弐
「灯さん?私から1つ提案なのですが、折角お見舞いに行くなら、何かおばあ様の喜ぶことをやってみては?」
「確かにその通りだね。喜ぶことか〜、何だろう」
全然思い付かない。そういえば前に東京駅限定のあれが食べたいと言っていたが、入院中でも差し入れして良いのだろうか?
そんなことを考えていると、ハルさんがパッと笑顔になった。妙案を思いついたのかもしれない。
「あ!灯さん!確かおばあ様は灯さんが恋人を連れてくるのを、心待ちにしているのでは?」
「え!?」
驚いた。藪から棒に何を言い出すのかと思えば。いや…でも、確かに以前そんなことを祖母に言われた気がする。しかしその時の会話を思い出そうとすると、何故か頭が痛くなる。痛い痛い…激痛だ。
「…灯さん灯さん、大丈夫ですか?」
「あ…うん。でも私恋人いないよ?」
そうだ、いないものは連れていけない。無い袖は振れない。
「この際、本当の恋人である必要はありません!!おばあ様を喜ばせるためですから!!誰か恋人役を頼める人はいませんか?」
「え〜…」
なんと暴論な!
いやしかし、思い当たる人が1人だけいる。同じ会社の
「会社の花織さんなら、恋人役してくれるかもしれないけど…」
「では花織氏へ電話をかけます」
「え?!もう2時だからまっ…」
画面が電話に切り替わる。いやいや、流石にこんな深夜に電話をする訳にはいかない。呼び出し終了のボタンを押そうとした瞬間、画面が通話中に切り替わった。
………もうどうにでもなれ!!
「もしもし?」
「あ…花織さん、夜分遅くにすみません…」
「起きていたので大丈夫ですよ。何かありました?」
彼はいつも通りの穏やかな声で返答してくれた。まだ起きていたらしい。
「あ…あ…あの、私の恋人役をしてくれませんか!!」
「え?」
「あの…えっと…」
は…恥ずかしい!!顔が熱い。いや全身が熱い!!やっぱり撤回しよう。そうしよう!!
「何か理由があるんですね?話してもらえませんか?」
「ふえ…あ…はい!ありがとうございます!実はですね…」
心臓がバクバクする。と…とりあえず、話だけでも聞いてもらおうかな。
私は深呼吸をして、ゆっくりと話を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます