがあればいいんじゃないかなー?」
エリーのとなりで、かいがいしく
「そうね。あとは地図があれば完璧でしょう」
と、エリーはそれに同意した。
「地図はともかく、うちにはコンパスなんてないな。お店が開くまで、コアジサシさんたちには、うちにいてもらうしかないか……」
「コンパス~、コンパスはいらんかね~」
「あっ、コンパス屋さんだ!」
「コンパスはいらんかね~。いまなら渡り鳥用ストラップのおまけ付きだよ~」
「いたれりつくせりね」
「…………」
コンパス屋さんの引くリアカーには、
「ひとつ、ください」
「あいよっ。どれでも好きなのもってきな」
とはいえ、猫手川にはコンパスの良し悪しはよくわからない。一見しただけではどれも同じく見えるコンパスの山から、てきとうに、ひとつ、手にとった。
「
「あっ!」
と、猫手川は声をあげた。
「これ、針がおちてる……」
「そんじゃ、別なのもってきな」
「はい。ありがとうございます。じゃあ、これはお返しします」
「やるよ」
「…………」
───はぁ?
「コンパス、買ってくれるんだろ?」
「あ、はい……」
「じゃあ、やるよ。おまけってやつだ」
「でも、おまけは渡り鳥用ストラップじゃあ?」
「それもやるよ」
「いえ、これはお返ししま──」
「やるよ」
「お返しし──」
「やるよ」
「…………」
コアジサシの長は地図を
手当も済み、休息も十分にとったコアジサシたちも、群れの長につづいて次々と飛び起つ。菫色もほど薄くなった橙色の空には、躍動する
やがて空の色は、
「さて、もうひと眠りしようかな?」
猫手川は、エリーと橘みやびとともにベッドにダイブして、また眠りの航海へと乗りだしたのだった。
猫手川がそれに気がついたのは、二度寝という、
この洋館の二階、猫手川の部屋には、リビングと、寝室、そしてもうひとつ、部屋がある。
そのリビングには、つい数時間前まで、コアジサシの群れが
部屋の
「……なにを、しているんだ…?」
猫手川は、つぶやくように言った。
コアジサシは、るんるん、と、
「これは猫手川さま。『
「いや、それはほんとうに、ありがたいけど──」
「そうでございますか? お役に立ててなによりです!」
「いや、ありがたいんだけどさ、もう、とっくに飛び起ってるぞ、お前の群れ……」
「ええ、ええ。そうでございましょうとも」
「だ、大丈夫なのか? 群れがうちからでていったの、もうずいぶん前のことだぞ。ちゃんと合流できるのか?」
「ええ、ええ。そうでございましょうとも。もうとっくに飛び起っておりますでしょうとも……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……はっ⁉」
びくり、と、はぜるように、コアジサシは
ゆっくり、ゆっくりと、顔をあげて、猫手川を見つめるそのつぶらな
猫手川は、そっと、視線をおとした。
「い、いま、なんとおっしゃいましたか……?」
コアジサシはおずおずと、しかし、
「群れは、飛び起ったと……、そ、そう、おっしゃったのですか……?」
ゆっくりと首をめぐらし、あたりの静けさを確認すると、コアジサシは真っ青な顔をして、かたかた、と、くちばしを
猫手川は、いたたまれない気持ちになった。
この真実を、伝えていいものなのだろうか、と。
どうせ、すぐにわかってしまう。いや、あるいはもう、このコアジサシも理解しているのかもしれない。けれど、それを自分の口から伝えるのは、あまりにも、しのびない気がした。
「あれー、コアジサシちゃんまだいたの? みんなとっくの昔に飛んでっちゃったのに。もしかして、置いてかれた?」
「ぐはっ!」
名前の通り、優雅な
「ねー、猫手川くん、お腹すいちゃったよー。コアジサシちゃんも一緒に食べていけば? どうせいまからいっても間に合わないでしょ?」
「お、お前はっ!」
「おっ、おっ……、おっ……おっ──」
鳥の囀りにしては、およそ似つかわしくない低い声をあげて、びくり、びくりと
「だ、大丈夫か……?」
「おっ、おっ……、おっ──」
「な、なにかいいたいことがあるのか? ゆ、ゆっくり、ゆっくりでいいんだぞ……」
この時、猫手川は、はじめて鳥の背中をさすった。
「おっ、おっ、おい、おっ……、おっ──」
「だ、大丈夫? コアジサシちゃん! しっかり!」
この時、橘みやびは、はじめて鳥の肩をつかんで、そして、ゆさぶった。
「おい、おいっ……、おい──」
コアジサシはもう、
うん、うん、と、辛抱づよく、コアジサシの言葉をうながしながら、猫手川と橘みやびの双眸にも、
ふたりの見つめるなか、コアジサシは
「置いてけぼりにされましたぁーー‼」
と、
猫手川と橘みやびは、
絶望的です──と、コアジサシは囀った。
「私は、その砂礫の場所を知らないのです……」
そうして、ぐすっ、と、鼻をすすった。
「そ、そうか……」
───どうにかしてやりたいけど……。
猫手川は、すがるようにエリーを見た。
いまだ、ベッドのうえで、こちらに背を向けてまるくなっていたエリーは、
「うちに住めばいいじゃない」
こちらに向き直りもせず、そう答えた。
「はぁ⁉」
「いいじゃん!」
「よ、よろしいのですかっ⁉」
「い、いや、その、なんていうか……、っていうか、お前、起きてたのか?」
「見ればわかるでしょ? 寝てるわよ」
エリーはまた、身動きひとつせずに、そう言った。
「あ、ありがとうございます!」
コアジサシは、そのつばさで猫手川の手をつつみ、何度も、何度も、頭をさげた。
「あ、あの、ちょっと──」
「決して、ご迷惑はおかけいたしません。日々の
コアジサシはそう囀ると、さっそうと窓から飛びだしていった。
「あの……、ちょっと……、コアジサシさーん……?」
数十分後──
コアジサシが帰ってきた。
「おかえりー」
出迎えた橘みやびが、ひやっ、と、小さな悲鳴をあげた。
「は、はまちっ!」
「はまち⁉」
コアジサシのくわえたそれは、見れば、
「ええ。ちょうどよく、でくわしたもので」
「…………」
───アジは?
「お、お前たちは、アジをとるんじゃないのか?」
「はい。アジも好きですが、おさかなはどれも好物です!」
威勢よく、びちびちと
「
猫特有の瞬間移動を駆使して、
「大きくなる
「ああ」
「じゃあ、はまちがもっと出世したら、何になると思う?」
「
「いいえ──」
エリーは答え、
「大抵は、お刺身かお寿司か焼き魚になるの」
じゅるり、と、舌なめずりをした。
コアジサシの新居は、
「じゃあ、人間は、最後まで出世したら、何になると思う?」
「えっ?」
「いくわよ」
と、エリーは歩きだした。
3
少しの
猫手川は森のなかを歩いている。
自然環境保護区という、深い森のなかだった。
あれほどに晴れて、雲ひとつない青空も、森のなかでは緑に融けて、あたりは
さわやかな季節だった。
緑の香気が、胸いっぱいに吸い込まれて、
踏みしめる土は、ふかふかと柔らかく、良質な
相変わらず、猫手川は、なにも知らずに歩いている。
エリーと橘みやびは、その
帰ったらお風呂に入れてやらなくてはならない。猫手川は憂鬱にそう思った。
ふと、
「人間は出世したら、何になるんだ?」
エリーの言いたいことは、きっと、ありきたりな答えではないのだろう。
また、ありきたりな答えを、期待しているはずもなかった。
なぜなら、エリーや
「
と、エリーは言った。
「まあ、この場合は『
そうして、エリーは、しぃっ──と、
ざあざあと、樹々の
静寂のなかで、そのざわめきは、時を追うごとに、大きくなってゆく気がした。
一瞬、無音のうちに思考は消え去り、視界はぐるりと景色の
その瞬間、思考はまた、頭の内側で、現状を描写しはじめた。
無音の
樹々がざわざわと鳴っていた。
「あなたには聴こえないかしら?」
エリーは
「……何が?」
「この
「……鈴?」
「聴こえる……」
橘みやびは、ぴんと耳をたてた。
りーん……、と、かすかな音がした。
それは、どこかで鳴る
「いくわよ」
と、エリーは歩きだした。
「こっちだよ、猫手川くん!」
さすがは猫、と、いうべきだろうか。
ふたりにつづいて、歩みをすすめると、鈴の音はますます明確に、大きく聴こえてきた。
りーん……、りーん……、と、どこかで鳴る、鈴。
りーん……、りーん……──
一行は、はた、と、立ち止まり、その透き徹るような鈴の音に、しばし聴き入った。
「いい音だねぇ」
「ああ、そうだな」
それは
「……あんまりゆっくりしてはいられないみたいだわ」
と、エリーは言った。
「どういうことだ?」
「いけばわかるわ」
エリーは言い、一行はまた、歩きだした。
りーん……、りーん……──
りーん、りーん──
近づいてきている。
りーん、りーん、りーん──
りーん、りん、りん、りん、りーん──
りーん、りん、りん、りーん、りん、りん、りーん、りん、りん、りん──
りんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりんりん‼
「うるさいっ!」
「何なのっ! この鈴の音っ!」
橘みやびは、耳をふさいでうなった。
「この下よ」
と、エリーは地面を指さした。
「えっ?」
「掘りなさい!」
言うが早いか、エリーはすぐさま、耳をふさいだ。
「えっ?」
───ええー…。
猫手川は、
土を掘りはじめてすぐに、この場所の土が、あたりの土とは違うことに気がつく。
おそらく、一度、掘り返されている。
人が横たわるに、充分なほどの大きさで。
「スコップでも、もってくればよかったな……」
「…………」
「…………」
返事は返ってこなかった。
ふたりは早々に耳をふさいで、ここから離れた樹のうえにいる。
「スコップでももってくればよかったなー!」
「スコップ~、スコップはいらんかね~」
「スコップ屋さん⁉」
スコップ屋さんの引くリアカーには、たくさんのスコップが並んでいた。
「ありがたい、ありがたいです! スコップ屋さん!」
「どれにする? この金のスコップか、この銀のスコップか? それともこの
「…………」
超高性能携帯型マイクロスコップにした。それは見る限りごく普通のスコップであったが──
「たたむとSUICAサイズになった⁉」
「毎度~」
「ありがとうございます! あ、あのー……」
「どうしたいっ?」
「コンパス屋さんは?」
「やめたよ」
「はい?」
「ありゃあ、店じまいだ」
「な、なんで?」
「……売れねえんだよ」
まあ、そうだろう。と、猫手川は思った。
「そ、そうですか。ずいぶんと早い店じまいで……」
「早いだあ? コンパス屋はなあ、
「そ、そうですか。まあ、気をおとさずに……」
───金魚鉢屋さんはまだやってるんだ……。
しばらく掘りすすめると、こつん、と、なにかが、超高性能携帯型マイクロスコップにあたる音がした。
りんっ、と、鈴の音が止んだ。
鈴の音と入れ替わりに、地中からは、くぐもった、
ある程度、予想はしていたが……、
「だれか、いる……」
「早く助けてあげなさい」
音もなく、樹上から降りたった、エリーが言った。
地中には、
超高性能携帯型マイクロスコップに
森をでた近くの公園で、猫手川の買ってきたハンバーガーをむさぼり
ポテトを頬ばり、骨付きチキンとともに炭酸飲料で流しこむと、まだ満たされない、シェイクが飲みたい、と
「ボク、チーズバーガーおかわりで」
「食後のコーヒーを
「…………」
シェイクを飲み干して、ようやく落ち着いた男は、ぼそぼそと、しゃべりだした。
「
と、袈裟姿の男は言った。
「即身仏⁉」
「そうだ。しかし、叶わなかった……」
男は苦渋の表情を浮かべた。
即身仏とは、
この男は、さぞかし
「なぜ、即身仏になろうと、お考えになったのですか?」
猫手川はたずねた。
袈裟姿の男は、
「だってさー、うちの坊主どもがさあ、俺には絶対そんなの無理だって言うからさー、俺、頭にきちゃってさー、じゃー、やる、つって」
「…………」
───はぁ?
「そうしたらさー、やつら、すぐ埋めやがんの!
「……ちなみに、いつから埋められていたんですか?」
「ん? ああ、かれこれ半日くらい? でもさー、俺がひょっこり帰ってきたら、あいつらビビるだろうなー。仏は言い
「帰りましょ」
と、エリーは言った。
4
菫色が紫色に融けて消える。
「お腹もすいたし、もう、くたくただよ……」
猫手川が肩にかけたトートバッグのなかで、橘みやびは弱々しく言った。
少し遠出をする時には、必ずもってゆく、猫運搬用トートバッグだった。
「もうすぐ着く。というか、一番疲れているのは、間違いなく僕だぞ……」
無益な遠出に、穴掘り。行き帰りに、猫ふたり分の
身体は泥だらけで、腰が非道く重かった。
そんなおり、突然、ひょこっとバッグから顔をだしたエリーは、ふんふん、と、鼻を鳴らして、
「うにゃあ!」
トートバッグから飛びだした。
そうして、そのまま、走っていった。
「……エリー?」
「エリちゃん、どうしたんだろう?」
橘みやびは首をかしげた。
「……はっ!」
「ど、どうした?」
「このにおいは……」
えいっ、と、橘みやびはトートバッグから飛びだし、エリーと同じように走っていった。
「……あいつら、どうしたんだ?」
首をかしげてたたずむ猫手川の、視線のその先──
小高い丘のうえに建つその洋館の玄関先に、もくもくと、煙があがっていた。
見れば、エリー、
その中心には、
このエプロン姿の女性、小出毬は、猫手川の住むこの洋館の
「あら、猫手川さん、おかえりなさい。今日はずいぶんと遅かったんですね?」
「ええ。まあ、色々とありまして……」
「ああ、それより、ごちそうさまでした」
と、小出毬は
「え?」
「はまち、おいしかったです!」
小出毬は、にっこりと
そういえば、あのはまちは食堂の冷蔵庫に置いてきたのだった。
「わたしが
と、小出毬はウインクをした。
「コデマリさん……」
なんてかわいらしい人なのだろう。
と、猫手川は思った。
そのうえ、あの特大はまちをあっさり捌くほどの料理の腕前。
小出毬は、一流シェフ顔負けの料理の達人でもある。
「あっ、そういえば──」
と、小出毬は手をたたいた。
「宇宙がどうしても、猫手川さんのお部屋に遊びにいきたいというもので、つれていったんですけどね。お部屋に鳥さんがいまして、猫手川さんの新しいお友達なのかなーと思って、ちょうどあまった木材があったので、鳥小屋をつくってみました」
「え?」
「あ、あの……、もし、お気に召さなければ、捨ててしまってください」
「い、いえ、そんな! きっとコアジサシも気に入りますよ! 僕はそう、断言します!」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ!」
「気に入っていただけたら、嬉しいです……」
お部屋に置いてありますので、と、小出毬は言い、はにかんだように頬を赤らめた。
───ほんとうに、なんて、かわいらしい!
「と、ところで──」
と、猫手川は、先刻よりの疑問をたずねた。
「なぜ、このようなことになっているのでしょう?」
実のところ、小出毬との会話中、ずっと、猫たちが色めきだっている。
小出毬と猫手川を中心に、輪をつくった猫たちは、もうもうと煙をあげている
「ああ、これはですね、かつおを
「かつお節⁉」
「ええ。猫手川さんのお部屋にいった時に、とれたてのかつおが、テーブルのうえで跳ねていたので」
「テーブルのうえでっ、かっ、かつおがっ⁉」
「ええ。きっと猫手川さんのうっかりだと、そう思いまして、すぐに捌いて、ひと
「いいえ! そんな
「よかった……」
小出毬は安心したように微笑むと、集まった猫たちに、小さなおにぎりを配って歩いた。
「まだ身の付いたはまちとかつおのほねを、かりかりに
猫たちは、うにゃうにゃと、のどを鳴らして
「あっ、それから、今日は大浴場に、
「コデマリさん……」
───あなたをお
願わくば、と、思わずにはいられない、猫手川だった。
猫手川がそれをはじめて見たのは、はまちのフルコースを
この洋館の二階、猫手川の部屋には、リビングと、寝室、そしてもうひとつ、部屋がある。
その部屋は、普段、
「猫手川さま、おかえりなさいませ」
その物置部屋から、コアジサシが、ひょっこりと顔をだした。
「ただいま。はまち、おいしかったよ」
「それはなによりでございます」
コアジサシは丁寧に、ぺこり、と、頭をさげた。
「かつおも、お前がとってきたのか?」
「ええ。ちょっと
「はぁっ⁉」
「少しほねが折れました」
「そ、そうか。え、えらいぞ! 明日はかつおパーティーだってさ。お前のおかげで、みんな喜んでたみたいだぞ」
「あっ、ありがとう……ございます……」
コアジサシは双眸を潤ませていた。
「私、こんなにほめられたのってはじめてです! それに、こんなに素敵なお家までもらってしまって」
「ああ、コデマリさんのつくった鳥小屋か。どんな感じなん──」
猫手川は、しばし、
その鳥小屋は、本格的な
「ね、素敵でございましょう!」
と、コアジサシは上機嫌に囀った。
「…………」
───なんか、だんだんノッてきて、気がつくと、想像以上のものができちゃってることって、あるよね……。
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