第3話 三年生の教室

「晴子ぉ、今日は一緒に帰ろ。」

高井 舞子(たかい まいこ)が声をかけてきた。


「あれぇ、部活は?」


「今日、プールの点検の日なんだって。

だから水泳部は休み。」


「やぁーん久しぶりぃ、みんなで帰ろ。」

「私も駅までいっしょするぅー。」

「私も混ぜてぇ。」


何だかんだで、女子が集まってきた。


「あーーでも、ちょっと私は寄り道するから。」

晴子は、今日だけ、ちょっとだけ、みんながウザかった。


「買い物なら付き合うよー」


「スイーツなら付き合っちゃうよー。」


やっぱり、みんなウザい。

「あーでも、三年生の教室に用があるんだぁ。」


「一緒に行くよ。用事済むまで待ってる。」

高井ちゃんは空気が読めなかった。


「じゃあ、下駄箱で待ってるよ。

行こ、高井ちゃん。」

六野 美唯(ろくの みゆ)は、空気を読んだようだ。


「えー、ひとりで大丈夫?

三年の人になんか言われたのぉ?」

やっぱり読めない高井ちゃん。


「うん、今朝、お世話になった先輩に、お礼とお詫びに。」


「やばぃ、それ、男の人でしょ?」

勘が鋭い、椋尾 多花音(むくお たかね)の一言。


「、、、、そだよ。」


「きゃー、パル子に春が来たーー!」


「椋ちゃん、ちょっとウザいよ。」

晴子は、早く行きたかった。

約束しているわけではないから、

大沢先輩は先に帰ってしまう恐れもあるのだ。


「ごめん、ごめん、ほら、行きなよ。

パル子の骨はひろってあげるからねーーーー。」


「玉砕なんかしないよ。

ちょっとあいさつしてくるだけぇ。」

晴子は急いで駆け出した。







三年生の教室フロアへ向かう途中、

階段を降りてくる先輩を見つけた。


「大沢先輩、今朝はありがとうございました。」


「おぉ、霞くん、俺、なんか感謝されることしたっけ?」


「先輩のおかげで、遅刻しないで済みました。」


「それか、別にたいしたことないよ。

それより、あの電車は時間ギリギリだから、

もう一本早い電車にした方がいいよ。」


「そうですね。

でも、私もあの彼女に、何かお手伝いができたらなーと思って。

彼女は、いつもあの電車なんですかぁ。」


「そうだね。大抵はそう。

でも、乗ってこない時もあるよ。約束しているわけじゃないから。」


「じゃあ、私は明日もあの電車で。」


「じゃあ、あしたもあの電車で。」


「、、、、あのー、これから帰るところですか?」


「そう。」


「あのー、一緒に帰ってもいいですか?」


「おぉ、いいよ。」


きゅぅうぅーっと口角が上がって、ニコニコの晴子さん。

先輩のすぐ後ろを着いて行く。


「はーるこぉ!」

ちょっと離れたところから女子の合唱が。


「また明日ね!」

「バイバイ!」

「晴子、がんばってぇ。」


「うぅ、、、、」

ちょっとだけ恥ずかしい晴子さん。

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