鳥かご【クロと友人の会話】

その鳥籠には、鳥がいなかった。


「なんで居ないの?」


そう首を傾げたら、友人は笑って答えた。


「これから飼うつもりなんだよ」

「へぇ、どんな鳥を飼うの?」


スズメやハトにオウムやカナリヤ……。


「とっても元気な子なんだ!」


彼は鳥籠を手に取り、胸に抱える。


「小さいヤツ?」

「その子は少し大きな子でね……」

「その鳥籠に入るの?名前は?」


彼は少し考えてから静かに告げた。


「“クロ”って名前にしようと思ってるんだ」


『なんかオレの名前に似てるなぁ……』


平然とそう言われたので、多分偶然らしい。


彼は笑って鳥籠をテーブルに置いた。


「でも、どんな鳥を飼うのか楽しみだなぁー!」

「飼ったら一番最初に見せてあげるね!」

「本当?」

「楽しみに待ってて?」


その日、オレは友人と約束をした。


友人がどんな鳥を飼うのか楽しみだっ!


早く見たいなぁ……そう思っていた矢先。


友人に呼び出された。


「ほら、この間約束しただろ?」


彼はオレに鳥籠を見せた。


「飼ったら一番初めに見せてあげるって!」


オレはその鳥籠を見たが、中には何もいなかった。


「なんだよ、いないじゃん!」


そう不思議そうに首を傾げると、友人は困った顔をして告げた。


「ホントはね、この中に入れる筈だったんだけど……あまりに大き過ぎて入らなかったんだ」

「ダチョウかエミューでも飼ったのか!?」


オレが驚き興奮すると、彼はクスクスと笑う。


「フフッ。そんなに焦らなくても今見せてあげるって!」


そう言って彼はオレに手招きをした。


「こっちだよ、来て!」


言われるがままに着いて行くと、とある部屋の前までやって来た。そこには“クロ”と書かれた扉があった。


「まさか、この部屋に……?」

「中に入ってみなよ?」


オレは言われるがまま中へ入ると、その部屋にはベッドに机にとまり木と、あとは大きな姿見鏡があった。


「至って普通の部屋だけど、鳥は?」


そう言って振り返ると、彼はオレを部屋へと置き去りにそのまま勢いよく扉を閉めた。


「えっ、ちょ……なんで閉めるのさぁ!?」


思わず声を張り上げたが、彼は何も言わずに扉の鍵を閉める。


扉に突撃してもビクともしなかった。


「おいっ、開けろってば!!」


そう叫ぶと、彼は漸く口を開いた。


「その部屋気に入った?」

「はぁっ!?」

「全部君好みにしたんだよ!?」


彼はそう言って扉の向こう側から声を掛けてきた。


「母様が言ってたんだ。鳥は飛んでしまうからすぐに扉を閉めなさいって!」

「何言って……」

「あと住みやすい様に環境を整えてあげて、餌も定期的に上げる事と」

「なぁ、、」

「それから死ぬまで世話しなさいって!」

「なんの話をしてるんだよ!?」


彼は最後にこう告げた。


「僕の飼う鳥の話だよ……クロ」


そう言われて鏡を見ると、黒いカラスが此方を見つめていた。




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