第7話
冒険者達はすぐに帰って行った。
ベイクドもちょちょはそんな冒険者達を見送り、昨日の作業を再開しろと命じる。
「弓矢とかあったっけ?」
「有りますよ。
滑車付きの弓やクロスボウ等、初期の頃サプレッサーが足らず偵察隊用に揃えたのが大量に有ります。
矢もかなり有ります、細部は兵站部が押さえています」
「おっけー
今後オレ達はこっちの世界と文化的な交流しなくちゃいけなくなる。
各部の隊長を作戦室に集めろ」
「分かりました」
ベイクドもちょちょは作戦室へ向かう。作戦室には各階級の長が集まり始めていた。
「ボス、こりゃ高度に政治的な何たらかんたらって奴ですかい?」
「俺はそこまで高度な政治的な所に首なんか突っ込みたかねぇぞ。
寧ろ、表面上のお付き合いだけだ。面倒ごとは金のやり取りを通してだ」
「信用の視覚化って奴ですな」
「その通り。
それよか、物資の在庫だ。あっちにいた頃と何が変わった」
ベイクドもちょちょは兵站部を統括している男を見る。
ゲームの頃は時間で資源が貯まる様な設備を作っていたので食料や弾薬等が自動で溜まりゲームの頃は日々消費量が生産量をかなり下回っているのでかなりの備蓄にはなっている筈だ。
「はい、兵站部は今の今まで在庫の確認をしましたがナイトメアが一年続いても余裕で耐えれます」
「生産量は?」
「現状非常事態故に全力生産しています。
生産に関しては今まで通り異常無く生産可能になっています。武器弾薬、食料に付いても滞り無く」
「なら、通常生産に戻せ。
当分は外部からの補給は必要無い、そう認識していても大丈夫だな?」
「はいボス。
現状維持が出来ているならば補給は必要ありません。
なんなら、MREならばダース単位で売るほどあります」
兵站部代表の言葉に全員が笑った。
「そりゃ良い」
「あんなもの売ったら敵対行為と思われませんかボス?」
「ラターシャとか言った女は美味い美味いと食ってたから平気だろ。
知らんけど」
売り捌けるように準備しておけとベイクドもちょちょが告げると代表は頷いた。
「それと、向こう側の連中にこっちの情報は一切漏らすな。
派遣した奴等もふざけ倒してると思うがな」
「寧ろ、そのせいで余計に話が拗れそうですぜボス」
警備隊長の言葉にベイクドもちょちょは笑う。
「そうなったらそれで、戦争だ。
我々はクリーナーズ・ワールドは世界を浄化する。我々は我々の秩序を持って世界を浄化する。
魔物共は全部殺す。魔物を擁護する奴も殺す。犯罪者も殺す。
銃口が向けられるまでは紳士的に行こうじゃ無いか」
ベイクドもちょちょが告げると全員が頷いた。
「しかし、弓矢だの剣だの持ってる相手に銃は些か過剰すぎでは?」
「だから基本的に城の守りと別事した時以外は俺たちもクロスボウと弓矢で行こうじゃ無いか。
一杯あるんだろ?」
「はい。全員に両方配って矢も100本づつ配ったって余ります。
クロスボウはTac-15モデル、弓に関しても矢の他に鉄球も撃てますし、スリングショットもあります」
「
俺は着ないぞとベイクドもちょちょが眉を顰めると兵站部代表は苦笑する。
「そっちじゃありませんボス。パチンコの方です」
「そっちか」
「ええ。それにボスがスリングショット着て喜ぶ奴はこの城に居るとお思いで?」
兵站部代表の言葉に全員が違い無いと笑う。
「ふざけんな!1人ぐらいいるだろう!」
なぁ?とチームリーダーを見るがチームリーダーはわがままを言う妹を見る様な笑みを浮かべるだけだ。
「絶対居る!」
それから情報の整理を行い時計を見ると昼になりかけていた。
「メシの準備が出来ましたボス」
「じゃー飯だ。
日没迄に帰ってこなきゃ夜襲を掛ける。攻撃要員は飯食ったら寝ておけ。楽しい楽しいピクニックになるぞ。
いやー帰ってこないと良いなぁ!」
ベイクドもちょちょは中庭で並んでいる列に並び昼飯を取る。それから作戦室に戻り時間までゴロゴロしていた。
火炎放射器とKS-23スーパーショーティーの手入れをし、寝転がる。眠気などは無い。飯を食う必要も無かったがつい習慣で食べている。
睡眠も食事も必要無い。だが人として生きてると言う実感だ。
目を瞑り、ジッとする。それだけで心は安らぐ。
「失礼しやすボス」
作戦室の扉がノックされ、警備隊長が入って来た。
「どした?」
「それが、冒険者ギルドからの遣いがやって来ました」
「なに?」
時計を見ると日没まで後2時間だった。
「中庭に待たせてます」
「おう」
ベイクドもちょちょ達が中庭に向かうと警備の兵士達いびられているギルドからの遣いらしい男が立っていた。
「何の用だ」
「あ、貴女がベイクドもちょちょさんですか?」
「そうだ。
何の用だ」
ベイクドもちょちょは椅子に腰掛け男を睨む。
「私は冒険者ギルドの「おいおいおい、コイツ耳が付いてないのか?なぁ」
「見たいですな。
ボスはお前の名前なんざ興味ねぇんだ。用件に興味があるだ。
俺の言ってる事理解してるか?」
警備隊長が男の頭をコンコン叩く。
「よ、要件につきましては、貴女方の部下達が乗ってきた馬車がわ、我々の手違いによって、運行が出来ない状態になりまして」
「だから?」
ベイクドもちょちょはナイフで自身の爪を掃除しながら男を見た。
「で!ですので、あの、本日の日没までに貴女の部下が帰るのはとても「だから、なんだ?」
ベイクドもちょちょはナイフで爪掃除を辞めると警備隊長を見る。
「俺はギルドの連中に何て言ったか覚えて無い様だから教えたやってくれ」
「はいボス。
日没までに我々の仲間をこの城に帰らせる、だ。あと2時間切ってるが歩くとどんだけだ?」
警備隊長がチームリーダーを見た。
「歩きだと大体3時間ほどです。
12から15キロ程ですね」
「そうか。
なら、俺達もお前達の街を焼く準備しなくちゃなぁ?」
ベイクドもちょちょは笑うとチームリーダーはハイと頷き焦土作戦だ!と叫んだ。周りの兵士達は歓声を上げた。
「お、お願いします!
我々の手違いとは言え!」
「知らねぇよ。
俺達はお前等の約束を守った。だからお前達も無事に俺の可愛い可愛い部下達をこの城に返すだけで良い。
そう言う約束で今朝方お前の同僚を返した。違うのか?」
「そ、それは「違うのか!違わないのか!イエスかノーだろうが!」
ベイクドもちょちょが机を蹴り上げると男はヒィと尻餅を突いた。
警備隊長がベイクドもちょちょに耳打ちする。
「トラックが壊れたぐらいで帰って来ないってのはどうも怪しいですぜ」
「ああ、なんか裏あるな。
取り敢えず、コイツを尋問しろ。多少乱暴にしたって構わん」
「了解。
アンタ、まだ何か隠してるっぽいなぁ?ちょっと詳しく話聞こうか」
警備隊長が男の肩に手を置くと無理矢理引っ張り起こす。そして、止めてくれと叫ぶ男の顎を殴り付けて気絶させると中に運んで行った。
「取り敢えず、今から出るぞ。
細部が分かるまでは攻撃を仕掛けないが内容によっちゃ、火の海だ」
チームリーダーは頷くと出撃と叫ぶ。それに合わせて城のサイレンが鳴り、全員が飛び出て来ると車両やバイクの準備を始める。
ベイクドもちょちょは前につけられた一台の軽装甲車に乗り込んだ。
「お前等!
どうやら街に行った連中は何等かのめんどくさい事態に巻き込まれた様だ。トラックが壊れたとか言っていたが、だったら連中から手紙の一つや二つ送って来る筈だ」
ベイクドもちょちょはスピーカーに繋がるマイクを手に取ると出撃前の訓示をする。
「その連絡すらねぇなんて事はまず持って有り得ねぇんだよ、なぁ!」
ベイクドもちょちょの言葉に全員がオウと叫ぶ。
「だから、俺達は仲間を助けに行く。
出撃だ!」
ベイクドもちょちょはそう宣言し、車列は城を出て行った。
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