第7話

目が覚めると、見覚えのない真っ白な天井が見えた。頭痛がする。


"僕はなんでベットで寝てるんだ...?"


「あっ!目覚めた!大丈夫⁇

どこか痛いところある?」


顔の横ら辺から聞き覚えのある声がした。

でも、もうこの世にはいない彼女の声だ。

こんなことは映画でない限り起こり得ない。


それじゃぁ、この声は誰?


『大丈夫です...ってか、ここって病院ですか?

なんで僕、病院にいるんですか?』


右眼をどこかにつけたのか

眼帯らしきものに覆われ視界が悪い。


「翔海くん。本当に憶えてないの?

文化会館の階段から落ちて救急車。」


翔海くん...。

名前で'くん'付けは今まで数人しかいなかった。


『舞陽?舞陽なの?』


「えっっ⁈なになに?

私、何か顔なにかくっついてる?」


あの時間は存在していた。

だから隣に彼女がいるのだ。


おととい、2年前の彼女から連絡がなかったら

僕は今頃、彼女の墓参りの帰りだっただろう。


そう感じながら

ゆっくりと顔を窓際に向けた。

その先には花瓶が置いてあり

ネモフィラとカスミソウがけてあった。


『ねぇ、今西暦何年?』


僕は迷わず聞いた。


「えぇ..となに言ってるのかな⁈

今日は2006年10月23日でしょー。」


僕は2006年であったことにホッとした。


「文化会館にまで紙袋⁇どしたの。」


なんて答えるか迷ったあげく

テキトーな嘘をついた。


『なんか。ちょうど演奏会終わったときに

大学の友達が文化会館に用があって渡そうと思ってた袋。結局渡す前に、救急車に御用となってしまいまして...でさ、この紙袋開けてみて。』


「なぁにこれ?ってか友達に渡す物なのに開けちゃっていいの?」


『いいよ、開けてみて!』


彼女は、小さい子がサンタクロースからのプレゼントを見つけて開けたときのように

キラキラした目をしていた。


『誕生日おめでとう』


「ゆびわ...今まで付けたことなかったから

すごく嬉しい。」

 

『つけたことなかったって前、言ってたよね。

ねぇ、僕もつけてもいぃ?』


「翔海くんのもあるの⁉︎

もちろん、一緒につけようょ」

 

『よかった‼︎

もう17時だね。

外来診療も終わるし、点滴もなくなから

もう帰っていいって言われると思うな。

そのあと誕生日ディナーでもどう⁇』


「素敵じゃん。

なんか、翔海くん頭打ったせいで変わった?

どこかに誘うとか、プレゼントくれるとか、

得意じゃなかった気がしたけど...。

前の翔海くんも好きだったけど

惚れ直しちゃったょ♡」


そして僕は、舞陽を力いっぱい抱きしめた。

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