第一話 伝説の始まり

「今日のミコゼーの、スケジュールはどうなってる?ウルヴズジェイルから、連絡は入ってるか?」 

 スケジュールボードを見ていた、髪型をマーセナリーにしているオスッテが、女性職員に声をかけた。

 

「まだのようですね。前回グロリーの氷を、もとに戻せないまでに、破壊しましたからね。ウルヴズジェイル側からの苦情、なんとか解決しましたが」 

 しかめっ面で言うと、飲みかけの缶コーヒーを机に置いた。

 

「あれはウルヴズジェイル側の落ち度だ。ミコゼーにアリゼーが怪我をしたなど伝えて、氷程度で済んだなら安いものだ」

 マーセナリーなオスッテがそう言うと、少し遠くを見るような素振りを見せた。

 

「まだ1年も経たないんですよね。グリダニア暴走連合が結成されてから…」

 女性職員が、やはり遠くを見るような素振りを見せた。



 「総長、奴らスゴい数で待ち構えてますぜ。こちらが500てので、もう勝った気でいますよね」

 フェンリルに跨ったオスッテが、少しうんざりした顔で、吐き捨てるように言った。

 

 それを聞いたミコゼーは、不敵な顔でオスッテにこう言い返した。

 

「弱い奴らほど、よく群れるってね。ま、私も流石に、あの人数は骨が折れそうだけど」

 そんな話をしていると、数名のオスラがミコゼーの側へと近づいて来た。

 

「まぁ、一人当たりが十数名相手すれば、直ぐに終わりますよ。なんてこと無い、烏合の衆に過ぎません」

 やはりうんざりした顔で、吐き捨てるように言った。

 

「全員過信はするな!油断は危険しか生まない。叩くなら、相手が立てなくなるまで叩け」

 ミコゼーが全員に一喝すると、数十名が青い顔して俯いた。

 

「馬鹿、何俯いてるんだ!また総長が気にしちまうだろが。この間なんか、一週間口聞いて貰えなかったんだからな」

 

 俯いていた数十名が一斉に顔を上げ、気合を入れ直すとミコゼーに向けて、ガッツポーズをした。

 ミコゼーはその姿を見て、可愛らしい顔をしてコロコロと音がするように笑った。

 

「ま、何にせよ、味方に多大な損害は出ないと思いますよ。500とはいえ、殆んどが敵対していたチームのトップですからね。喧嘩の練度が違いますよ」

 特に表情を変えずにそう言うと、オスッテは咥えていたタバコを吐き捨てた。

 

「まぁ何にせよ、私は理不尽にやられるのが大嫌いだからね。グリダニアの皆んなが安心して暮らせる毎日を取り戻す」

 

 ミコゼーがそう言うと、全員フェンリルに跨り、エンジンに火を入れた。


 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る