第8話
車列は街の周りを一周する。城下町の様な作りで街の周りを高さ5メートルほどの壁で囲まれている。
そして、大きな門が2箇所あった。
「此処は潰せ。
トラック一台潰してよし。燃料とバッテリー抜いておけ」
「い、良いのですか?」
「良いんだ。どうせトラックなんざ二、三日すりゃ完成する。兵站部には怒られるがな」
ベイクドもちょちょの言葉にチームリーダーは頷きトランシーバーで何かを指示した。脇にいたトラックが門に横付けされ、兵士たちが降りてトラックのバッテリーや燃料を抜き始める。それからジャッキで車輪をあげてタイヤを外した。
それらを脇のトラックに載せ、彼等は合図をする。
「んじゃ、正門回って中入るぞー」
周りを取り囲んでいていた車列は正門に向かう。
「おーい、この門開けろよー」
「何だ貴様等!」
「知ってるだろーが。
早く門開けねーと門ブチ破るぞー」
ベイクドもちょちょは合図をすると使い捨ての対戦車ロケットランチャーを構えた兵士達がやって来た。
「やれるならやって見ろ!」
「オッケーが出たぞ」
ベイクドもちょちょは驚いた顔をし、それからニヤリと笑うと合図を送る。するとロケットランチャーを構えていた兵士達は門の蝶番目掛けて発射、全弾命中して門扉は吹き飛んで行った。
「おーし!
中に入れ!先ずは冒険者ギルドと軍事拠点だ!行け行け!」
ベイクドもちょちょはスピーカーで叫ぶと車列が猛スピードで街の中に突入して行く。城壁にいた兵士たちが弓矢を射ろうとして銃撃を食う。
「これで後には引けねぇな」
「何を隠してるのか、ですね」
ベイクドもちょちょの乗る装甲車は冒険者ギルドに向かう。冒険者ギルドは既に兵士たちにより制圧されていた。
「あーここが冒険者ギルドか。
行ったことねーけど、古き良きヨーロッパの飲み屋みたいな場所だな」
えぇ?とベイクドもちょちょは床に伏せさせられたら冒険者達を尻目にカウンターに向かう。
カウンターにはラターシャが居た。
「よぉ、ラターシャ。俺はショックだぜぇ?
お前等さぁ ひどいよ。なんで俺に嘘ついちゃうの?悲しいじゃん。俺もちゃんと約束守るつもりだったのによぉ?
俺の部下を日没までに返せばお互いに何もしないって約束したもんな?
なのになんでこんな真似すんの?嘘つかれたらお前等のこと助けてやれないよ。
もう殺すしかなくなっちゃったよ」
ベイクドもちょちょの言葉に周りの兵士達は槓桿を引っ張って威嚇する。
「お、お待ちください!!
冒険者ギルドはこの件に付いては最早関与していません!領主様の扱いなのです!」
「だから?
俺はお前等と話してんだ。お前等からの遣いも来たし」
「遣い?我々はその様な者送ってはいません!」
ベイクドもちょちょは眉を顰めると、外から兵士がボスと叫びながら入って来た。
「城から通信で、あの遣いがゲロりました。
仲間は領主の城に監禁されているそうです。武器装具その他全てに興味があるらしく拷問を交えてお話中、と」
「使者を殺して外に捨てておけ。
全員、領主の城を攻める。俺の可愛い可愛い部下達に拷問してるらしいじゃねぇか。
そんなに銃の威力を知りたいなら、見せてやろうじゃないか、なぁ!?」
ベイクドもちょちょはヘルメットを被り、外に出る。
「全員の拘束を解け。
領主の城はどれだ?」
脇にいた冒険者らしい少女の襟首を掴み指をささせた。
「あの城だな?
よし。ありがとさん」
ベイクドもちょちょは無線機の送受信機を取る。
「全員街のど真ん中にある城を落とす。
あそこに俺達の味方がいるらしい。抵抗する奴は全員殺せ。
以上だ」
ベイクドもちょちょは行けと合図を出し装甲車に乗り込んだ。
車両は続々と城を目指して走り、途中で剣や槍を構えた兵士達が現れるが全て車上からの射撃で慌てて道を開ける。
「兵士は極力殺すなよ!
基本的に攻撃されるか、こちらの降伏勧告無視したらだ!」
無線で告げ、城門前に着くと兵士達が素早く展開する。
「何だ貴様等!
此処はこの街の領主アクダープリ様の城だ!」
騎士の様な格好をした男が剣を抜き放ち、ベイクドもちょちょ達を威圧した。
「此処に俺達の仲間捕まえてるんだろぉ?
日没までに俺の部下を俺の城まで届かないと街を焼くってギルドにゃ言ったんだ」
「貴様があの怪しげな連中の親玉か!」
「降伏しろ。命だけは助けてやる」
「抜かせ!貴様「じゃあ死ね」
ベイクドもちょちょは火炎放射器のノズルを騎士に向け燃料を噴射する。燃料は一瞬で騎士の顔や鎧の内側に侵入してその皮膚や布などを融かす。
「ぎゃあぁぁぁ!?」
「おー痛そう。
突入!突入!」
ベイクドもちょちょは笑いながら指示を出し、兵士達は銃を構えて中に入る。それから武器を捨てろと言う声と銃声が轟き始める。
ベイクドもちょちょは悠然と中に入り、中庭の見事な植木に炎を吹き掛ける。それから中に入り制圧済みの部屋に火炎瓶を放り込む。
「ほーら、燃えろー
少し早いがキャンプファイヤーだ」
部屋に次々と火炎瓶を放り込んで行く。兵士達が投降しろとか武器を捨てろとか叫び抵抗しない奴は両手を上げて城の外に走れと叫んでいた。
ベイクドもちょちょの脇をメイドや執事等が走って行く。
そして、兵士が駆け寄ってくる。
「ボス!
仲間達が居ました!全員、怪我はしてますが無事です!」
「おーし!城に連れてけ!飛ばせばまだ閉門に間に合う!」
「はい!」
兵士はトランシーバーで何処かに指示を出すとベイクドもちょちょの後ろに着く。
「ボス、自分が一時的に通信兵をやります」
「おう」
兵士が何かやり取りをしながら歩く。ベイクドもちょちょの位置を定期的に告げているのだ。
「さて、城主は?」
「現在捜索中です。
思いの外、城の内部が広く調べ終わった区画事燃やしていますが……」
「んだよー
めんどくせーな俺が外から燃やすか?」
曲がり角を曲がると、机や箪笥などで防壁が作られていた。奥には弓矢やクロスボウを構えた敵の騎士達が居た。
「お、あそこの奥じゃね?」
「ですね。
増援呼びます」
「おう」
ベイクドもちょちょはノズルを向けながら叫ぶ。
「今すぐ投降したら命は助けてやるぞー!」
返事はクロスボウの矢だった。矢はベイクドもちょちょのヘルメットに当たり弾かれる。それに呼応する様にベイクドもちょちょは火炎放射器を吹く。
「おーおー焼死っては嫌だなぁ!
うははは!!楽しいなぁ!良いぞー!対抗しろ!生きた人間焼くのは久しぶりだ!!」
ベイクドもちょちょは燃え上がる防壁を蹴り壊し、脇で燃え上がる騎士達を踏み越えて奥にある扉にドロップキック。その質量で扉が破れた。
「ボス!
アンタの炎が強過ぎてそっちに行けない!直轄チームが向かってるから合流してくれ!
クソ!アチィな!」
「おうよ!
火傷すんなよ!」
「了解ボス!」
障壁の奥にいた兵士は何処かに走り去っていく。
ベイクドもちょちょは改めて入った部屋を見渡す。そこはちょっとした謁見の間のような作りになっており、騎士達が剣や槍を構えていた。その奥に上等な服を着たデブの男が1人いる。
「き、キサマァ!!ここを何処だと、お、思っている!!」
デブが顔を真っ赤に叫ぶがベイクドもちょちょは笑うだけだ。
「降伏しろそうすりゃ命だけは助けてやる」
そして、お決まりの文句を言いながらノズルを向ける。
「殺して「そーかい」
言い切る前にベイクドもちょちょのノズルは火を吹いた。
休日に花壇で水をやる中年の様な気軽さで死を撒き散らす。大炎上の謁見の間には悲鳴を上げようにも兜を通して顔面に着いた炎のせいで声帯を焼かれ、もがき苦しみながら死んでいく。
ベイクドもちょちょはそんな城主と騎士達を尻目に玉座の様に置かれた少し簡素な椅子に腰掛けた。
「ボス!探しましたよ!」
消防士等が切る様な耐火服を纏い、火炎放射器とアサルトアサルトライフルを無理矢理くっつけた様な銃を持ったチームリーダー達がやって来る。
「おっすー
城主は殺した。俺の勝ち。何で負けたか来世で反省して下さい。
ほな、帰ります」
「撤収!」
チームリーダーが指示を出すと無線機を背負ったメンバーが全員に対して撤収と叫ぶ。
ベイクドもちょちょは火炎放射器で燃料だけをぶちまけて行く。
「この城を燃やすぞー」
ベイクドもちょちょは高笑いと共に廊下に油を撒き散らしながら歩いて行く。領主の屋敷はベイクドもちょちょの撒いた燃料のせいで丸3日燃え続け、基礎と石壁、煉瓦造りの暖炉等しか残らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます