第5話

「 あ。」


それでも1つ思い出した事があった。


私は昨日1年付き合った彼にフラれたんだった。

悲しくて、寂しくて…お酒を飲んで…



「 何か思い出した?」


アーモンド型の茶色の瞳で覗き込んでくる彼に、布団で体を隠す手にキュッと力が入った。



「 …別に何も。あなたの事も何も思い出せないの。迷惑かけてたらごめんなさい。」


恥ずかしさも相まって、毅然とした態度でそう言うと

彼はふわふわと笑って


わたしの頬をするりと撫でた。



「 もっかいシたら思い出すかな?伊織ちゃん。」



何も思い出せないけど、彼のことでわかった事がある。


この男はめちゃくちゃ遊んでいるんだろうな、ということ。

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