晴子さんと大沢先輩の恋

ムーゴット

第1話 優先席の取り扱い

ぽろぴろぽーん、ぽん、ぽーん、、、

「ドアが閉まります。ご注意ください。」


電車に駆け込んだのは、

霞 晴子(かすみ はるこ)、高校1年生、ピィッカピッカのJK1年生だ。


ふー、寝坊したけど、

いつもより一本遅い電車には、なんとか乗れた。

4月も後半になると、、、。油断は怖い。

ギリギリだけど、遅刻しないで行けるかな。


それにしてもいつもより一本遅いだけなのに、混んでるなぁ。

立っている人は、なんとか身動き取れるかどうか。

座ろうなんて、到底無理だな。


、、、、優先席に座っている、男子、うちの学校の制服だ。

さらに、ちょっとだらしない座り方に、感じワルぅ。

まあ、周囲に席を必要とする人はいなさそうだから、いいものの。

あっ、彼がペースメーカーつけているとか、その可能性もあるのか。


次の停車駅でドアが開く。

降りる人より乗る人が多く、さらに混雑の兆し。


ご高齢のおじいさんが乗ってきた。

背筋はシャンとしているが、

80かな90かな、かなりのお年で、ぜひ優先席に座ってほしい。

うちの学校の男子は、譲るかな?

譲る気配がないな。

ひとこと言ってやろうかな。

「あのー、この方に席を譲ってはどうですか?」


「ダメ!。」


思いがけない強い返答に、私は半分切れた。

「あんた、何かハンディがあるの!? そうじゃなければ、許さないわよ。」


ニコニコしているおじいさんの後ろから、

次々に乗車してくる人の中に、白い杖の若い女性がいた。

濃い色のサングラスの奥へは、きっと光が届いていないのだろう。

中年の女性が、若い女性のサポートをしている。


うちの学校の男子は、白い杖の女性の手を取ると、席を交代した。


ニコニコのおじいさんが話しかけてきた。

「私を心配してくれてありがとう。

でも、私はこの通り、元気!元気!

この男の子は、この女性のために席を取っているんだよ。

私は、毎朝この光景を見て、ますます元気をもらっているんだ。」


私は恥ずかしくなった。

「ごめんなさい。何も知らないのに、嫌なこと言って。」


うちの学校の男子は、目を細めながら、

「いいや、気にしていないよ。君も気にしないで。

君は、強くて優しい人だね。惚れちゃうよぉ。」


こんなこと、男の人から初めて言われた。

なんだか嬉しくて、恥ずかしい。

「あのー、今度改めてお詫びをさせてください。

私は、1年の霞 晴子です。

あのー、お名前を教えてもらえませんか。」


「お詫びはもういいよ。

でも、また会いたいな。

俺は、3年1組、大沢 岳人(おおさわ たけひと)。

よろしくね。」


「はい、大沢先輩、よろしくお願いします。」

私もまた会いたい。







こうして、二人は出会ったのです。

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