小4の話 【夏穂side】
第7話
私と小広君は小学校3年生の時にクラス替えで一緒になった。
彼はクラスのムードメーカーで優しくてスポーツ万能な面白い男の子。
そんな彼と私が親しくなったのはある事件がきっかけだった。
小学校4年生の冬。
私が教室に入るといつもより騒がしかった。
奈近『あ、はた。おはよう。』
夏穂「おはよう…何、何か今日皆騒がしいね。」
ランドセルを机に置きながら前の席に座っていたチカにそう言うと、彼女はきょとんとして私を見返してきた。
奈近『何って…え?』
夏穂「ん?」
奈近『はた…もしかして今日が何の日か分かってないの?』
夏穂「今日…?今日って確か2月のー…」
奈近『2月14日、バレンタインデーよ!だから男子がソワソワしてんの。』
あ、そっか。
それで男子は落ち着きがなくて、女子はグループで盛り上がってるのね。
私はお父さんとお祖父ちゃんにあげるくらいだから全然気にもしなかったよ…
この時はまだ友チョコの文化もなかったから、好きな男子がいなかった私にとってバレンタインデーはあまり重要な行事ではなかった。
そんなことをぼんやり考えていると、教壇の上でとある女子が男子達にチョコを渡していた。
その子は速水勇姫といって、スポーツ万能で明るく、クラスの人気者。例えるならマンガの主人公みたいな子だった。
お相手は同じ地域の野球チームに所属しているチームメイト全員だった。
勇姫『ハイ、これ!!今日はバレンタインだし、いつも野球で迷惑かけてるから…。深い意味はないからね!!まぁ、毒とかは盛ってないからさ(黒笑)』
奈近『…ようやるわ。』
チカは完全に呆れて机に頬杖をついている。
大体の男子達は『毒盛ったのかよ!?』とか『毒とか言われると食いづらいわ!!(笑)』とか言いながら受け取ってたんだけど、一人だけは違った。
顔を真っ赤にして、一言『ありがとう…』ってモゴモゴ言って、受け取ったその一人がまさしく小広君だった。
…分かりやすいなぁ…。
それを見て私とかチカを含む何人かは彼の気持ちに気付いたんだけど、素直に喜んでるところをからかうのは失礼だと思って皆黙ってた。
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