第2話 二人の疾走

「さて、霞くん、今朝は、この電車、2分遅れている。」


「はい、先輩。」


「駅を出て、普通に歩けば、校門まで8分弱。

いつもならギリセーフだが、

今朝は、ダッシュしなければ、遅刻確定だ。」


「はい、先輩。」


「さぁ、もうすぐ到着、ドアが開いたら走るよ、いいかい?」


「はい、私、寝坊して、

いつもの電車に間に合わなかった時から、

覚悟はできています。」


大沢先輩が、カウントダウンを始める。

「サン、」


霞 晴子も声を合わせる。

「ニィ、イチ、、、ゴー!!」


電車のドアが開いて、二人が飛び出してくる。

ホームから階段を駆け下る。

改札を出て、駅前ロータリーを抜ける。


「大丈夫かぁ、霞くん!」


「は、はい先輩、まだいけます。」

はぁ、はぁ、、、少し息が上がってきた。


「先輩ぃ!」


「何だい?」


「先輩は、優しいんですね。」


「照れるよ。あれ、したいからしてるだけだよ。」


「彼女も嬉しそうでしたね。」


「彼女は、交通事故で目が見えなくなって、

まだ一年ぐらいしか経ってないって、、、」


「えぇぇ、、、そうなんですか、は、」


「両目が完全に見えないらしくて、、、」


「は、は、、、、は、は、、、、、」


「なので、まだ杖も、点字も、全然苦手で、、、、

うまくできないって、へ、は、、、、

なんか、比較できる、ものじゃないと、思うけど、

以前見えていた、だけに、

生まれつきの、人よりも、悲しい気が、する、ふぅ。」


「と、突、ぜ、然、見えなくな、ったら、

私な、ら死にたく、なるかも、ほ、ほ、、、」


「だから、これぐらい、ぃの、お手伝いでも、しないと、ね。」


「先輩、尊敬、ぃします。」


「霞くんも、おじいさん、を思っ、て、あれしたの、

かっこよかっ、たよ。」


「先ぱ、輩の方が、かっこいい、です。」


二人は、通りを駆け抜ける。






「セーェェェフ!」


チャイムと共に校門を駆け抜けた二人。

ぜい!ぜい!!!はぁ!はぁ!!!

息を切らして上体を伏せる二人。

待ち構えた風紀委員の面々も呆れ顔。


「先、ぱ、い、やりました!」


「やったね、勝ったね。」


二人はグータッチで、結ばれたのです。

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