第十八話 その後
――領主家が夜中に強盗に入られ、一家全員が死亡。人口も少ない小さな村故にやむを得ず夜の番の無い日もあり、戦闘能力のある住民も殆どいないため、近辺では一際大きく目立つ家が目に入れば狙われることも想像に難くない。犯人の足取りは掴めておらず、未だ近くの森林に潜伏している可能性も高いとみられる。防犯用の罠は解除されており、相当の実力者が潜んでいると思われるため、近隣を通る際は要注意するよう、治安隊が呼びかけている。
また、件の一家が村民に傷害を負わせていた疑惑も浮上。クラド家に対し恐怖を覚える住民も多く、代わってエルクァ家から護衛役として数名を村に派遣。今後は怪我人の治療を優先に、村の活気を取り戻すことに尽力すると、エルクァ家の代表は語る。
「なにこれ」
「新聞。君がこなした依頼なのだから、顛末くらい知っておいても良いだろう?」
ボサボサの頭で降りてきたマスダにバーテンダーから手渡されたそれ。ご丁寧に付箋の貼ってある箇所に目を通せば、後処理が完了したのだろう、件の依頼の顛末が記載されていた。
「まー上手いことやってんなら良いんじゃない」
「すっかり興味もなさそうだ」
依頼を完了とし、報酬を受け取ってからもう幾日も経つ。貰えるものは貰っているし、特別印象に残る依頼主でもなかったためか、マスダは既に関心を持っていなかった。
「だが、君たちの働きでエルクァ家がクラド家の足を掬う――まあ、言ってしまえば蹴落とすきっかけを作れたのだし。今後も懇意にしてくれるんじゃないかい」
「商人に懇意にされてもなー……あ、役に立つもん融通してくれたりすっかな」
やや硬めのパンをスープに浸しもさもさと頬を膨らませては、水で流し込む。凡そ味わうとは遠い食事風景に何を言うことも無く、バーテンダーは話し相手を務める。
「入用なら聞いてみても良いのでは」
「うーん、俺が欲しいわけじゃないし、わざわざ顔見せに行くのもめんどいな……テキトーに良い感じの護衛依頼とか出してくんないかな」
「ここに出すのなら、君がご指名になりそうだけれど」
「……俺からの紹介、って他のパーティ紹介したら受けてくれると思う?」
「難しいだろうね」
「んー……メリット……」
行儀悪くぺたりと机に頬を付け、空になった皿をバーテンダーの方へ押しやる。
ともあれ、依頼は無事完了した。今後特に接触が無いのなら、マスダにとってはそれでも良かった。顔を覚えられて良いことの方が少ないし。
――依頼料:4000Rを手に入れた!
――アイテム:魔法の羊皮紙を手に入れた!
――アイテム:魔法の羊皮紙をシクストに奪われた…
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